東京湾と相模湾との分水嶺をもつ港南区
港南区の誕生は1969年(昭和44年)、行政区再編により南区から分区されました。名称通り、横浜市の南部に位置しており区域面積は19.86平方km。東西に約5km、南北に6.6kmで、東は磯子区、西は戸塚区、南は栄区、北は南区に隣接しています。
港南区内には京浜急行本線・横浜市営地下鉄・JR根岸線の3路線が走行しており、主な駅には上大岡駅、上永谷駅、港南中央駅、下永谷駅、港南台駅があります。
港南区は鎌倉へと通じる道筋にあり、歴史的に重要な役割を果たしてきた土地です。旧武蔵の国と相模の国の国境の古道は、東京湾と相模湾の分水嶺でもあります。
区内には大岡川、堀割川、中村川などの河川が流れ、豊かな水流を生かした捺染(なっせん)業(布地へのプリント業)は半世紀を超える歴史を持ち、港南区の地場産業として現在も健在です。
港南区となって以降は、首都圏のベッドタウンとして大規模な宅地開発が進み、田園の中に新興住宅街が広がる風景が特徴です。
人口は2019年時点で21万3,933人。約9万世帯中、子どもを含む核家族家庭が約6万世帯、単独世帯が約2万7,000世帯となっています。最も多い世代は男女とも40代後半で、現役世代が住む街としての機能が伺われます。横浜市の中では住宅が比較的手に入りやすく、庶民的なエリアとも言えます。
山に抱かれた、なだらかな丘陵住宅地から富士山を望む
京浜急行本線・横浜市営地下鉄の中でも乗降客数の多い、上大岡駅周辺は、京急百貨店をはじめウィング上大岡、camio、イトーヨーカドー、オーケーなどの大型商業施設が充実しており、港南区の中でも一番のにぎわいがあります。上大岡駅前のメインストリート鎌倉街道の両側には、アーケード街や再開発のビルが立ち並びます。京浜急行の快速特急であれば、品川駅へは26分、横浜市営地下鉄では戸塚駅へ8分、新横浜駅へ23分で、首都中心からも程よい距離感です。
一方、港南台駅周辺には、イオンフードスタイル・相鉄ローゼン・港南台バーズなどがあり、周辺住民の生活用品を提供しています。美しく整備された田園住宅が広がり、港南区を代表する印象的な風景となっています。
港南区は、商業地、丘陵地、田園が共存し、利便性と落ち着いた生活が両立できるエリアとして人気があります。再開発事業の推進により、理想的な住環境が実現しています。
上大岡駅周辺の開発はいまだ進行中であり、さらなる発展が期待できます。港南区全体は適度な商業地域はありますが、大規模なビジネス街はなく、ベッドタウンとしての機能が強いエリアです。中心となっている年代層を見ても、落ち着いた土地柄であることが推測されます。港南区の北に隣接する南区は横浜市の18区中、人口密度が最も高い地区となっていますが、港南区内であれば、比較的出店候補となる場所が探しやすいといえるでしょう。
幹線道路周辺には、ビルやマンションが建ち並ぶ半面、南太田・吉田町・阪東橋といったエリアにはノスタルジックな下町文化が息づいています。商店街や伝統文化、古刹など、港南区の多様性が感じられます。こだわりのある店づくりをしたいのであれば、再開発地区とはまた異なるこうした地区に出店場所を選ぶという手もあります。
駅周辺であれば、帰宅途中のサラリーマンをターゲットとした和食や居酒屋、安くて気軽な定食屋などが重宝されそうです。全世帯の3割を占める単身者を想定した、1人でも気軽に入りやすい店舗設計をしていくと良さそうです。さらに、田園住宅地という特性を生かし、子連れでも入りやすいファミリー層をターゲットにしたレストランの需要も見込めるでしょう。
昨今の外食事情を考え合わせると、ベッドタウンという性格上からテイクアウト業態のニーズにも大きな商機があります。ファストフード的なメニューだけではなく、自宅でのメインの食事にできるような料理や、家族で食卓を囲めるようなお総菜系、バランスの良い食生活に貢献できる健康志向のメニューなどが考えられます。
再開発により今後の人口流入も視野に入れ、「食」への需要をうまく捉えながら、出店計画を綿密に設計していく必要があります。
穏やかな横浜市港南区では長く愛される店舗計画を
港南区は上大岡駅・港南台駅周辺に商業施設が集積し、交通機関の利便性が高いエリアです。近代的に整備された田園住宅が美しい景観をつくり、幸せな居住区のイメージを与えます。一方でなだらかな丘陵からは、遠く富士山を望む広大なパノラマが広がります。港南区には清々しさと便利さを兼ね備える街が多く点在しています。庶民的で落ち着いた土地柄を意識し、人々に長く愛される店舗計画をしていくことが、出店成功へのカギとなりそうです。