繁盛店への道

コロナ禍における2021年の総括~2022年の新たなスタートに向けて ―コロナ禍の影響が少なかった飲食店とは―

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接客コンサルタント井崎 正吾が語るこれからの飲食店サービス VOL.5

 
皆さま、本年もどうぞよろしくお願い申し上げます。未だコロナ禍も収束に至っておりませんが、新たな年であると同時に、外食産業においてもコロナ禍の影響で新しいスタンダードを定着させる新たなスタートの年であるともいえるでしょう。この連載も今回を入れてあと2回。今回は、そんな新たなスタートを見据えて業種業態の垣根を超えた「接客の良い店づくり」について、コロナ禍の影響が少なかった飲食店が持っている特徴をお伝えしたいと思います。
 

■コロナ禍でもお客様が入る店

そもそもの話ですが、私自身、飲食店で一番重要な要素は「おいしい料理」であると考えています。「いくら接客が良くても、提供する料理が気に入って頂けなければリピートしてくれない」という事象に関しては、以前覆面調査のお話しでもお伝えした通りです。
 
牛丼チェーンのような低単価、高回転の業態モデルの繁盛店には当てはまらないかも知れませんが、コロナ禍でもその影響が少なく、繁盛している目的来店型の飲食店の多くは、「接客」に力を入れています。それは「あの味(料理)を食べに行きたい」に「あの人(あの人達)に会いに行きたい」も内包されているからです。実際に「心配だから来たよ」という常連客に助けられた経験を私自身がしていること、そして同じ経験をしている繁盛店経営者の声を幾度となく聞いてきました。味だけでなく、そこで働く人達にファンがついているからこそ、天災などの影響を受けないのだと私は結論付けています。繁盛店のファンは、味だけでなく「人」についている。という特徴が先ずあるのです。
 
ではこのような「愛される店(人)づくり」は、どのようにしたらできるのでしょうか。これは「接客の良い店づくり」と同様であると思うのですが、店のスタッフ全員が「同じ方向を向いている」ことが挙げられます。これは、ある意味では物理的にスタッフ全員が「お客様のほうを向いている」ということでもあります。お客様から呼ばれないとテーブルに行かないという姿勢は「愛される店」には無い姿勢だと感じます。
 
では、なぜしっかりとお客様へ意識が向いているチームができるのでしょうか。答えは、経営者ないし現場のトップが「そうあるべきだ」と自ら示し、指導しているからに他ありません。お客様が入店してから退店するまでの間に行うべきことや態度の基準(スタンダード)が、マニュアルになっている、なっていないに関係なく「有る」こと、それを全員で守っていく姿勢を持っている状態こそが大切で、この状態を作り出せるのは先に述べたトップの方達の姿勢です。このトップの姿勢が無いと、私の見てきた経験上、接客に対する意識が高いスタッフは、その職場を離れていく傾向が高いようです。
 

■全スタッフ参加のミーティングが士気を上げる

また、繁盛店の多くは、月に一度程度の定期的な「全スタッフ参加のミーティング」を行っています。厨房からホールへ、ホールから厨房へのリクエストや、良い店になるための意見交換の場となるのです。繁盛店のチームは、ただ仲が良いだけの俗にいう「仲良しクラブ」の状態ではありません。
 
コミュニケーションが良い(仲が良い)状態であることは間違いありませんが、そこに「切磋琢磨」が存在すること、ここが繁盛店とそうでない店の違いです。元々別の職場で働いていた1人1人の異なる基準をすり合わせていく作業が大切だということの裏付けでもあります。 自分以外のスタッフが店の姿勢と異なる行動をしていても自分も指摘されるのが嫌だから何も言わない、そんな空気が店全体に広がると誰もスタンダードを守らなくなります。
 
店長もそんな状況に対して何も是正しない。そういう店が最近特に多くなっていると感じます。現在外食産業では働き手不足が問題になっていますが、そんなことどこ吹く風という店もあり、二極化している状況を生み出している要因もこの辺りにあるのではないでしょうか。
 

■販売促進活動にともなう接客の重要性

この先の飲食店経営において、変わらず必要なものに「販売促進活動(以下、販促)」が挙げられます。SNSを利用したお金のかからないものもあれば、費用をかけて集客する企画も多くみられます。しかし、瞬間風速的な集客や売り上げ増加は見込めても、元々接客に力を入れていない企業や店は、来店したお客様をファン(リピーター)にすることが十分にできず、絶えず販促を打ち続け、中々利益に結びつかないという状況も多いのが事実です。
 
販促は、今まで店を知らなかった人達へ店を利用してもらうきっかけとして使用し、その方達をリピーターにすることで費用対効果がでるものです。要は、受け入れ態勢を万全にしたうえで行うべきものだということです。
 
店舗接客はストックが効かないその場で消費される尊いものです。知識や経験、身のこなしの全てがお客様の期待を上回るものであり、楽しい時間を提供できた時に強く印象に残り、今の言葉で言えば「トキ消費」の対象になる価値のあるものなのです。行く意味があったと思ってもらえるかどうかに接客は深く関わっている重要な要素であるといえるでしょう。
 
大分断定的な表現が続きましたが、なぜここまで断定的に言い切れるのか?と思われる読者もいらっしゃるかと思います。逆にこれらができていない店の多くが経営に行き詰まりを感じて、私に相談をしてこられるからという裏付け、そして繁盛店の多くがこれらの要素を大切に日々の営業に臨まれていることを見てきているからこそなのです。
 
細かくは、人の問題など経営を難しくする事象は山ほどありますが、突き詰めていくと、やはりトップの方々の姿勢が重要なポイントなのです。
 
コロナ禍の収束後、フードロスや環境問題に意識を向けない、体に良いものと思えない物を扱う等の飲食店は段々と少数派になり、質の高い店が支持される世の中が来ると思われます。今まで接客に目を向けていなかったシェフや経営者の方々は、是非今年から、愛される接客(人)づくりに力を入れてみてほしい。そしてコロナ禍の収束後に選ばれる店になってほしい。そんな願いを込めて、新年の寄稿とさせて頂きます。
 

井崎 正吾 経歴

1994年 パークハイアット東京「New York Grill&Bar」開業メンバーとして、サービスに従事する。その後、飲食企業の立ち上げ、営業本部長、代表取締役も歴任。
2008年には「Solid Foundation Japan」を立ち上げる。
2015年 カフェ・カンパニー株式会社 取締役クオリティ本部長に就任。
2018年より「Solid Foundation Japan」の活動を再始動。
日本ホスピタリティ推進協会教育機構認定「ホスピタリティ・コーディネーター」取得
国内外、異業種異業態の飲食店舗200店舗に携わる。
 

 

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