最低賃金引き上げ決定 コロナ禍の中小企業や飲食店に大打撃も
政府の最低賃金審議会は16日、今年度の最低賃金を引き上げる方針を決定し、引き上げの目安になる金額を示した。今後、各地方の労働局によって各都道府県の具体的な最低賃金が決定し、10月頃から適用される見通しだ。
ただ、コロナ禍真っ只中での最低賃金引き上げの決定は、従業員の雇用を守り続けるだけでも精一杯の飲食店にとっては大打撃になりかねない。
■過去最大の引き上げ額
今回示された最低賃金の引き上げ額は全地域で「28円」。昭和53年度に目安制度が始まって以降では最高額となる。
すでに東京都は「28円増」の目安通りの引き上げを決定していて、時給にして1041円に変わることになる。
政府はかねてから最低賃金を全国加重平均で1000円とする方針を示し、連合も時給1000円を目指してきた。
しかし、経営者にとっては最悪のタイミングである。ワクチン接種が進む中でコロナの今後の影響をどう捉えるかについて経営側と労働側との意見が対立した。特に中小企業の団体などは現状維持を訴えたものの、産業全体としては利益水準が回復している、という判断から引き上げが決まった。
■助成金で引き上げ分の負担肩代わりも
一方で政府は、最低賃金の引き上げに向けて、雇用調整助成金などいくつかの助成金で企業の負担軽減策を講じる。
最低賃金は例年10月から新しい金額が適用されるが、政府は雇用調整助成金の要件を10月から緩和し、12月までの措置として一時的に肩代わりすることを決めている。
また、業態転換を促すための事業再生構築補助金についても、売上高が大きく落ち込んでいる、かつ給与を上げる中小企業を対象に補助率を高めるとしている。この他、営業自粛などによって特に大きな影響を受ける事業者に対し、販路開拓などを支援するための制度である持続化補助金にも賃上げ対策枠を設けて、賃上げに積極的な企業を優先して給付金の対象とする。
しかし、雇用調整助成金の要件緩和は12月までの時限措置であり、コロナの影響がそれ以上に長引く場合には、飲食店はさらに厳しい状況に追い込まれることは必至だ。
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