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飲食店の利益率の目安は?計算方法や利益率を上げる8つのポイントも解説

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飲食店を経営するにあたって、利益をどれほど上げられるかは重要なポイントです。ただし、安定した経営を行うために必要な利益の大きさは、店舗の規模などによって異なります。そこで、役立つ指針が利益率です。
 
この記事では、利益率の意味や計算方法などといった基礎知識を簡潔に解説します。利益率を上げるための8つのポイントなども併せて紹介しますので、飲食店の開業を目指している人はぜひ参考にしてください。
 


 

◆飲食店における利益の仕組み

利益と一言でいってもさまざまな種類があります。ここでは、飲食店の経営で特に押さえておきたい、「売上総利益(粗利)」と「営業利益」をピックアップし、各利益の意味や計算される仕組みを解説します。
 

◇売上総利益(粗利)とは

売上総利益(粗利)とは大まかな利益のことで、「売上高」-「売上原価」で算出します。売上原価とは、仕入に使った費用のうち実際に売れた商品にかかった費用のことです。例えば、仕入れに1,000円かかり、商品を1,600円で提供した場合、粗利は1,600円-1,000円=600円になります。売上高に占める売上原価の割合を表す「原価率」も経営には重要となるため、下記も併せて参考にしてください。
 
〇原価率について詳しく知りたい方は こちら をチェック!
 

・粗利率

粗利率とは売上高に占める粗利の割合です。「粗利」÷「売上高」×100%で算出します。先と同じ例で計算した場合、粗利は600円、売上高は1,600円のため、600円÷1,600円×100%=37.5%が粗利率です。
 

◇営業利益

営業利益とは主とする事業で得た収益のことで、売上高から費用を差し引いた金額を指します。そのため、算出するための計算式は「売上総利益(粗利)」-「費用」です。飲食店の経営にかかる具体的な費用については後で解説します。
 

・営業利益率

営業利益率とは売上高から費用を引いて残った利益の売上高に対する割合です。「営業利益」÷「売上高」×100%で算出します。営業利益率を上げるためには、売上の現実的な見込みを立てておくことが大切です。売り上げ予測の立て方は下記を参考にしてください。
 
〇売上予測について詳しく知りたい方は こちら をチェック!
 

◆飲食店の利益率とは

飲食店における利益率とは「利益」の「売上高」に対する割合を示し、「利益」÷「売上高」×100%で算出します。利益とは売上高から仕入などにかかった原価を引いた金額です。
 

◇飲食店の利益率の比較例

2つの商品を例に挙げて利益率を比べてみましょう。商品Aは「仕入れ原価2,000円、販売価格3,500円、利益500円」、商品Bは「仕入れ原価20,000円、販売価格25,000円、利益2,000円」とします。
 
この場合の利益率は、商品Aが500円÷3,500円×100%=約14.29%、商品Bが2,000円÷25,000円×100%=8%です。単純に金額だけ見ると商品Aより商品Bのほうが利益は高くなっていますが、実際の利益率は商品Bより商品Aのほうが高い結果です。
 

◆飲食店のコストの内訳

飲食店を経営するためには、仕入原価や人件費のほか、家賃や水道光熱費、広告費など、さまざまな費用(コスト)がかかります。売上を100%とした場合に、これらのコストが、それぞれどれくらいの割合を占めるかについて考えておくことは、利益を確保するために重要です。そこで、ここではコストの内訳を変動費と固定費に分けて解説します。
 

◇変動費

変動費とは売上の増減に比例して変動する費用です。例えば、調理人や接客スタッフなどの人件費、水道光熱費、お店を紹介するチラシ代などの広告(販売促進)費などが該当します。ちなみに、人件費とは給与だけではなく、交通費やまかない代、福利厚生費なども含めた費用です。
 

◇固定費

固定費とは売上に関わりなく一定にかかる費用です。例えば、ビルなどの一部を借りて店舗として利用する場合のテナントの賃料、厨房機器などをリース契約する場合のリース料などが該当します。さらに、高額な調理器具や厨房機器を購入した場合などに計上できる、減価償却費も固定費です。
 

◆飲食店の利益率の目安

利益率は安定した経営を行うための大事な指標です。そこで、ここでは飲食店の利益率の目安を紹介します。
 

◇飲食店の利益率の目標値は10~15%

「飲食店の利益率の比較例」でも解説した通り、単純に利益の金額だけを見ても、十分な収益を得られているかの判断はできないため、利益ではなく利益率を目標として設定することが大切です。利益率の目標値は、飲食店の場合、10~15%とされています。ただし、10~15%はあくまでも飲食店全体の実情により導かれた数値であり、実際の目標値や相場は業態や各店舗の状況などによって異なります。
 

◇飲食店の利益率に関する実状

2020~2021年の統計によると、飲食業界で最も高かった企業の利益率は12.5%です。過去の統計では30%を超える利益率を出していた企業もありましたが、新型コロナウイルス感染症の影響もあり、5%程度の利益率しか出せなかった店舗も少なくありません。さらに、利益率がマイナスとなっている企業も多く見られます。
 

◆目指すべき利益率を検討する際の2つの指標

ここでは、目標とする利益率を検討する際に指標となる、「損益分岐点」と「FLコスト」について解説します。
 

◇損益分岐点

損益分岐点とは損失と利益が等しくなるボーダーラインです。ここでいう利益とは売上を指し、損失とは経費を示します。売上が損益分岐点を下回っていれば経費が売上を超えているため赤字です。反対に、売上が損益分岐点を上回っている場合は売上が経費より多いため、黒字を意味します。損益分岐点は固定費÷(1-変動費÷売上高)の計算式で算出可能です。
 

・損益分岐点の計算例

売上高300万円、固定費85万円(賃料25万円+社員の人件費60万円)、変動費100万円(食材費60万円+アルバイトの人件費40万円)のケースを例に挙げて、損益分岐点を実際に算出してみましょう。
 
このケースの各金額を先で紹介した計算式にあてはめると、85万円÷(1-100万円÷300万円)で、損益分岐点は約127万5,000円(小数点以下切り捨て)です。つまり、およそ127万5,000円を超える売上がないと赤字になります。
 

◇FLコスト

FLとはFoodとLaborを組み合わせた言葉で、食材費と人件費を合わせた金額をFLコストといいます。飲食店では食材の仕入れにかかる原価と人件費が最も多くかかるコストです。そのため、FLコストや、売上高に占めるFLコストの割合を示すFL比率を把握しておくことは、重要となります。FLコストを算出する計算式は食材費+人件費、FL比率の計算式は「FLコスト」÷売上高です。
 

・FLコストの計算例

損益分岐点の例と同じく、売上高300万円、固定費85万円(賃料25万円+社員の人件費60万円)、変動費100万円(食材費60万円+アルバイトの人件費40万円)と仮定し、FLコストとFL比率を算出します。
 
この場合、食材費は60万円、人件費は社員の60万円とアルバイトの40万円を合計した100万円です。これらを先で紹介した計算式にあてはめると、FLコストは60万円+100万円=160万円、FL比率は160万円÷300万円=約53.33%になります。
 

◆飲食店の利益率を上げる8つのポイント

飲食店経営において、利益率を上げるために留意すべき8つのポイントを紹介します。
 

◇人件費を抑える

コストを占める割合が大きい人件費は抑えると、利益率アップへの高い効果が期待できます。抑える金額の理想は売上高の25~30%程度です。継続的に人件費を抑えるには、販売状況の記録や集計ができるPOSレジや、受注の一連業務を自動化できる受注システムを導入するなどして、オペレーション改善に取り組む方法がおすすめです。
 

◇食材費を抑える

人件費と並んでコストの多くを占める食材費も節約効果の期待が高く、工夫次第で削減できる費用です。食材費を抑えるためには、まず、使用している食材を見直す必要があります。例えば、現在使用している食材よりも安く手に入れられる食材に変えられれば、食材費を下げることが可能です。
 

◇客単価や客数から売上高を逆算して検討する

出店が計画中の段階にある場合には損益分岐点を確認しておくことも対策です。客単価や客数から売上高を逆算し、その結果が損益分岐点を超えなかった場合には、出店すると赤字になるリスクが高くなります。そのような際には、賃金がより安い物件探しや出店する地域の再検討を行うことが必要です。
 

◇売上に対する賃料の比率を抑える

固定費は損益分岐点を超える売上を維持できるかのカギとなり、固定費の一つである賃料の比率を抑えることは利益率アップの有効策です。あくまでも実情に基づいた目標値ですが、理想の賃料比率は10%とされています。
 
ただし、賃料の比率を下げるには売上を上げるしか方法がありません。売上を上げるには、自店のコンセプトとマッチする客層や客単価を見込める立地であるかを、最初の物件探しの際に調査することが重要です。
 

◇「集客商品」と「高収益商品」をバランスよく取り入れる

集客商品とはその名の通り客を集めるための商品で、通常は利益を求めず、仕入原価とほぼ同額で価格の設定を行います。一方、高収益商品とは高い収益を見込んで販売する商品です。
 
集客商品が高収益商品よりも多いと十分な収益を得られず、反対に、高収益商品が収益商品より多いと客を十分に集められない可能性があります。そのため、両者をバランスよく取り入れることが大切です。高収益商品は原価率が30%以内となるようにし、お客様からコストパフォーマンスがよいと思われるような品揃えを、目指しましょう。
 

◇食材ロスを減らす

仕入れた食材はできる限り使い切って無駄な食費を発生させないようにすると、コストが削減できるため利益率アップにつながります。食材を使い切るためには消費期限が長い冷凍食品などを活用するのも方法です。また、普段から在庫管理をしっかり行うことも重要となります。
 

◇回転率を上げる

特に客単価が小さいお店などが利益を上げるためには、回転率を上げる必要があります。回転率を上げるためにはレイアウトの見直しが有効です。例えば、同じテーブルを利用する来店客1組あたりの人数の需要に合わせて、テーブルのサイズを決め、必要に応じて席数を増やすなどすると、無駄な空席を作らず回転率を上げられます。
 

◇客単価を上げる

売上はおおまかにいうと客単価×客数です。そのため、客単価を上げることと客数を増やすことの両方が利益率アップに関わります。
 
ただし、客単価は1人あたりが支払う金額を指すため、その場で食べることで注文数に制限がある飲食店では、利益率の高い商品の注文率を上げる方法が有効です。注文してもらいたいメニューを、メニュー表内や店内で目立つように掲示したり、目に付きやすい大きい写真で紹介したりするなどの工夫が必要となります。
 

◆まとめ

飲食店の開業を目指すなら、利益率の意味や目安、利益率を上げるための具体的な方法など、飲食店経営における基礎的なことを押さえておくことは必須です。
 
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