接客コンサルタント井崎正吾氏に聞く、繁盛店の接客の極意 最終回「コミュニケーションが何より大切」
東京には約8万件以上のレストランがある。その中にもお客様に選ばれる店と選ばれない店の違いは大きい。
味のクオリティが大切なのはもちろんだが、ここ近年一層注目されているのが接客だ。人口減少に伴い、飲食業に従事するスタッフを探すのが大変だという話はあちらこちらから耳にする。しかし、接客の素晴らしいお店には質のよいスタッフが集まっているように思う。
今回、その接客についてのコンサルタントとして様々なレストランを教育している、「Solid Foundation Japan」の井崎正吾氏に話を伺った。3回の連載としてお伝えしていく。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太氏(ルーテージ株式会社)
- 第一回はこちらから第一回「ブランドコンセプトを理解した接客とは」
- 第二回はこちらから第二回「接客リーダーの大切さ」
最終回「コミュニケーションが何より大切」
―(川瀬氏)これからは、国内のみならず海外からのお客様に対応する人材も必要になっていくかと。
(井崎氏)そう思います。海外ではテーブル制が敷かれていることもあると思いますが、日本の接客とは異なるホスピタリティが見受けられます。例えば、「楽しんでる?」「何か問題はない?」「これがおいしいよ!」などなど。とてもさりげない声掛けがとても嬉しいものですね。
―レストランならではのコミュニケーションこそが心地よいですよね。
(井崎氏)はい、その通りなんです。日本のレストランは写真を使うことが多いですよね。ファミレスのようにわかりやすさが必要なお店ではとても効果的だと思うのですが、ヨーロッパのレストランや、アメリカのレストランなどは、ほとんどが文字のみ。その分、サービススタッフに「どんなお料理なの?」「ポーションは?」と聞きながらオーダーを組み立てていくんです。
しかし、すぐにそんなサービススタイルに切り替えることは難しいと思うので、まずは私のコンサルティングをしているお店の中で挑戦をしてもらったことがあります。大々的に店内に貼っていたクリスマスケーキのポスターを辞めたのです。その代わりに、必ずお会計時にリーフレットをお渡ししつつ、ケーキのPRをしていただく会話をお願いしました。すると、なんと売り上げが倍になるというミラクルな結果を得ることが出来ました。
―すごいですね、確かにポスターがあると安心してしまい、説明がおろそかになってしまうかもしれませんね。
(井崎氏)もちろん、ポスターの効果も否定することはできません。でも、どこかで「皆、見てくれているだろう」という甘えが生まれているようにも思うのです。やはり、会話の中で、説明を受けると印象もつきますし、そこで予約が入ったらPRしたスタッフも嬉しいですしね。いいこと尽くしでしたので、その結果を受け、忘年会プランも手渡しPRにいたしました。こちらも効果絶大でした(笑)
―やはり、人と人のコミュニケーションなんですね。
(井崎氏)はい、それはスタッフとお客様だけではなく、スタッフとスタッフもですね。
例えば、毎日きちんと朝礼、夕礼をして売り上げ達成についての報告や、本日の予算などの共有、ご予約のお客様の情報なども声にだして共有することが大切だと思います。
楽しいだけではお店が成り立たないので、数字を作るということもしっかりとスタッフに教育をしていくことに意識を持ってもらいたいので。この10分の時間を共有することで、お店のイズムが出来上がっていくのです。
―井崎さんの考える常連のお客様の作り方というのを教えていただけますでしょうか。
(井崎氏)私は、レストラン(お店)にとって大切なのは、使っていただく金額ではなく、来店頻度が高まることが「ファンになっていただけたのかな?」と思う瞬間です。
あとは、気軽に話しかけてもらえるとかもですね。そのためには、少しのわがままをきちんと対応できるようにしておくことが必要だと考えています。いわゆる臨機応変さですね。
―たしかに、そのわがままというか少しのお願いを聞いてもらえると嬉しいです。
「ごめんなさい、3個にしてもらえますか?」と言って、「あっ、問題ないです」のお店なのか、「いえ、これは2個入りなので、3名様であれば2つオーダーをお願いします」と言われるかでまったく印象が異なります。
(井崎氏)なかなか、責任者以外はその場のジャッジは難しいかもしれません。しかし、無理のない範囲でのお客様優先は、かならずお店にとってよい印象が生まれるはずです。そして、絶対に頭の中に「使いやすいお店」とインプットされるはずです。
―本当に納得です。たくさんお聞かせいただきましたが、最後に井崎さんにとって接客の魅力とはなんでしょうか。
(井崎氏)そうですね、サービスの経験を積み上げていくと、目だけで仕事が出来るようになります。ほんの一瞬の目の動きで、そのスタッフが何を言いたいのかがわかるようになるのです。それは、キッチン内の関係性でも同様なことが言えると思います。
お客様の要望を目くばせのみで認識し、スムーズにサービスを行っているシーンはまさに、舞台の本番に他なりません。そして、お客様に「素敵な夜だった」「美味しかったよ」「楽しかったよ」などとお声を頂ける仕事。魅力的でしかないと思っています。
さいごに(聞き手 川瀬亮太氏)
「一緒に働く人を信じることが出来るのか、その人の可能性を信じることが出来るのか」井崎さんとの対談後、こんな風に突きつけられたような気持ちになりました。「接客の極意」として、様々な角度から話を伺いましたが、お客様にせよ、スタッフにせよ、最後は人と人とのこと。「諦めずに人と向き合うことが出来るのか」そんな姿勢がサービスマンにとって大切なことと痛感いたしました。
井崎 正吾 経歴
1994年 パークハイアット東京「New York Grill&Bar」開業メンバーとして、サービスに従事する。その後、飲食企業の立ち上げ、営業本部長、代表取締役も歴任。
2008年には「Solid Foundation Japan」を立ち上げる。
2015年 カフェ・カンパニー株式会社 取締役クオリティ本部長に就任。
2018年より「Solid Foundation Japan」の活動を再始動。
日本ホスピタリティ推進協会教育機構認定「ホスピタリティ・コーディネーター」取得
国内外、異業種異業態の飲食店舗200店舗に携わる。
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
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