何から始めれば良い?備蓄はどれだけ必要? 「災害大国」日本で飲食店に求められる防災とは
地震、台風、豪雨…日本は自然災害大国といえる。その規模も年々大きくなり、大きなダメージを受ける地域が後を絶たない。
「いつ、誰が被災してもおかしくない」そう感じながらも、店舗として何から始めて良いかわからないという経営者も多い。しかし最低限の知識は身につけておきたい。
自然災害は増えている
毎年必ずどこかで大規模な自然災害が起きているという実感のある人も少なくないことだろう。実際、大規模自然災害は増加傾向にある。下のグラフは、「死者10人以上」「被災者100人以上」「緊急事態宣言の発令」「国際援助の要請」のいずれかに該当する自然災害の年間発生件数を示している。
図1 日本での大規模自然災害発生状況(出典:2019年版「中小企業白書」中小企業庁) p398
台風や大雨のたびに「かつてない規模」「数十年に一度」といった言葉を耳にするのも、災害規模が年々大きくなりつつあることの象徴だろう。では、台風や大雨といった自然災害にはどのような備えをすれば良いのか。
備えの第一歩は「ハザードマップ」から
被災防止や災害対応の方法を考えるにあたって肝になる第一歩は「ハザードマップ」の確認だ。自治体から紙や冊子の形で配布されている場合もあれば、ネット上で閲覧することもできる。
ひとくちに「自然災害」といってもその形は様々だ。河川の氾濫、高潮、土砂崩れ等、川や海が近いのか、山が近いのか、海抜高度はどうなのか。これらは地形によっても異なるため、自分の地域に「起きやすい」災害のタイプを知る必要がある。
ハザードマップの一例はこのようなものだ。東京都千代田区の「洪水ハザードマップ」を例にしてみよう(図2)。
図2 千代田区の洪水ハザードマップ(出典:「千代田区ハザードマップ」千代田区) p4,5
同じ区内でも、色の付いている浸水水想定区域とそうでない区域がある。災害への備えは、店舗がどのような場所にあるか知ることから始まる。
お客様・従業員の安全確保と備蓄
災害発生時、まずはお客様と従業員の身の安全が第一となる。
大雨や台風に関しては事前にテレビなどで位置などの情報を得ることができるので、早めに店舗の被災防止を講じた上で、無理に開店しないという判断が必要になる。通勤時に万が一のことがあれば労災にもなってしまう。また、避難情報について知っておきたい(図3)。
図3 避難情報と取るべき行動(出典:「避難情報に関するガイドラインの改定(令和3年5月)」内閣府)
営業中に状況が急変したという場合、テレビで情報をチェックし、遅くとも上の表の警戒レベル3「高齢者等避難」情報が出されるまでにはお客様を帰し、従業員もすみやかに帰宅や避難の準備を始めるのが良いだろう。
大地震の際にはまずお客様の身の安全をはかり、できるだけ早く屋外に出てもらう必要がある。そして、備蓄については以下の目安を参考にしたい。以下は農林水産省が示す「1日分」の備えである(図4)。
図4 必要な食料備蓄(出所:「もしもの災害に備える」農林水産省)
なお、災害発生から食料が調達されるまでは3日が目安だが、孤立する可能性がある地域や人の多い都市部では1週間程度かかると考えておきたい。飲食店の場合、いくら「食材がある」と言ったところで、電気やガスが止まってしまうと事情は違う。そこで、非常用の食料は別途必要と考えた方が良い。これらを平常の出勤人数分プラスアルファで備えておく必要がある。お客様が帰宅できなくなってしまっている可能性もあるからだ。
店舗の減災のための備え
店舗の損害を減らすことも考えたい。水害の可能性がある場合、早めに土のうなどで浸水を防ぐ必要がある。大地震の場合は、余震に備えて高い場所にあるボトルなどの割れ物を低いところに移すことも考えられる。
特に飲食店は一般家庭と違って食器、ボトルなど割れ物が非常に多い。片付けの際に割れ物でケガをしないよう、厚底の防災靴があると良いだろう。事前の備えだけでは防ぎきれない大きな災害になった場合は、まず店舗の被災状況を写真撮影するようにしよう。保険金請求の時に役に立つ。
またテナントビルの場合、災害時の避難場所としての屋上の解放などについて事前に協議しておくのが良いだろう。自然災害はいつ誰の身に降りかかってもおかしくない。特にお客様や従業員を迎え入れている飲食店の場合、自分たちだけを守るだけでは済まない。
そして、日頃から近隣の商店や地域と繋がりを持つのも良いだろう。消防団などとともに、防災について考える集まりを開くことができるとベストである。
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