都営浅草線の開業は1960(昭和35)年12月4日。「押上」から「浅草橋」までの開通と同時に、京成線との相互直通運転を開始。都営地下鉄として最初の路線であったため、当初は「都営1号線」と呼ばれていました。
現在は、大田区の西馬込駅から墨田区の押上駅を結び、全線が地下走行です。他路線との直通運転や乗り入れが多く、利便性の高い線として知られています。
都営浅草線の1日の平均乗降人員は約77万人で、乗降が最も多いのは東京スカイツリーのある押上駅、次いで他線からの直通線や乗り入れのある泉岳寺駅です。そのほか、東京都の中心部にある東銀座駅や新橋駅は、1日を平均して、利用数が多くなっています。
都営浅草線は、羽田空港にも成田空港にも直結する便利な路線ですが、最も混雑する時間帯でも乗車率は130%程度で、都内では比較的空いている路線といえます。
「押上~浅草橋エリア」は世界からも注目の観光スポットが多数
乗降客数が一番多い押上駅周辺は、スカイツリーの建設にあわせて再開発されました。駅舎とスカイツリーが直結しており、「とうきょうスカイツリー駅」とは同一駅の扱いとなっています。
日本文化を代表する観光スポットのある浅草は、年間を通じて国内外からの観光客が多い街です。「浅草寺」や「雷門」を中心に、下町情緒が残る周辺にも集客に波及効果が期待できます。
問屋街で知られる浅草橋周辺は、手芸パーツを求める人でにぎわいます。ビジネスマンと女性層などをターゲットとした、出店計画にチャンスが考えられます。
「東京のブルックリン」として近年人気を集めているのが蔵前です。リバーサイドにある景観、ものづくりの職人が集結している街の風情が注目されています。古い倉庫のリノベーションによるレストランやカフェ、宿泊施設などの、古くて新しい店構えが参考となりそうです。
押上駅周辺の居住者状況は男女比がほぼ同じ、15~64歳人口は駅から約2㎞圏内で17万人です。昼間人口は約27万人で、30~39歳人口比率が最も高くなっています。居住者では30代・40代の働き盛りが多く、また1人世帯比率は約46%となっているため、年代の高い一人暮らしからファミリー層がターゲットに向くと考えられます。
同エリア内の主なランドマークとしては、「東京スカイツリー」「東京ソラマチ」「雷門」「浅草寺」「江戸通り問屋街」などがあります。
江戸の粋と現代首都が交差する「東日本橋~新橋エリア」
東日本橋駅はオフィスや問屋が多く、ビジネスマンが行きかう街といった印象が強いエリアです。銀座駅や日本橋駅にも近く、都心の下町としてお祭りなどの行事も盛んで活気があります。
時代小説や時代劇でもおなじみの人形町は「人形焼き」発祥の地。現在でも長い伝統を持つ老舗が多い一方で、現代的なおしゃれな店舗が入り混じり多様性に富んでいます。
東銀座駅、新橋駅は大手企業の本社などビジネス関連の施設が多数ある一方で、歌舞伎座や新橋演舞場といった伝統芸能に関連する施設もあり、昼間の層は多種多様です。
日本橋駅周辺では2㎞圏内の居住者数約12万人に対して、昼間人口が10倍の約120万人と極端に差があります。居住者の割合は、20~59歳の働き盛りの層が7割を占めています。
オフィスワーカー以外にも、買い物・観劇客などがターゲットとなる可能性もあり、多彩な店舗計画が考えられます。
同エリア内の主なランドマークとしては、「歌舞伎座」「新橋演舞場」「GINZA PLACE」「三越百貨店」「高島屋百貨店」などがあります。
高級住宅街から下町まで人気居住区がそろう「高輪台~西馬込エリア」
高輪台駅周辺は、「高輪・白金」エリアとして高級住宅街のイメージが強いエリアです。京成線への乗り入れがあり、「成田空港」へのアクセスも良好。グルメスポットが多数あり、高級志向の店舗出店がねらえるでしょう。
高輪台駅周辺の居住者情報としては、居住者総数が約20万人、昼間人口は約43万人です。駅周辺の居住比率では30~39歳人口が最も高く、次いで40~49歳の層となっています。
五反田駅はJR山手線・東急池上線の利用ができる上、川崎・六本木へのバスの便もあり利便性の高い駅です。品川に食肉の卸市場があるため、肉料理を売りにした店舗が多数見られます。ビジネス街と繁華街のイメージがある一方、親しみやすさで売る庶民的な商店街も健在です。
戸越駅から西馬込駅は居住区として人気が高いエリア。戸越銀座商店街には観光で訪れる人もおり、にぎわいがあります。最近は、食べ歩きスポットとしても有名。浅草線の駅から徒歩圏内に東急池上線の「戸越銀座駅」があるため、アクセスも良好です。
西馬込駅は石坂洋二郎や川端康成などの文化人に愛された街として知られる街です。坂道が多く、風情のある景観に閑静な住宅街が広がります。
西馬込駅周辺の居住者情報としては、2㎞圏内の人口総数約24万人に対し昼間人口は約15万人。30~39歳人口を中心とした働き盛りの層が厚くなっています。夜間人口の方が多いことから、休日やファミリーで利用できる店舗の需要が見込めると考えられます。
同エリア内の主なランドマークには、「明治学院大学」「グランドプリンスホテル高輪」「五反田TOCビル」「白蛇神社」「上神明天祖神社」などがあります。
まとめ:東京地下鉄の黎明期から走る都営浅草線沿線の魅力
東京のさまざまなエッセンスが凝縮されているような都営浅草線。ビジネス、商業、文化そして生活と、各駅からのぞく要素は多彩です。居住者の多い駅周辺でも、下町情緒が息づく街から高層の高級マンションが立ち並ぶエリアまでまったく異なる景観が見られます。駅ごとのそれぞれの特徴を知れば、店のコンセプトやターゲット層にマッチする立地が見つかることでしょう。
都営浅草線は接続する路線がトップクラスであり、利便性が高いことに定評があります。そうした特性を集客に活かせれば、安定した店舗経営につながりそうです。