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フードサービス・ジャーナリスト 千葉哲幸 連載第二十六弾 コロナ禍で盛んな低コスト出店サポート 後編

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低コスト出店サポートの事例後編は「@Kitchen」である。これは株式会社WORLD(本社/東京都中央区、代表/坂めぐみ)のブランドで、1つのレストランのキッチンを複数のシェフ(=飲食事業者)がシェアするというものだ。
 
初めて手掛けたのは2020年5月、東京・浅草。ここを皮切りに、2号店、3号店を期間限定で出店。4号店が東京・青山、国連大学の隣のラ・ポルト青山の地下「@Kitchen AOYAMA」、5号店は同じビルの1、2階「@Kitchen AOYAMA café」でそれぞれ2020年10月にオープン。今年の1月に6号店「@Kitchen AZABU」をオープンした。これらの沿革を見ての通り、同店が誕生したのはコロナ禍がきっかけとなっている。
 

インバウンドが消えた浅草でアイデアがひらめく

同社では2019年当時急増するインバウンドに対応して11月吾妻橋のたもとに「体験Dining 和色 -WASHOKU-」をオープンしたが、翌年に入りコロナ禍となった。4月緊急事態宣言となって海外からの予約はすべてキャンセルとなった。
 
そこで、店舗を生かした新しい取り組みを行なおうと考え、シェアキッチンを考えた。キッチンをシェアするのは、まず自社の「和色」、これに2店舗を募集してイタリアンとフレンチに入ってもらった。5月からこの形態で営業したところ売上は順調に伸びて行き、8月に営業開始以来最高の売上を達成した。これが今日の「@Kitchen」へとまとまっていく。坂氏はこう語る。
 
「@Kitchenのコンセプトは『専門店が集まる大人のフードコート』。一つのレストラン空間の中にさまざまな専門店の出店者がいることで、お客様はさまざまな食事を楽しむことができます。一般的なフードコートは大きな商業施設の中にあり、チェーン店が出店していて顧客のメインはファミリーです。@Kitchenの場合は街中にあり、デートや女子会で使えるようなフードコートです」
 
「@Kitchen AOYAMA」の店頭。地下1階にあり、同フロアは飲食のオープンな集合体となっている。【「@Kitchen AOYAMA」の店頭。地下1階にあり、同フロアは飲食のオープンな集合体となっている。】
 
シェアキッチンに取り組むアイデアは、どのようなことからひらめいたのだろうか。坂氏はこう語る。
 
「コロナ禍で老舗のレストランが閉店するとか、飲食業界の経営環境が厳しいということが日々報道されています。オーナー様も厳しいですが、飲食店を一つ閉めると、そこで働いているスタッフ、シェフたちも世の中に放り出されてしまいます」
 
「有名店で働いてきたシェフは実力があり、将来独立して店を持ちたいという志もあります。このようなビジョンを持ってチャレンジしていたシェフたちが、コロナ禍の状況には関係なくチャレンジできるようなフィールドを当社でつくろう。それがシェアキッチンとなりました」
 

出店希望者の「料理に対する志」を重視する

出店者は、同社の問い合わせフォーム、料理人の人材派遣会社からの紹介、既存のシェフの紹介といった3つのパターンで出店する。初期費用ゼロ、固定費ゼロで、出店手数料が売上の歩合となる。この仕組みによって資本がなくても出店が可能で、営業を継続することができる環境となっている。
 
現在の出店者は平均年齢が20代半ばから30代前半の若いシェフたちである。「初期費用が低いので出店したい」というきっかけはそこにあっても、単純に動機がそれだけの人はお断りをしている。だから、しっかりと面接を重ねている。面接で重視しているポイントは、料理のジャンルを問わず、そのシェフが「料理を通してどのようなことを実現したいか、という人生感」とのことだ。
 
「@Kitchen AOYAMA」は40坪、36席とレストランとしてはゆったりとした構成になっている。【「@Kitchen AOYAMA」は40坪、36席とレストランとしてはゆったりとした構成になっている。】
 
「@Kitchen AOYAMA」では「フードロス」を取り入れている。これは同社が全国の生産者とパイプをつくり、規格外の農産物や魚介類をサブスクリプション契約によって送り届けてもらっている。規格外であっても正規品と同じ価格にしている。
 
「青山で食事をする人は、価格で食事をする人ではありません。食事をすることに、社会性、SDGs、エシカル消費といった『イミ』を感じている人たちです。食べることでシェフの応援やフードロスの貢献につながる。このような食を通して社会課題を解決していくという喜びを味わうことができる飲食店にしたいと考えました」(坂氏)
 
「@Kitchen AOYAMA」に入居する5人のシェフたち。フレンチ、イタリアン、すしとバラエティに富んでいる。【「@Kitchen AOYAMA」に入居する5人のシェフたち。フレンチ、イタリアン、すしとバラエティに富んでいる。】
 
今年1月にオープンした「@Kitchen AZABU」はテイクアウトとデリバリー専門のクラウドキッチンで、2つの法人が出店している。出店している法人のブランドは「Uber Eatsの口コミ評価が4.8以上」「1カ月のオーダー件数が500以上」に限定、路面店で外からキッチンの様子が見渡せるようになっていて、「人気ブランドを集めたクラウドキッチンのモデル」をコンセプトとしている。
 
このような、@Kitchenの初期投資ゼロ、固定費ゼロというスキームは、独立開業や店舗展開のハードルを低くするものとして注目され、その事業者も増えていくことだろう。
 

 
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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