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高級ハンバーガーを自社便でお届け!「TGALデリバリー」

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第二十一弾
ゴーストレストランはいきなり多様化 前編

 
コロナ禍によって飲食業に顕著に見られた変化は「ゴーストレストラン」の出店事例が活発になったことだろう。この分野にはこれまで「出前」「仕出し」があるが、ゴーストレストランはこれらをより仕組に落とし込んでいて、スマートフォンやwebが成長の速さに拍車をかけた。ここではこのトレンドの中にあって特徴的な事例を二つ紹介しよう。一つは「専業型」、もう一つは「二毛作型」である。
 

高級ハンバーガーを「出前」したことが専業化の始まり

まず、ゴーストレストランの「専業型」として株式会社TGAL(テガル)(本社/東京都千代田区、代表/河野恭寛)を紹介しよう。同社のメインのブランドは「TGALデリバリー」で、発祥は2015年7月にオープンした「バーガーズカフェ グリルフクヨシ」神保町店である。
 
そもそも同店は、高級ハンバーガーチェーンの「シェイクシャック」が2015年11月にアメリカから日本にやって来ることを察知して、神奈川・相模原でハンバーグレストラン「グリルフクヨシ」にレシピ作成を依頼し、1個1000円の高級ハンバーガーを販売することから始まった。
 
しかしながら、実店舗だけでは月商300万円を超えることが出来ずに赤字が続いた。そこで「出前」で出数を増やす方法を思い出し、2015年の暮からデリバリーを手掛けるようになった。
 
1号店の「神保町店」は行列の店が立ち並ぶ飲食街にある【1号店の「神保町店」は行列の店が立ち並ぶ飲食街にある】
 
最初は自転車で500m圏内、1㎞圏内、そしてバイクに切り替え1.5㎞圏内と拡大。さらに近隣の有名店のオーナーに掛け合い、ブランドを増やしていったところ、デリバリーの売上は400万円となり、神保町店の売上はいつしか800万円を超えるようになった。
 
現在、同社の事業は次のように構成されている。
まず、「TGALデリバリー」の直営店16、FC54。「MR弁当」の法人がFCで7。ゴーストレストラン146。また、同社はブランドを80所有していて(半分は実在する店舗)、これを既存の実店舗がブランド拠点として活用している店がそろそろ300店舗を超える。これらでバーチャルレストラン(VR)としてのブランド拠点数は約3000となる(10月上旬現在)。空中系で商いをするレストランの数としては日本の中で圧倒的に多い。
このような数になるは、1つの店舗で複数のブランドを営んでいる事例が多いからだ。さらに、海外での「TGALデリバリー」事業がある。現在シンガポールに2店舗あり、今後積極的に推進していく構えだ。
 
ちなみに前述の「MR弁当」とは、製薬会社の医療情報担当者がドクターに新薬の説明をする際のランチタイムに食べてもらう弁当のこと。1個当たりの価格の上限が3000円と決められているが、単価が高く、1回に10個前後とまとまった数量となる。全国に300億円の市場があるとされている。
 

商品の価格、営業時間も現場の店長が決める

TGALデリバリーは1配送(1組単価)3000~3500円あたり。法人で2万円から2万5000円、VRは2000円となっている。FCのロイヤリティは1店舗あたり一律5万円。VRの場合は売上の5%となっている。
 
「グリルフクヨシ」のハンバーガーは1300円~1600円と高単価【「グリルフクヨシ」のハンバーガーは1300円~1600円と高単価】
 
同社が保有するブランドのメニューは、協力工場が二次調理まで済ませて、冷凍などの状態でそれぞれの店舗に配送し、店舗では煮る、焼く、温めるなどの最終調理を行ってデリバリーを行なう。こうして、ブランドの拠点(直営・FC・法人・VR・海外)では高度な調理技術がなくてもぶれることなく同じクオリティの料理を提供することができる。
 
販売方法の基本は「デリバリーだけ」。Uber Eats(以下、ウーバー)や出前館などのキャリアではなく自社便で行う。こうしてデリバリーコストを下げて、ミステリーショッパーを導入して、商品を届ける時のおもてなしをブラッシュアップしている。家賃比率は4%に想定していることから「3㎞圏内に世帯人口10万人」というルールの下で、これまでの一等地とは異なる場所に出店する。注文はすべてネット上で行っている。このような体制で、1店舗あたりデリバリーも含めて3~5人で運営している。
 
店舗は従来の一等地であることよりも世帯数が多いことが重要【店舗は従来の一等地であることよりも世帯数が多いことが重要】
 
また、TGALデリバリーには地域戦略が存在する。同社では、店の営業時間、ブランド選定、価格、これらのすべてを現場に任せている。
店舗の隣に、同じようなハンバーガーショップがあっても、それに対してTGALデリバリーの商品に優位性があると判断されれば、300円高く販売しても構わない。営業時間も同様。3時間で利益が出るのであればそれでもいい。この時の基準となるのは、競合店をちゃんと見ながらどのポジションで戦っていくか、ということだ。
 
TGALデリバリーが行っていることのすべてが斬新だが、これが著しく早く定着しているということはこれらの需要が著しく増えているということだ。
 
(後編)に続きます。

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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