飲食店開業者インタビュー　VOL.33「江戸前天麩羅　天堂」　松浦　栄治さん／揚げたての天麩羅を気軽に食べてほしい

東京メトロ「町屋」駅から徒歩１分、2021年2月25日にオープンしたのは、「江戸前天麩羅　天堂」。オーナーの松浦栄治さんは、コロナ禍での影響も考えて、ランチやテイクアウトにも強い、天麩羅にこだわったメニューにされたそうです。ご夫婦、二人三脚での独立は、作業分担もしっかりされていて効率的。地域密着を意識したお店作りには着実にお客様がついている印象を受けました。

―オープンから数カ月ですが、お店の状況はいかがですか？
（松浦さん）そうですね、時短営業要請が続いているなかで、なかなか思うようにはいきませんが、制限がある中でお客様に来店いただける努力をしています。

―そうですよね、コロナ禍の状況でのオープンは大変だったと思います。この時期のオープンまでの経緯を教えていただけますでしょうか。
（松浦さん）はい、3年ほど前から、当時契約社員をしていた妻の次の契約満了の時期に「一緒にお店を始めたいね」という話はしていました。自身は飲食企業での勤務、妻は広告デザインの仕事をしていたので、お互いの得意分野で協力してお店を持つことをイメージしていました。そのタイミングがコロナ禍ということで、とても迷いましたし、悩みました。昨年から飲食業界は厳しい状況におかれていて、私の出勤日数と給料が激減してしまいました。転職先を新たに探すくらいならばと、このタイミングで独立をしようと決意したんです。

―なるほど、飲食業界の窮地が背中を押したということですね。
（松浦さん）そうですね。そこで2020年の9月から物件のリサーチをスタートしました。なかにはコロナ禍でなければそんな条件で出るはずがないと思うような物件もありました。そしてWEBで何百という物件情報を比較した中で20件あまりの物件をピックアップしました。自分的にランキング1位の物件は問い合わせのタイミングですでに契約ずみに。NO2は王子駅近隣だったのですが、実際、内覧させてもらったら厨房が狭すぎて、やりたいメニューの半分はあきらめなければいけない印象でした。その他にもいくつかの物件を比較検討したなかでこちらの物件が自分のイメージしていた条件に一番近かったということです。そしてこの物件の厨房に見合ったメニューを再構築しました。

―はじめから居抜き物件を探されていたんですか？
（松浦さん）まぁ、資金が潤沢にあるわけではないので（笑）なるべくそのまま使える居抜き物件というのが条件でした。消防や保健所申請も通りやすいのが魅力ですよね。スピード感を持ってオープンできますし。こちらの物件は2020年の2月から空き物件だったようですが、ほぼそのまま利用することができました。元々あった中華コンロと餃子焼き機を和食の設備に交換したくらいですね、費用をしっかりかけて購入したのは。他の厨房機器は全部使えましたし、カウンターは自作しましたが、テーブルや椅子もそのままです。大家さんもいろいろとサポートしてくださる方で大満足です。

―天麩羅をメインにしたメニュー構成にした理由を教えてください。
（松浦さん）天麩羅って日本食のなかでかなり人気上位にくるメニューだと思うんです。スーパーなどでも販売されていますし。でも外食の天麩羅というとなんだか少し高級になりがちですよね？専門店は特に。家庭でやるのは、たくさんの油もつかいますし、手間もかかってしまう。「揚げたての天麩羅って美味しい」って多くの人が思っているのに、揚げたてを手頃な価格で食べる機会って実は多くないなと。この地域は住宅地ですから、ご家族で利用していただけるように、天麩羅1品から注文していただけて、ごはんやお蕎麦、お酒にも合わせられるようにと考えました。

―お店の店名について教えてください。
（松浦さん）「天堂」の天は天麩羅の「天」です。そして「堂」は、御堂からいただきました。この「堂」は【多くの人が集まる建物】という意味があるんです。うちのお店の天麩羅を通して多くのお客様に集まってきていただきたいと思って付けました。

―まさに近隣に住む方々にとってはうれしい救世主ですね。
（松浦さん）オープンはコロナで人が集まることがはばかられる状況でしたからひっそりと行ったので、はじめはなかなか厳しい売上でした。大きなPR活動はせず、袖看板を目立つようにしたくらいですね。しかし、有難いことに、看板をみて徐々にお客様が来店してくださり、緊急事態宣言が出た後もランチとテイクアウト（お弁当）の需要は変わりなくあります。この状態でも来店いただけることが嬉しいですね。