繁盛店への道

人気レストラングループ スぺシャルインタビュー Brianza Group「BRIANZA TOKYO」オーナーシェフ奥野 義幸氏、マネージャー太田和 勇樹さん

画像

タッチパネルオーダーシステムの導入は、未来へ向けたチャレンジ

都内で、カジュアルイタリアンを中心に5店舗運営する「Brianza Group」。2003年に麻布十番でオープン以来、イタリアンレストランをそれぞれの場所にあったスタイルで展開しています。今回は、2021年7月21日にオープンした、「BRIANZA TOKYO」で取り入れたという、タッチパネルオーダーの導入動機など、フード業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)について、オーナーの奥野 義幸氏と、「BRIANZA TOKYO」マネージャー太田和 勇樹さんにお話をお聞きしました。
 
―「TOKYO TORCH Terrace (トウキョウ・トーチ・テラス)」にオープンした「BRIANZA TOKYO」は130席の大型レストラン。店舗は、グループ初のタッチパネルオーダーシステムを導入しています。まずは、導入経緯をオーナーの奥野さんに伺います。
(奥野さん)「とにかく、試してみよう!」ということでしかないです。これからの時代、どんな流れになっていくのか、未知数ですよね。ただ、人員が不足することは避けられない。近年フード業界におけるDXというワードも持ち上がり、どの部分をアウトソーシングするかの選択も迫られてきています。
もちろん、すべての飲食店に必要だとは思っていません。DXは数店舗以上運営している企業が効率化を図るために取り入れていくものだと考えます。例えば、仕込みの部分をアウトソースしているレストランもありますし、今回のコロナ禍で冷凍技術をうまく導入したシェフも知っています。あくまでもそういった選択の一つとして、タッチパネルをセレクトしたまでです。
 
―現場のマネージャーである太田和さんから見て、タッチパネルオーダーに対するお客様の反応はいかがでしょうか。
(太田和さん)コロナ禍でのオープンだったこともあり、非接触という部分でも概ね好感触だと感じています。オーダー以外にも、タッチパネルで割り勘金額まで出せるので、レジ前での時間短縮にもつながっていますね。もちろん、時には、デジタルが苦手なお客様からネガティブなお声を頂くことも有りますが、それでも導入してよかったと思っています。
接客されることが好きなお客様や、食べることが好きで料理についてしっかりと聞きたい方は、呼び出しボタンでスタッフを呼んでくださいます。
 
マネージャー太田和 勇樹さん
▲マネージャー太田和 勇樹さん
 
―それは、とてもいいですね。お店側にとってのメリット・デメリットを教えていただけますか。
(太田和さん)はい、スタッフ2~3名の削減にはなっています。そして、具体的なメリットとしては、オーダーミスがほとんどなくなりました。やはり、スタッフコミュニケーションですと、どうしてもミスが起きてしまいます。特に、忙しいランチタイムは役立ちますね。ほかにも、飲み放題プランの際、ラストオーダーの10分前にパネルに表示が出ますし、ラストオーダー時間以降はオーダーができなくなります。新人やオーダーテイクが苦手なスタッフなどにもプレッシャーが少なく良いみたいですね。
デメリットというか、気を付けなければいけないことは、テーブル番号とタッチパネルが連動しているので、そこをずらさないということです。あとは、充電ですね。
 
―「BRIANZA TOKYO」のお客様についてお聞かせいただけますか?
(太田和さん)9割はネットからのご予約を頂いております。来店客層は、20代後半から30代のお客様が中心ですね。そのためか、8割くらいのお客様がお会計はキャッシュレスです。
 
―もう、時代的にそうなってきていますよね。タッチパネルオーダーも自然な流れですよね。
(太田和さん)はい、ほとんどのお客様は特に利用方法に戸惑われませんね。130席とフロアも広いので、パネルの呼び出しも便利に活用してくださっています。
 
―タッチパネルを導入して、今のところメリットのほうが多そうですね。
(奥野さん)まだまだ今はデータ収集期間なので、結果がでるのはこれからだと思っています。
 

 
―フード業界の人材難は前々から問題でした。しかし、今回のコロナ禍によって、いよいよ深刻化が増してきています。そんな中で、いかにスムーズに運営をしていくかということに意識を向けていかないと時代においていかれますよね。
(奥野さん)本当にそうなんです。そもそも、飲食店の参入障壁が低すぎて、都内にはレストランが増えすぎました。それが、今回のコロナ禍によって、飲食業界の人材は流出していってしまいました。なかなか人材は戻ってこないと思います。そんな中、これからの飲食店は、2極化が始まるとみています。
しっかりと人に向き合い、レストラン本来の楽しみ方として存在するお店と、ファストフードや専門店のようにシンプルに食を満たすお店。中途半端なお店は継続していくことがなかなか難しいのではないでしょうか。世界的に、日本の食文化は認められています。しかし、国はなかなか日本の食文化の魅力を大切にしてくれているようには感じません。
というのも、先ほども言いましたが、簡単な講習を受けさえすれば特に資格がなくともお店を開くことが出来ますよね。それって、ある意味自由ではありますが、放任されているように思うんです。そんなことも影響してか、労働環境については、他の業界と比較しても、とても遅れています。この時代でも、週1休みとか、長時間労働などもまだまだ当たり前の業界です。そんな環境では、モチベーションが続くはずがありません。弊社では、スタッフが気持ちよく働けるよう、労働環境をとても大切にしています。
 
―奥野さんはとても視野が広いと感じるのですが、やはり海外での経験も影響していますでしょうか。
(奥野さん)それもあるとは思います。学生時代にアメリカにいましたし、その後、飲食業界に入ってからはイタリアへ渡っていたことも大きく影響はしています。近年は、アメリカでレストランプロデュースにかかわったり、茨城県つくば市にあるテスラカーのパワーチャージーステーションでのレストラン経営も共同で行っていますので、常にグローバル情報も意識していますね。
ただ、アメリカは表面上、とても派手にAIビジネスの進化をアピールしていますが、まだまだ裏ではアナログの世界が広がっているのも事実なんです。そういった現実を知らないと、ただ取り残されていくように感じてしまいますよね。DXについての情報も信頼できる人や文献から正確に得て、考察しています。
 
オーナーシェフ奥野 義幸氏
▲オーナーシェフ奥野 義幸氏
 
―流石です。今日の世界情勢もあり、物価上昇も避けられません。奥野さんは今後のレストラン経営について大切なことは何だとお考えですか?
(奥野さん)まずは、ロスを出さないことと、水光熱費などの節約をしっかりとすることです。多くのお店が、そのあたりをどんぶり勘定で経営しているように感じます。バックオフィスにおいて、出来るところまで工夫をした上で、最後の最後にメニュー価格を上げていきましょう。物価が上がっているのですから、店のみが犠牲になるのは無理ですよね。ただ、価格を上げるのを当たり前に思うのではなく、顧客に心地よく受け入れてもらう必要があります。そこで大切なのが、「ブランディング」だと私は考えています。
いわゆる、「ブランド」になることで、お客様=ファンとなり、少しの値上げに関しても応援する気持ちになってくれると思うんです。
 
―たしかに。ブランド力があるお店は、ファンが離れないですもんね。奥野さんが目指す今後の展開を教えてください。
(奥野さん)今は、ブリアンツァグループとして多店舗経営をしていますが、始まりは21年前の個人店からです。年月をかけて、少しずつブランディングに変化を与えてきました。ただ、時代は急速に変化を遂げているので、ここからますますブリアンツァグループのブランド強化を図っていきたいと思っています。
レストランは日本の一つの産業として必要であることは明白なので、その中でファンのお客様をいかに増やしていくことができるかがこれからの価値につながっていくと考えます。そして、ファンの方を飽きさせないように、常に挑戦をしていきたいと思います。
 
―今日は、お忙しい中ありがとうございました。とても勉強になりました。
 

<おすすめ料理>

ブリアンツァのスペシャリテ トリュフのオーブン焼き

 

天然鮮魚のオーブン焼き

 

店舗概要

内装"

 

取材・文 青山友美  食専門のPR企画&編集・ライターとして活動中

 

 

「繁盛店への道」の関連記事

関連タグ

「開業レポ」記事の一覧