東武大師線は、西新井駅と大師前駅の2駅間を結ぶ全長約1kmの鉄道路線で、乗車時間は約2分という日本でも数少ないミニ路線です。東武鉄道が保有し、運行しています。
現在は、東武スカイツリーライン(東武伊勢崎線)の西新井駅から延びる支線となっており、開通は1931年(昭和6年)。西新井大師(總持寺)参詣者の輸送を目的として敷設されました。
開業当初の計画では西新井と上板橋を結ぶ、総路線距離11.6kmの路線が計画されていました。この沿線計画が実現していれば、現在の環状七号線のルートとほぼ重なっている路線となっていたはずです。
しかし、計画翌年に発生した「関東大震災」のため計画が大幅に変更。すでに用地買収が完了していた西新井駅と大師前駅の区間のみが開業となって現在に至ります。
この偶発的な出来事によって、超短距離という東武大師線のユニークさが生じました。東京23区内では数少ない全線単線路線の一つであり、東武線では唯一、踏切が存在しない路線です。
沿線の特徴としては、全体的に閑静な住宅街が多いエリアが広がります。
商業施設が集結し活気に満ちた西新井駅周辺
西新井駅は、東武スカイツリーラインの急行停車駅となっています。東京メトロ日比谷線、半蔵門線へ乗り換えなしでアクセスが可能。バスで池袋、電車では中目黒や渋谷など、都内各所へ容易に移動できます。
駅周辺には大型商業施設、スーパーが多数あるため、ファミリー層にも人気のエリア。特に価格競争が盛んで物価が抑えられている点も魅力の要因です。
百貨店などの商業施設が充実する北千住駅へは東武スカイツリーラインの急行で1駅の距離。「ニトリ環七梅島店」へも車で10分弱です。
利便性に富みながらも、駅前から閑静な住宅街が広がっています。再開発によってきれいに整備された道路が印象的で、小・中学校、教育施設、病院、寺院や神社、公園が点在する落ち着いた住環境です。
今どきの便利さがあり、また下町らしさが残る温かみが感じられる街が形成されています。
西新井駅から2km圏内人口は約20万人、1人世帯比率は約40%で30~40代が多く居住し、65歳以上の割合は22%と低めです。
利便性の良さ、落ち着いた環境から若い家族層の居住も多く見られる一方、比較的高齢者割合が低いという特徴が見られます。若い世代を中心とした外食へのニーズに期待ができるエリアです。
現在の状況としては、商業施設は多数ありますが繁華街というイメージではなく、ファミリー向けの飲食店が多くみられます。居住層の年齢から、大人世代に歓迎される落ち着きのある店舗にも商機があると思われます。商業施設内にあるチェーン店との差別化が図れる、独自コンセプトの店舗計画がおすすめです。
このエリア周辺のランドマークには、「西新井大師」「EQUiA西新井」「パサージオ 西新井」「西新井トスカ」「アリオ西新井」などがあります。
都内でも屈指の参拝スポットがある大師前駅
大師前駅の由来となる「西新井大師」は、都内でも屈指の初詣スポットとして知られます。正式名称を「五智山遍照院總持寺」といい、創建は天長3年(西暦826年)という古刹です。
現在では「関東厄除け三大師」の一つとして、首都圏より多くの参詣者が訪れ、毎月21日には縁日が開かれて多くの露店が立ち並びます。
特に12月21日の縁日と初詣、1月21日の初大師は2つの駅が客であふれるほどの光景となります。
大師前駅は、無人駅でありながら自動改札機も券売機もないという特殊な駅で、西新井駅の「中間改札」が駅としての機能を担っています。
各地から多くの参詣客が押し寄せる土地ですが、居住地としては閑静な住宅街となっています。駅構内には「子育て応援パートナー」企業としての保育施設があり、出勤の途中で子どもを預けられます。
大型商業施設はありませんが個人商店が多数あります。大師のおひざ元という落ち着いた環境は、子育て世代にも好評です。
大師前駅の2km圏内人口は約19万人で、1人世帯率は約40%、居住者は30~40代が中心です。
出店に際しては、年間を通じて参拝客の途切れないスポットがあるため、集客力が期待できます。一方で、居住地としての住み心地にひかれる人も多く、カフェやさまざまな小売店が増加中です。駅周辺人口数もターゲットとしては十分。こちらの駅周辺も比較的高年齢層の割合は低めで、若い層からの需要もありそうです。
参拝客をターゲットとする出店計画も可能ですが、その場合はランチや軽食需要がメインとなるでしょう。居住層ターゲットの場合には、ファミリー向け・単身者でも気軽に入れて、定食などの日常的な食事を提供する店が喜ばれそうです。
1kmに秘められた東武大師線のポテンシャル
東武大師線は、全国の大手私鉄の中で第2位の短さです。しかし、超ミニ路線でありながら、年始には数万人の人が押し寄せる稀有な駅を有しています。2つしかない駅周辺には暮らしやすさで評価される閑静な住宅街が広がり、若い世代の居住も多く見られます。それぞれが地方都市クラスの人口を抱えており、出店候補地としてのポテンシャルは持ち合わせていると言えるでしょう。ユニークな要素がめじろ押しの東武大師線で、新たな店づくりを検討してみてはいかがでしょうか。