開業ノウハウ

飲食店の排水管の詰まり、原因と対策や居抜き店舗で出店する際の注意点を解説

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飲食店において、営業中にある日突然、厨房で水が流れなくなってしまった経験のある人は意外と多いかと思います。排水管や排水溝に詰まりが発生していることが主な原因ですが、原因を知っていれば、そうならないように事前に対応(予防)をすることができるので、飲食店の運営が効率的になります。一方で厨房から水が流れなくなってしまうと、飲食店の営業に支障をきたしてしまいます。ここでは、飲食店に多い排水管の詰まりについて、困ることのないように原因と対策、昨今、主流となっている居抜き店舗を活用して出店する際の排水管の注意点などについて網羅的に解説をしていくので是非、チェックをしてみてください。
 


 

◆飲食店の排水管に詰まりが発生する主な原因

飲食店の排水管に詰まりが発生する原因は何でしょうか。飲食店は、一般家庭よりも油脂や生ゴミなどの発生量が多く排水管が詰まりやすい環境であると言えます。ここでは、飲食店の排水管が詰まる主な原因について説明をしていきます。
 

◇油脂

飲食店の厨房から大量の油脂が排出されると、排水管が詰まる原因となってしまいます。この油脂が混ざった排水が排水管内に時間をかけへばり付いていきます。そして固形物化して1箇所でも排水管の中を埋め尽くしてしまうと排水がされなくなりつまりが発生します。飲食店の業態によって扱う料理は様々ですが、総じて、油を多く使用する業態で排水管が詰まりやすい傾向があります。
 

◇ゴミ

排水管の中に水に溶けないものが流れ込むことも考えられます。具体的には、下げたお皿に挟まっていたおしぼりとその袋、割りばしなどの比較的大きなゴミや生ゴミなどが取り除かれず、そのまま排水として流してしまうといったことがあります。気づかないうちに、これらのゴミが排水管の奥へ流れこんでしまうと、排水することができなくなってしまいます。
 

◇グリーストラップの設置がない、または適切な清掃がされていない

上記の油脂やゴミなども原因はそもそも厨房にグリーストラップが設置されていない、またはグリーストラップは設置されているけど清掃を怠っていたりして正常に機能していない(油脂をろ過する機能が落ちている)ことから起こっている可能性が高いです。清掃をしていないグリーストラップは、意味を成さないものになってしまいます。なお、飲食店の厨房にグリーストラップを設置することの必要性についての詳細については「飲食店の厨房にグリーストラップ「グリスト」を設置する義務や必要性はあるのか?」を確認してください。
 

◇自然災害の影響や経年劣化

想定外の出来事で排水管の詰まりが発生することもあります。例えば、大きな地震で排水管にヒビ割れが発生することやつなぎ目にずれが発生してしまうことがあります。また、地盤沈下により排水管に傾きが生じて勾配がなくなりうまく流れないといったこともあります。これらは自力でなんとかすることが困難なので専門の業者に修繕を依頼することになります。
 

◇排水管の口径が小さい

もともとが事務所仕様の物件であるなど飲食店を想定していない物件も多くあります。そういった場合の多くは一般的な飲食店を想定した排水管よりも細い構造になっているため流れにくくなります。飲食店に適した配管構造になっていない上、グリーストラップの設置がない、または清掃することを怠っていたりすると、早い段階で排水管の詰まりが発生してしまいます。
 

◇排水管の設置状況

排水管の設置状況についても詰まりに影響を与えます。具体的には、排水管の勾配がとれていない、排水管の距離が長い、排水管の曲がり角が多い場合は、水の流れが弱くなるので詰まりやすくなります。詰まりやすい排水管の設置状況である場合は、清掃の頻度をあげることやいくつかの対策をすることで詰まりのリスクを軽減することができます。まずは自身の飲食店が詰まりやすい設置状況なのかどうかを把握しておく必要があります。
 

◆飲食店に必要な排水管の口径

飲食店に適した排水管はどのくらいの口径でしょうか。物件の広さや出店する業態によっても異なるのですが、ここでは一般的な目安について説明をしていきます。特に、事務所仕様の物件や物販店を飲食店として使用する場合、飲食店の物件ではあるけどカフェのような軽飲食の業態の居抜き店舗などは口径が小さいことも多いので注意が必要となります。具体的に飲食店に必要な排水管の口径は、汚水は、Φ75もしくはΦ100、雑排水は、Φ65もしくはΦ75となります。物件によっては、汚水と雑排水が分かれていない場合がありますが、そういった場合は、汚水に雑排水を合流させて排水する方法をとることもあります。排水管の口径については、契約に先立つ内見時に専門の内装業者による現地調査を入れるようにしてください。もし、不足する場合、増設することができるようであれば、工事によって対応することになります。ただし、この工事にかかる費用はテナント負担となることが多いです。
 

◆排水管の種類(材質)と特徴

設置された年代によって使用されている排水管の種類(材質)が異なります。現在では、土管や金属製(鉄管、鉛管、銅管)から硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)が主流となっています。ここでは、それぞれの種類(材質)の特徴ついて解説をしていきます。
 

◇土管

土管とは、粘土を焼いて作った円管のことを指します。長年の使用で管自体に排水が浸み込んでいきます。また、排水管同士の継ぎ目は、周囲をコンクリートで固めて固定しているだけのため、地震や地盤沈下などでヒビが入りずれてしまうこともあります。土管が排水管として使用されている場合、古い建物であることが多く、劣化している可能性があります。
 

◇金属製(鉄管、鉛管、銅管)

丈夫で耐震性があるので鋼管は、長らく排水管の定番として用いられていましたが、一方で錆に弱いといったことはあるので、現在ではあまり使用されていません。土管同様に古い建物で使用されていることがあります。
 

◇硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)

硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)は、現在、主流となっている排水管です。特徴としては、内面が滑らかで腐食に強く、鉄管などと比較すると軽量で施工性にも優れています。一方で耐熱に欠点があります。グレーのタイプの硬質ポリ塩化ビニル管(塩ビ管)は、60℃くらいの熱湯まで耐えられるとされています。これ以上の温度の熱湯を流してしまうと、排水管の接続部分で使用されている接着剤が溶けてしまうことや排水管それ自体が変形してしまったりすることがあります。これらは、自力でどうにかすることが難しいので専門の業者に修繕を依頼しなくてはなりません。チョウバエ対策として、熱湯を排水管に流すことはリスクが伴います。
 

◆排水管が詰まりやすい飲食店の業態

飲食店には様々な業態がありますが、総じて油(脂)を多く使用する業態の排水管は詰まりやすいです。具体的に詰まりやすい業態としては、中華料理店、ラーメン店(豚骨ラーメン)、焼き肉店が上げられます。特に豚骨ラーメンは、動物性の油(豚の油)なので強固な油の詰まりになるばかりでなく、強い匂いを発生させるので厄介です。焼き肉店については、調理油だけでなく動物性の脂が流れるので比較的詰まりやすいです。また、飲食店の規模、排水管の状態によっても詰まりやすくなったりします。
 

◆排水管の詰まりを防ぐための対策

飲食店において排水管の詰まりを未然に防ぐためには対策をする必要があります。主な対策としては、適切なグリーストラップの清掃、パイプクリーナーによる油脂の分解、ドレンクリーナーで油脂を削り落とす方法、定期的な排水管の高圧洗浄があります。
 

◇適切なグリーストラップの清掃

グリーストラップは厨房の排水から油脂等を分離する設備になっています。そのため、焼き肉店、焼き鳥店、中華料理店など油を多く使用する業態については、特に清掃頻度を高くする必要があります。なお、油をあまり使用しない業態であっても、来店数が多い場合には、清掃頻度を高くしていく必要があります。理想としては、毎日こまめに清掃を行うことですが、グリーストラップの清掃は手間と時間もかかるので、業態に合った清掃頻度を考えていかなければなりません。
 

◇パイプクリーナーで油脂を分解

パイプクリーナーで油脂を分解することができます。飲食店の厨房からは大量の油脂が排水されるので、家庭で使用できるパイプクリーナーではなく、業務用のパイプクリーナーが効果的です。使用する際には製品の案内に沿って適切な量を排水管に流し込んで一定時間放置した後に水を流します。業務用のパイプクリーナーは、薬剤が強力なため、刺激臭などで気分が悪くなる場合があるのでマスクやゴーグルなどをした方がよいです。また、強力な薬剤で排水管に不具合が生じてしまう可能性もあるので注意が必要です。
 

◇ドレンクリーナーで油脂を削り落とす

ドレンクリーナーで油脂を削り落とす方法もあります。ドレンクリーナーは、ワイヤーの先端に、油脂による詰まりを削り取るための金具が付いていて、排水管の内部にドレンクリーナーを挿入していき、スイッチを押すと排水管内で先端部分に付いている金具がぐるぐると回転して油脂を削り落としていきます。
 

◇定期的な排水管の高圧洗浄

排水管の詰まりを取り除くことや詰まりを予防するためには、定期的に高圧洗浄をすることが効果的です。また、高圧洗浄は専門の業者に依頼した方が良く、そうすることで詰まりの原因を特定することができたりするだけでなく排水管の奥まで洗浄することができます。業者に依頼することなくホームセンターなどで販売されている高圧洗浄機を使って自身で洗浄してもここまではなかなかできません。以下は専門の業者に依頼した際の排水管の高圧洗浄の流れになります。
 
1.清掃前の排水管の確認
管内カメラで入って詰まりの状況を確認する。
2.排水管の詰まりの除去
管内に詰まっている異物を排水管清掃機で除去をする。
3.排水管の洗浄
高圧洗浄機で管内に付着している異物を洗浄する。
4.排水管の清掃後の確認
排水管の清掃後に管内カメラで状態を確認する。
5.作業報告書の作成
高圧洗浄の作業前および作業後の状態を写真や動画で記録をとり作業報告書を作成する。
 

【高圧洗浄によるリスク】

排水管は、熱湯、中性以外の洗剤、老朽化などにより劣化していきます。この劣化によって排水管の耐久性が低下してしまった場合、高圧洗浄によって高い水圧をあてるとそこに亀裂が入り、漏水を引き起こしてしまうおそれがあります。排水管高圧洗浄を自身で行うと危険です。排水管の亀裂等を防止するためには、高圧洗浄の前に排水管の状態を正しく把握しておく必要があるのですが、これを判断することは難しいので専門の業者に依頼することをおすすめします。
 

◆居抜き店舗で出店する際の注意点

昨今、居抜き店舗を活用して飲食店を出店することが主流となっています。スケルトンから造作をして一から飲食店を作り上げるよりも既にある造作を活用して出店する方がコスト面でメリットがあるからです。ただし、居抜き店舗はメリットばかりではありません。ついついメリットばかりに目がいきがちですが、注意しなければならないポイントもあります。居抜き店舗の設備は中古品であるということを忘れてはいけません。特に、埋設されている排水管は外から状態を確認できるわけではないので見落としがちです。例えば、経年劣化により排水管自体に不具合が発生している場合や定期的な清掃を怠っていたため排水管内に油脂が蓄積しているといったことも考えられます。このような排水管の状態では、漏水事故や排水管の詰まりによる逆流が発生することもあります。また、居抜き店舗の場合は、テナント切り替えのタイミングに営業をしていない期間(排水管を使用しない期間)があったりします。この期間に油脂が固まり、詰まりの原因となることも考えられますので注意してください。営業中に排水が逆流してしまってはせっかくの新規OPENが台無しになってしまうのでOPENする前に排水管の状態を確認し高圧洗浄などの対策をしておいたほうが無難です。
 

◆おわりに

以上、ここまで飲食店の排水管の詰まりの原因と対策、飲食店の居抜き店舗での注意点などについて解説をしてきました。埋設されている排水管が外から状態を確認できない(リスクがわかりにくい)のでついつい見落としがちです。飲食店において排水管が詰まると悪臭や害虫が発生しやすくなります。また、この状態を放置するとやがて取返しのつかない事態となり修繕費用が高くなってしまうことも考えられます。排水管の詰まりが発生した場合は、なるべく早く対応するようにしましょう。
 

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飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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