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フードサービス・ジャーナリスト 千葉哲幸 連載第一弾 「減少していくもの」「顕在化していくもの」この二つに目を向けよう! (前編)

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「18%」と「45%」。

飲食店の人は、この数字を記憶にとどめておくべきだ。

「18%」とはJTが発表した「日本の全体喫煙率」(2018年)である。詳しく述べると男性27.8%(1880万人)、女性8.7%(474万人)で17.9%(1880万人)となっている。ここでは隣の数字「45%」と比べやすいように小数点以下を四捨五入した。これは2018年5月時点のもので、前年比で0.3ポイントのマイナスとなっており、減少傾向が続いている。

ちなみに2010年の場合、男性36.6%、女性12.1%、全体23.9%であった。

 

「45%」とはグローバルの視点で捉えたフードダイバーシティ(食の多様性)の比率である。フードダイバーシティとは宗教、主義・思想、アレルギーなどによって食に禁忌を持っている人のことである。

これについてはきちんとした統計はないが、筆者は昨年9月27日にヨコハマグランドインターコンチネンタルが「ホテル内レストランが全てベジタリアン対応できるようになった」ということをアピールする試食会に参加して、同ホテルの総料理長・齋藤悦男氏からこのようなことを聞いた。

 

「1000人クラスの国際会議があると、25%がベジタリアン、15%がハラール、5%がグルテンフリーのお客様です。実に45%がフードダイバーシティなのです」

最早、フードダイバーシティとはマイノリティではない。

この二つの数字に関わることとして、筆者の実体験を含めて近年の動向を紹介しよう。

 

禁煙化によって客層が変わり売上が伸びた「串カツ田中」


千葉哲幸連載 串カツ田中 禁煙化 ポスター

まず、喫煙率に関連した動向である。

串カツ田中ホールディングスの「串カツ田中」では、昨年6月1日よりほぼ全店で全席禁煙化ないし一部フロアでの分煙化を行った(同社直営の86店で全席禁煙)。同社の貫啓二社長は、実施前日5月30日のfacebookで「ビビッている」と投稿していた。禁煙化によってこれまでの顧客の多くを失うかもしれないという不安感は膨大なものであろう。

 

筆者の大阪の知人が言うには「串カツとたばこは付き物」というから、串カツ屋さんでたばこが吸えないということは別の業態になるということだ。“大阪伝統の味”を冠とする「串カツ田中」としては、その世界から離れる決意をしたことになる。

 

果たして、禁煙化した串カツ田中は別の業態になっていった。

 

禁煙化一カ月後の同社発表によると、禁煙化してからのお客様アンケートでは「安心して子供を連れてくることができる」「妊婦でも来ることができる」「おいしく食べられる」というプラスの声が多く見られ、従業員アンケートでも「女性客、若者、年配客が増えた」「働く上で快適になった」「高校生の学校帰りの利用が増えた」「土日は男女カップルが多くなる」という具合に、禁煙前に見られなかった現象が起きているという声が挙げられた。

客層の動向で増加したのは、ファミリー6%増、一般の男女グループ(20代)1%増、女性・カップル1%増。減少したのは、男性グループ6%減、一般男女グループ(30代~)1%減となっていた。

 

業績が決して悪化することのない奇跡の現象

その後、顧客対策としてさまざまなアクションを展開した。


千葉哲幸連載 串カツ田中 食べ放題 ポスター

 

8月に入ってから営業時間を前倒しして閉店時間を早めた。グランドメニューに食べ放題を加えた。これには「連絡なく食べ放題のスタート時間から15分遅れた場合はキャンセル扱いとする。キャンセルの連絡は前日まで、当日のキャンセルは半額がキャンセル料として発生する」――このようなキャンセルポリシーを示した。これは禁煙化したことが独自性のある業態として後押ししたように感じられる。

 

11月に入り、21日から新しく「ノースモーキングチャレンジ」を通常サービスとして開始している。これはお客様が従業員にたばこを見せると、ドリンク1杯をメガサイズに変更するというもの(定額で倍増)。同社では「これによって、喫煙者に串カツ田中に来ていただいてプチ禁煙を提案する」と述べている。

 

労働環境の面では、「深夜労働時間短縮により従業員負担の軽減」「働き方の選択肢が広がることで人材確保に寄与する」「深夜帯の営業時間を短縮することで店舗運営を効率化する」ということが期待されている。

禁煙化してからの串カツ田中の既存店は、客単価が下がったが(97%前後)、客数が増えたことで(115%あたり)、売上が上がった(110%あたり)という業績で推移している。

2019年1月度の既存店は客単価96.0%、客数118.4%、売上113.7%。全店ではそれぞれ95.8%、168.7%、161.5%となっている。

この動向は奇跡と言ってよい。しかも、このトレンドは禁煙化が一巡する今年の6月以降も、トーンが下がりながらも継続していくことだろう。

 

(後編)に続きます。

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

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