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「時短命令は違法」 グローバルダイニング裁判に東京地裁判決

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飲食チェーン「グローバルダイニング」が、東京都から受けた時短命令は違憲・違法だとして損害賠償を求める訴えを東京地裁に起こしていた。飲食業界で注目された裁判だ。
 
今月、東京地裁は「東京都に過失や賠償責任はない」とする一方で、時短営業については「違法」であると認めた。新型インフルエンザ特措法による飲食店への命令に関する訴訟は初めてとみられる。この判決は、今後飲食店への対応にどのような影響を与えるのだろうか。
 

時短命令に対する疑問点

「グローバルダイニング」は、緊急事態宣言中の昨年3月、午後8時以降も営業していたことについて東京都から特措法に基づき営業時間を短縮するよう命令を受けた。これについてグローバルダイニングが「命令は営業の自由を侵害する違憲行為であり、違法である」として、東京都の命令は合理的でないとして訴えを起こしたのが今回の裁判だ。
 
東京都がグローバルダイニングに対して「命令」を出したのは去年3月18日のことである。これは緊急事態宣言が解除されるわずか3日前のことだったことなどをグローバルダイニングは問題視している。「狙い撃ち」ではないかという疑念もあるのだ。
 
裁判での争点は以下の点である。
1)時短命令は同社を狙い撃ちした違法な目的でおこなわれたのか否か。
2)命令発出の要件である「要請に応じない」ことに「正当な理由」(特措法45条3項)があったかどうか。
3)命令を発出することが「特に必要があると認めるとき」に該当していたのかどうか。
 
これに対して、東京地方裁判所は以下のような判断をしている。
 

争点に対する東京地裁の見解

まず、1つ目の争点である「狙い撃ち」ではないかというグローバルダイニングの主張については、裁判所は認めなかった。
 
また、2つ目の、命令に応じないことに対してグローバルダイニングが正当な理由を持っているかどうかについては、個別の経営状況等の理由は含まれないと判断。つまりグローバルダイニング側の主張を受け入れなかった形である。
 
しかし注目すべきは3つ目の争点である。東京都の命令が「特に必要があると認めるとき」に該当するかどうかという点だ。これについて東京地裁は、現実的な問題を挙げ、グローバルダイニングの主張を認めている。
 
「原告の飲食店は感染対策を実施していて、夜間営業を続けていることで直ちに感染リスクを高めていたとは認められない。都からはこうした状況で命令を出したことの必要性や判断基準について合理的な説明もなかった。原告に不利益となる命令を出す必要が特にあったとはいえず違法だ」という見解を示したのである。
 
4日間しか効力を生じない時短命令をあえて発出したことの必要性について、合理的な説明がされておらず、また時短命令の判断の考え方や基準について、公平性の観点からも合理的な説明がされていないとして、今回の時短命令の発出は特に必要であったとは認められない、というのが裁判所の考え方だ。
 
なお、NHKによれば、年が明けて去年1月7日に2500人を超える、いわゆる第3波で最も多くなったが、その後は徐々に減っていき、都がグローバルダイニングに「命令」を出した3月18日は323人だった*1。
 
*1 「『東京都の時短命令は違法』東京地裁 小池知事『必要かつ適正』」NHK
 

長谷川社長「75%くらいはわかってもらえたと思う」

今回の裁判は、結果としてはグローバルダイニングの「敗訴」となっている。しかし、上記のように「時短営業の命令は違法」とした裁判所の判断は重いと言える。
 
長谷川社長は判決後の記者会見で、「(主張が)75%くらいは裁判所にもわかってもらえたとは思っている」と判決について一定の評価をした。ただ、営業の自由に対する違憲性や東京都の賠償責任については認められなかったため、控訴する方針だ。
 

▲判決要旨(長谷川社長のFacebookより)
 

今後の行政の判断指針になりうるか

グローバルダイニング弁護団の団長である倉持弁護士は、判決を受けてこのようにコメントしている。
 
「たとえば、行政が時短命令等を出すにあたって、実際に店舗を確認して、命令に合理性があるのかどうかを判断するという運用をこれからやるのかどうか。国会でもコロナをめぐる政府の対応を検証する有識者会議などの動きがある中で、判決の事情をどれだけ国会が取り入れるのかどうか。」
 
「なんとなくの同調圧力」でかけられた規制に対し、強く反発する飲食店は少なくない。今後の控訴審の行方も注目されるところだ。
 

 

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