東武亀戸線は、曳舟駅~亀戸駅を結ぶ全長3.4kmの鉄道路線で東武鉄道が保有・運行しています。曳舟駅、小村井駅、東あずま駅、亀戸水神駅、亀戸駅の5駅のみのミニ路線ですが、1904年(明治37年)開通という歴史を持ちます。
全線でも約10分という超短距離にもかかわらず、踏切が22カ所もあることで知られます。近年は立体交差が増加しているため、踏切ファンに人気のある路線です。
東武亀戸線が開業した当時は本線としての扱いでしたが、伊勢崎線の終着駅が業平橋駅(現在の「とうきょうスカイツリー駅」)終着から浅草駅まで延伸されたため支線となったという経緯があります。
東武線のなかでも古い歴史をもっているため、北十間川橋梁に残る止水や旧亀戸水神駅ホームのコンクリートの土台跡など、沿線には遺跡的な建造物が多数見られ、明治時代からの軌跡が感じられます。
全体的には下町の雰囲気が残る住宅地を走行しており、特に大きな観光地のある路線ではありません。利用者の多くは地元の通勤通学や日常の買い物用途であり、地域輸送のための路線に特化されているといえます。
ディープな下町情緒に浸れる、亀戸駅周辺
亀戸駅の乗降客数は、2020年度1日平均で21,008人。東武亀戸線のなかでは曳舟駅の次に多くなっています。JR総武本線亀戸駅と隣接し、錦糸町は隣駅のため利便性が高く、周辺には大型商業施設が多数あります。
東京スカイツリーにもほど近く、終日にぎわいがあります。下町情緒を感じるレトロなスポット、老舗店が多く見られます。
菅原道真を祀った亀戸天神社はこの沿線の数少ない観光スポットで、見事な藤の花が良く知られており、藤まつりの季節は特に参拝客が多くなります。下町から東京スカイツリーを望むスポットとしても人気です。
亀戸香取勝運商店街は昭和30年代のレトロ感を再現しており、石畳と個性的な店舗が並び独特の魅力にあふれる町。亀戸横丁には昭和レトロな空間に飲食店が集結し、居酒屋、多国籍料理店、ラーメン屋など下町らしい雰囲気が安らぎを与える場となっています。都内でも有名な老舗甘味処も健在で、変わらぬ味を目当てに訪れず人もいます。
亀戸駅周辺に2km圏内人口は約28万で、居住者は30~40代中心。1人世帯比率は約42.8%です。
出店場所として選ぶ場合には、町全体のもつ雰囲気に合わせた店舗づくりがおすすめ。新奇さを狙うより、地元に溶け込むコンセプトが受け入れられやすいと考えられます。
JR線との兼ね合いもあり居住地としての人気も高いため、働き盛りの単身者をターゲットとした飲食を提供する店には継続的な集客が見込めます。
このエリア周辺のランドマークには、「亀戸天神社」「亀戸香取勝運商店街」「アトレ亀戸」「楽天地ビル」などがあります。
閑静な住宅街が続く、亀戸水神駅~小村井駅周辺
亀戸水神駅、東あずま駅、小村井駅の3駅間の時間距離はわずか3分です。そのため、沿線としてひとつのエリアにまとまっていると見て良いでしょう。
戸建て住宅やマンションがあり、閑静な住宅街が広がります。自然を感じられる「亀戸中央公園」は、どの駅からも近く憩いの場となっています。
全体的に穏やかな印象を与えるエリアで大きな商業施設はほとんどありませんが、スーパーやコンビニエンスストアが駅周辺にあるため生活利便性には富んでいます。亀戸までも10分以内なので、大きな買い物にも困りません。
各駅とも混雑が少なく、ラッシュ時も都内の中では気にならない程度と、居住地として穴場的な人気があるエリア。亀戸水神駅から東京駅まで約22分と、交通アクセスも良好です。
こちらのエリアへの出店では、ターゲットが居住者にほぼ限られることが想定されます。2km圏内居住数は各駅22~25万人程度のため、集客ターゲットとしては十分です。
1人世帯比率は40%台で、単身者・ファミリー向け双方での店舗計画が可能となるでしょう。亀戸エリアまでもそう距離はありませんが、亀戸まで出なくても満足できる質の高い飲食を提供する店舗がねらい目といえます。
スカイツリーのおひざ元、曳舟駅周辺
曳舟駅には東武伊勢崎線(東武スカイツリーライン)が乗り入れており、徒歩5分ほどの距離には京成曳舟駅があります。東武伊勢崎線はラッシュ時150%で乗降が多く、1日平均乗降客数は22,744人と、東武亀戸線ではもっとも多くなっています。
浅草駅や北千住駅方面にもアクセスが良く、渋谷へも乗り換えなしで移動できます。
駅周辺には大型ショッピングモールやスーパーなど商業施設が多数あり、東京スカイツリー開業に合わせて周辺の開発が進行中です。
駅の東口側は高層マンションが建ち並ぶ振興住宅地、西口側は下町が広がる落ち着いた雰囲気と異なる魅力があります。
出店に際しては、東京スカイツリーの集客力の活用が期待できるエリアです。一方で周辺には「曳舟さくら公園」「曳舟なごみ公園」「曳舟川親水公園」「ふじのき公園」など緑地帯も多数見られ、子どもがいる家庭向きの環境でもあります。
下町の良さ、居住地としての好条件を保ちつつも、スカイツリーの誕生で環境が変わりつつあるエリアです。東武亀戸線の中でも特に人の動きが大きく、飲食の需要にも期待できます。
国際的な観光スポットでありながら、下町の雰囲気も残る場所という2面性があるため、多角的な視点からの店舗計画が可能なエリアといえるでしょう。
ターゲットとしては、観光客、居住者、ビジネス系と店のコンセプトに合わせて選択肢が広げられます。
このエリア周辺のランドマークには、「東京スカイツリー」「東京ソラマチ」「EQUiA曳舟」「下町人情キラキラ橘商店街」などがあります。
亀戸線は短い距離に多様な魅力がつまった路線
全線が徒歩圏内にあるともいえる東武亀戸線は、東京の中でも非常にユニークな路線です。歴史的な背景をもちながら現在は主に住民の足となっていますが、たった10分の走行距離でありながらその沿線エリアは知れば知るほど不思議な魅力に満ちています。出店候補として2つの起点駅が注目されがちですが、間の3駅周辺にも十分に成功の可能性が眠っていそうです。