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フードサービス・ジャーナリスト 千葉哲幸 連載第二弾 激安新世代 (後編)

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「気にならない価格」のバルが3年足らずで7店舗出店

 

 

「単品価格が安いバルが今年の1月から加盟店の募集を開始した」と聞いて、その店「BEEF KICHEN STAND」(以下、BKS)の新橋店とアパホテル秋葉原店を訪ねた。同店は株式会社奴ダイニング(本社/東京・秋葉原、代表取締役/松本丈志)が2016年3月横浜・新杉田に1号店をオープンし、以来、東京と神奈川に7店舗展開している(他業態を含めて全店計11店)。

ステーキBEEF-KITCHEN-STAND 激安新時代

 

驚いたのは、メニューの“安さ”である。

A4見開きのメニューを開くと、左側の上に「MEAT 肉料理」という囲みがあり、「名物ビフテキ(50g)」290円、「オールビーフハンバーグステーキ(120g)」380円、「牛ハツのレアロースト」290円、「四元豚ポークステーキ」380円、「大山鶏のチキンステーキ」380円がラインアップされている。これらが同店のキラーコンテンツであることが伝わって来る。

それ以外は、「ALL100円」2品、「ALL110円」5品、「ALL130円」6品、「ALL150円」7品、「ALL199円」16品、「ALL290円」9品、「ALL380円」8品と、価格で分類されたものを含めて約60品目がラインアップされている。

ステーキBEEF-KITCHEN-STAND 激安メニュー

 

このメニュー構成を見て思い出したのはペガサスクラブの渥美俊一氏のことである。渥美氏は日本にチェーンストア理論を紹介し1960年代から80年代にかけて小売業界に大きな革新をもたらした。常に「価格2分の1を実現することは、真の社会貢献だ」と訴えていて、受講生は皆その情熱に奮い立っていた。

 

小売業の用語に「Affordable Price」(アフォーダブル・プライス)がある。これは「気にしないで買える」「平気で買える」というもの。例えば、どのような商品も1万円以上なら気にするが、500円以下なら気にしないで買える。このように原価や市価とは無関係に絶対的低価格を実現しているものをアフォーダブル・プライスという。

 

BKSはまさに「価格2分の1」であり「アフォーダブル・プライス」である。ペガサスクラブのような大野望を感じた。

 

経営に行き詰りを感じで猛勉強、新業態のアイデアをもたらす

同社代表の松本丈志氏は、1978年10月生まれ、横浜出身。飲食業を営む家庭で育った。

高校卒業後は寿司店で修業、5年を経てから父の店に入った。しかしながら、経営について父と考え方が合わず、松本氏は自分で事業を切り拓いていく。

 

2008年9月創業の店を京急新杉田に“和風ダイニング”のコンセプトでオープンするが、これが街の空気感になじまないと考え、その後の店も含めてもつ鍋やもつ焼きの店に切り替えていった。

その理由を松本氏は、「店舗展開をしていくために効率化を図り、少人数でオペレーションが可能な店づくりを考えていたから」という。創業当初からしてチェーン化志向なのである。

 

2013年の当時5~6店舗の段階で経営に行き詰りを感じたという。この隘路から抜け出すために、松本氏は経営塾の塾生となり、また多くの研修を受講するようになった。中でもMG(マネジメントゲーム)研修は、経営者としての発想力を鍛え上げ、現在主力業態となっているBKSのアイデアをもたらした。

 

BKSは1号店以来3年足らずだが、繁盛店として育ってきた。坪効率の上位3店を挙げると新橋店が7.64坪30席75万円で1位、2位がアパホテル秋葉原店で13.5坪35席48万円、3位が野毛店で10坪40席45万円。売上高1位は歌舞伎町店(20坪60席)で2018年12月に1000万円という実績を持つ。客単価は2200円である。

ステーキBEEF-KITCHEN-STAND 行列

 

同社ではこの1月からBKSの加盟店募集を開始した。2025年までに200店を目標としているという。これまで多様な立地に直営7店舗を展開してきて、十分に検証を重ねたと判断したのであろう。

 

鶏ヤロー、BKSともに「激安」であるが、お客さまにとって店で仲間と語らう時の楽しさがある。それは料理のクオリティとは異なる要素の、「気にならない価格」が店を利用する安心感の入り口となっているからだろう。そして店には利益体質を生み出す仕組みが整っている。この二つのチェーンに「激安新世代」を感じさせる。

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

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