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メガフランチャイジーの経験活かし、伝統の「もつ焼き」ブランドをチェーン化する

「もつ焼き」の居酒屋チェーンは、古くから営業を続けているところが多い。「大衆居酒屋チェーン」とは、「世代」で語られるが、「もつ焼き」の場合、この範疇から外れている。
つまり「世代で語られる」とは、第一世代が「養老乃瀧」、第二世代は「つぼ八」といったこと。その時代でブームとなって、また新しいブームが誕生したということ。それが「もつ焼き」の場合は、同じブランドがずーっと継続している。その理由は、「もつ焼き」には古くから続いているからこその、「ブランドに対する安心感」が存在しているのではないだろうか。
東京・中目黒で「本店」を構える「もつ焼き ばん」では、2025年10月にフランチャイズ展開を表明して、いま加盟店募集を盛んに行っている。そこで、同ブランドを展開している株式会社ばんの代表、松本勝氏に、同ブランドの強さとチェーン化の展望を伺った。
【2014年10月、創業の街・中目黒にオープンした「中目黒本店」。「本店」としての風格がある】
中国でビジネスの基盤をつくり、日本に役立てる
「もつ焼き ばん」とは、1958年東京・中目黒に小杉正氏が創業したお店である。2004年12月に惜しまれて閉店した。その後を継いだのが小杉氏の娘婿の松本勝氏。2006年7月に五反田店を出店。10年9月「ばん」を設立、以来、14年10月中目黒本店をオープンするなど、店舗展開を推進していく
松本氏は社会人となってから、1990年に広告マーケティングの会社を起業した。以来、この分野の仕事をしながら、飲食店のFC加盟店となり、これらのブランドが増えていってメガフランチャイジーとなった。一時期80店舗を超えていた(2008年に解消)。
そんな中で、奥様の父のお店、1958年に創業した中目黒の「もつ焼きばん」が、2004年12月、中目黒の駅前再開発でお店を閉じた。その後、義父の弟が2005年に祐天寺に「もつ焼き ばん」をオープンして、従業員も受け継いだ。
松本氏は2006年に、のれん分けで五反田店をオープンした。この当時は、松本氏が多数所有していた店舗の中の一つのブランドとして管理していて、15坪、月商250万円でスタートして、2年程は赤字続きであったという。
その後、創業の町、中目黒に物件が出たことから2014年10月に中目黒本店をオープンした。オープン当初は創業者である義父も元気で串打ちを手伝っていたという。それ以来、三軒茶屋店(18年4月)、下北沢店(20年9月)、高田馬場店(21年7月)、恵比寿店(23年1月)、沖縄那覇店(24年2月)、上海店(25年9月)と出店していった。
松本氏は、メガフランチャイジーの会社を解消した後、上海に渡って、中国の事業の基盤をつくっていった。2011年に上海で飲食業の複数ブランドを立ち上げて14年間継続して、ピーク時には自社開発ブランド13、受託ブランド22で63店舗を運営していた。
【「ばん」代表の松本勝氏。メガフランチャイジーであった経験を、フランチャイズ本部に活かしていく】
これが、2020年1月にコロナが発生した。22年4月に上海市は完全封鎖、その後、コロナの体制は解禁されたが、現在の中国の事業は5店舗に絞って経営を集中させた。
一方の、日本の「もつ焼き ばん」は、コロナにあっても堅調であった。そこで、松本氏は過去にメガフランチャイジーを営んでいたことと、中国で培った経験を活かして、日本で「もつ焼き ばん」でフランチャイズ展開を行おうと考え、1年間の準備期間を経て昨年FC立ちあげを発表した。人員不足の対応策として、昨年上海にオープンした「もつ焼き ばん」で育成した中国の従業員を、特定技能制度で日本の加盟店に送るということも用意しているという。
【「中目黒本店」は14坪弱で48席と詰めているが、お客はこの空間に安心感を抱く】
創業のメニューは全店同じ、オリジナルで個性を発信
パンデミックに見舞われていながら、日本の「もつ焼き ばん」は堅調に推移していた。
五反田の店舗は2年間赤字続きであったと前述したが、着実に商売を重ねていくにつれて売上が伸びていった。15坪、月商250万円だった五反田のお店は、月商1100万円を超えるようになった。そこで松本氏は、「『もつ焼き ばん』には伸びしろがある」と確信したという。中目黒本店は14坪弱であるが、ここも1100万円を超えるようになった。いまも前年同月比で106~108%あたりで推移している。
客単価はどのお店も2200円弱。原価率は平均38%前後と若干高めであるが、ほとんどのお店は、休日なしで11時30分から翌朝4時までの16.5時間営業を行い(3交代制)、1日4.8回転となっている。松本氏は「薄利多売ではなく「薄利多多多倍」で、この売上をつくっているのです」と語る。
「もつ焼き ばん」が強い背景として、松本氏は「創業者である義父がつくったメニュー構成を変えていない」ということを一番に掲げている。グランドメニューは150品目程度で、もつ焼きは1本80円(税別)から、5本盛り600円というセットがよく選ばれている。
【人気メニューの一番は「5本盛り」600円(税別)で、焼台はフルに回転している】
松本氏はこう語る
「常連のお客様は、『もつ焼きばんは変わらないね~』とおっしゃいますが、それが重要なポイント。とは言え、店ごとに変える部分もあります。それはそれぞれの店の店長が考えるメニューで、例えば、中目黒本店では『本日のおすすめ』として、『アジフライ(タルタル)』308円(税込)、『ほっこり焼きなす』418円というのをやっています。ここが店ごとに違うのですよ。そこで、同じ『もつ焼き ばん』であっても、それぞれの店にファンがついています。『オレは三軒茶屋のばんがいいな』という感じです」
「ですから、これから加盟店になる方には、グランドメニュー以外は自分が得意とする独自のメニューを出していただきたい。海鮮居酒屋のオーナーさんであれば、得意の『刺身メニュー』をお薦めしてください、と」
また、『もつ焼き ばん』はデリバリーも強いことが特徴である。既存店では、デリバリー専門業者にお願いして、デリバリーだけで月商200万~300万円を上げているお店もある。
【「レモンサワーを発案した店」であることを訴求して、提供方法は創業当時から変えていない】
過剰な投資をしない、エリアにこだわらない
松本氏は、メガフランチャイジーを運営していた経験を、これからどのように活かそうと考えているのだろうか。
「私が経験してきたFCは、本部が決めた同じ内装、同じメニューという具合に、決まったことしかやってはいけなかった。お客様にとっても、同じ店名であれば『どこも同じ』ということで安心感をもたらしていました」
「いまの時代は、それが仇となります。『どこに行っても同じものが出て来る、ということは、たぶん品質もそれなり』という受け止め方をされるのですね。面白みがない、という感覚ですね』
松本氏はメガフランチャイジーを営んでいた当時、1つのFC店に内装設備で8000万円をかけたこともあったという。これは後々ものすごい負担となった。
「いまの時代は15坪の居酒屋でもスケルトンだと内装設備で2000万円以上かかります。そこで『もつ焼き ばん』では、居抜き出店をお薦めしています。うまくいけば、内装にかかるコストが300万円程度で済む場合もあります。これだと、スケルトンで出店するのと比べて複数店舗を出すことが出来ます」
そこで「もつ焼き ばん」のフランチャイズ展開は、「過剰な投資をしない」「エリアにこだわらない」ということを信条にしている。松本氏は、加盟店オーナーに「エリアではなく、物件との出会いを大切にしましょう」とアドバイスをしているという。そこで、物件が上がると、率先して松本氏はじめ本部の人間が現場を見に行って、オーナーにその印象を語るようにしている。
「オーナー様には『最初は15 坪、月商600万円を目標にしましょう』『そして常連さんをたくさんつくって、5年で1000万円のお店にしましょう』とお話ししています。この根拠は、2023年1月にオープンした恵比寿店が初月に800万円を売ったのですね。そして半年で1000万円を超えました。『もつ焼き ばん』のブランドが良く知られているのだと思います」
「もつ焼き」が、これまで「世代」で語られることのなかった「強さ」がここにある、と筆者は感じ取った。
【松本氏が初めてつくった五反田店。店頭のイメージは全店とも同一で、それがファンに安心感を抱かせる】
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
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