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新生ダイナックが打ち出す「焼鳥居酒屋」「鮮魚居酒屋」の進化系

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第四十二弾
「脱宴会」「脱法人需要」の時代 前編

 

飲食業の盛業支援から経営者へ

サントリー系の外食企業ダイナックは昨年5月に上場を廃止し、サントリーホールディングス(HD)の完全子会社となった。その背景にはコロナ禍で急激に業績不振になったことが挙げられる。
 
同社がコロナ禍前まで強みとしていたのは「オフィス街立地、ビジネスパーソン、宴会・社用使い」ということで、総店舗数160を擁していた。それがコロナ禍で強みとしていた分野の需要がなくなり30店舗閉店した(現在は110店舗の体制)。
 
この新生ダイナックの代表に就任したのは秋山武史氏。秋山氏はサントリーの中で飲食店の盛業支援を行う「グルメ開発部」に20年弱在籍していた。この間、秋山氏は「角ハイボール」の普及に務めサントリーの業績に大きく貢献したとともに、新しい飲酒のスタイルをつくり上げた。その秋山氏が外食企業の社長に就任したということで、いま飲食業界から大きく注目されている。
 
秋山が同社の代表となったのは昨年9月。ここから新生ダイナックの再構築が動き出した。秋山氏はグルメ開発部在籍当時から、これからの外食の存在意義が「繁華街、ミレニアル世代(1980年~1990年代半ばごろまでに生まれた世代)、日常使い」「郊外・住宅地、ファミリー、食事使い」というものに変化していくのではと考え、2020年4月ごろから未来予測を立ててメンバーと話し合っていたという。
 
今年に入って、同社では続々と新業態をオープンしている。これらの新業態に秋山氏が考えてきた「これからの外食の存在意義」がどのように表現されているか見てみよう。
 

フード、ドリンクともにつくり込む

その第一弾は「焼鳥 ハレツバメ」。これは同社の鶏料理業態「鳥どり」から業態転換することを想定して開発されたもの。1号店として「鳥どり 横浜鶴屋町店」が「焼鳥 ハレツバメ 横浜鶴屋町店」となって3月30日にオープンした。個室とカウンター席で構成された平面プランはそのままにして、50代が主要顧客であった「鳥どり」からミレニアル世代も取り込めるメニュー構成が考えられた。
 
「焼鳥 ハレツバメ」の看板メニューの一つ「おまかせ冷菜5種盛り」1380円(税込)【「焼鳥 ハレツバメ」の看板メニューの一つ「おまかせ冷菜5種盛り」1380円(税込)】
 
同店のフードは「鴨串焼き」「季節のおばんざい料理」「鴨出汁せいろ」とおおまかに3本柱で構成されている。鴨串焼きの名物は鴨肉100%のつくねを生から焼き上げる「鴨生つくね」と、鴨肉ロースで焼きネギを巻いた「鴨ねぎま」。串焼きのタレは数種類のしょう油をブレンドして有馬山椒を利かせている。ちなみに「鴨鳥5本盛り」は1280円。季節のおばんざい料理は、単品以外にもそれぞれを少しずつ豆皿にのせた「おまかせ冷菜5種盛り」1380円(以上、税込)もラインアップされている。すべてが野菜で彩もよい。彩の良さとヘルシー感がミレニアル女性に愛されるポイントだろう。
 
ドリンクは有馬山椒をトニックウォーターに漬け込んだシロップとジンを合わせた「ハレツバメサワー」、店舗でヒノキに漬け込んだ特製ウイスキーの「檜薫ハイボール」、そば焼酎に濃厚なそば湯でつくった丸氷を入れて独特の甘みと味わいの変化を楽しむ「蕎麦湯氷ロック」などをラインアップしている。
 
「焼鳥 ハレツバメ 横浜鶴屋町店」のカウンター席。平面プランは「鳥どり」当時のもので、このほか個室で構成【「焼鳥 ハレツバメ 横浜鶴屋町店」のカウンター席。平面プランは「鳥どり」当時のもので、このほか個室で構成】
 

釣り魚を安定的に仕入れる仕組み

第二弾は「釣宿酒場 マヅメ」。これは同社の魚業態「魚盛」から業態転換することを想定して開発されたもの。1号店として「魚盛 日本橋店」が「釣宿酒場 マヅメ 日本橋店」となってオープンした。
 
「釣宿酒場 マヅメ 日本橋店」の店頭は海辺にある釣宿のイメージ【「釣宿酒場 マヅメ 日本橋店」の店頭は海辺にある釣宿のイメージ】
 
同業態のコンセプトは「都会にいながら“釣り魚”をリーズナブルに楽しめるお店」。釣り魚は網で獲られる魚よりもストレスが少なく旨味が強いとされ,血抜き等の適切な処置を施すことによって鮮度を保つことができる。しかしながら、釣り魚は釣り人自身や地元で消費されることが多く、都心に住む人が食べる機会はほとんどない。それが都内近郊の釣宿や一部漁港と提携したことで、安定的な仕入れを実現して店舗展開が可能になった。
 
「釣宿酒場 マヅメ 日本橋店」の店内は周辺のサラリーマンの利用が多く週末は満席が続く【「釣宿酒場 マヅメ 日本橋店」の店内は周辺のサラリーマンの利用が多く週末は満席が続く】
 
看板のフードメニューは「おまかせ刺身 7種盛り」1590 円(5種盛は990円/税抜)。釣宿から仕入れる鮮魚を「本日の釣果」として提供する。ランチメニューでは「鯛土鍋めしと白えびかき揚げ定食」1280円を推している。鯛めしが食べ放題となっていて、まずはそのまま、特製ごまダレに和えた鯛刺身をのせたお茶漬け、おこげも楽しむことができる。
 
ドリンクではハイボールやレモンサワーが1杯目390円、2杯目290円、3杯目190円(税抜)と注文するごとにどんどん安くなるシステムを導入、燗酒を鯛出汁で割った「鯛出汁割り」などもラインアップした。
 
「焼鳥 ハレツバメ」「釣宿酒場 マヅメ」ともに従来型の表現をすると「焼鳥居酒屋」「鮮魚居酒屋」となる。しかしながら、実際に店を体験すると圧倒的につくり込まれていることに驚く。ドリンクもフードと同様にアイデアの結晶である。
 
「釣宿酒場 マヅメ」のランチの看板メニュー「鯛土鍋めしと白えびかき揚げ定食」1280円(税抜)【「釣宿酒場 マヅメ」のランチの看板メニュー「鯛土鍋めしと白えびかき揚げ定食」1280円(税抜)】
 
(後編)に続きます。
 

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

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