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健康な人でも2~3割が無症状のまま保菌 黄色ブドウ球菌はどこにいる?飲食店での食中毒を防ぐには

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食中毒を起こす細菌のひとつに「黄色ブドウ球菌」があります。黄色ブドウ球菌は動物だけでなくヒトの皮膚、鼻や口の中、髪、化膿した傷口、ホコリの中などにも広く存在しており、健康な人でも一定の割合で保菌者がいます。
 
また、テイクアウトや弁当でも集団食中毒を起こすことがあります。黄色ブドウ球菌は一般的なブドウ球菌の中で最も危険とされています。その特徴や食中毒の予防方法をご紹介します。お客さんや従業員を守るためにも基礎知識を押さえておきましょう。
 

◆黄色ブドウ球菌は人間の周囲に幅広く存在

黄色ブドウ球菌は、顕微鏡で見るとぶどうの房のように集まっていることからこの名前がつけられました。
 

(出所:「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」東京都保険医療局
 
食中毒の原因になるウイルスや細菌は生肉などに多く生息しているという印象が強いかもしれませんが、黄色ブドウ球菌は動物だけでなく、人間を取り巻く環境に広く存在しています*1。わたしたちはニキビができたり怪我をしたりすると膿が出ます。こうした膿の中にも黄色ブドウ球菌が多く含まれています。水虫もそうです。
 
それだけでなく、日頃から人間の皮膚、鼻や口の中、髪、ホコリなどからも高い確率で検出され、健康な人でも鼻や喉、腸管などに20~30%が菌を持っているという統計もあります*2。つまり無症状の人がいる、というわけです。
 

◆加熱しても冷凍しても毒素が残る

黄色ブドウ球菌は菌を持っている人が素手で調理するなどして菌が食べ物に移り、食べ物の中で増殖するときに毒素を作ります。エンテロトキシンというものですが、この毒素はとても頑固なものです。菌そのものは熱に弱くても、毒素は100℃で20分の加熱をしても分解されない強さを持っています*3。よっておにぎりや寿司、サンドイッチなど素手で調理されたものだけでなく、茹でたり蒸したりした麺類、肉・卵・乳などの調理加工品及び菓子類にも毒素は残ります。また、この毒素は低温にも強く、冷凍しても無害化できません
 

黄色ブドウ球菌の毒素の特徴
(出所:「黄色ブドウ球菌による食中毒について」横浜市
 
実際に、冷凍保管していたおにぎりで食中毒が発生した事例もあります*4。加熱しても冷凍しても毒素が残る、という非常にやっかいな存在です。
 

◆黄色ブドウ球菌食中毒が発生する季節は?

食品安全委員会によると、黄色ブドウ球菌による食中毒は年間を通して発生しているものの、特に5月~10月に増える傾向があるということです*5。
 

◇黄色ブドウ球菌食中毒の症状

そして、黄色ブドウ球菌の毒素による食中毒の症状は多岐にわたります*6。まず、約3時間後に激しい嘔気・嘔吐、疝痛性腹痛(差し込むような腹痛)、下痢を伴う急激 な急性胃腸炎症状が発生します。死亡に至ることはほとんどありませんが、症状には個人差があり、発熱やショック症状が起きることもあります。
 

◆黄色ブドウ球菌による食中毒の予防方法

では最後に、黄色ブドウ球菌による食中毒を防止する方法をご紹介していきます。まず、ここまで述べてきた通り、毒素が食品の中に入ってしまうと手がつけられないという前提があります。よって、人の手から料理に菌を移さないことがメインです。
 
農林水産省が紹介している予防ポイントは以下の4つです*7。
 
手にケガをしているときは、調理しないようにしましょう。とはいえ、他に調理できる人がいないなら、手袋をしたり、傷が食品に直接ふれることのないよう十分注意しましょう。
・調理前は、よく手を洗いましょう。
・食品は冷蔵庫に入れて、菌が増えないようにしましょう。
髪の毛やつばが食品に入らないように気を付けましょう。
・おにぎりを握るときにラップを使うと菌が付きにくく衛生的です。
 
先ほども紹介しましたが、黄色ブドウ球菌は無症状のまま保菌している人がいます。よって、従業員が健康な状態であっても、知らぬ間に料理を介して来店客に菌に汚染された料理を提供し、食べた人に毒素が入ってしまう可能性があります。もちろん、ケガや腹痛・嘔吐がある従業員には食品を触らせないことも原則ですし、黄色ブドウ球菌は人の皮膚にも存在するため、触った食器や調理器具を介して誰の口に菌が入るかわかりません
 
2024年では8月に、鹿児島県鹿屋市の飲食店で製造された弁当を食べた20人が食中毒の症状を訴えたためこの飲食店が営業停止処分を受けたほか、群馬県桐生市内でおはぎによって黄色ブドウ球菌の食中毒が起き、営業停止処分を受けています*8*9。来店客はもちろんのこと、従業員の間で感染が広がる可能性もありますので、日頃から調理前の手指の洗浄・消毒は徹底しておきたいものです。
 
*1*3 「黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)」東京都保険医療局
*2*6 「ブドウ球菌食中毒とは」国立感染症研究所
*4 「食中毒…会社で従業員14人が嘔吐、配達された“おにぎり”食べていた 具材はサケ、ワカメ、ツナマヨ 黄色ブドウ球菌を検出、スーパーを処分 食べず持ち帰った従業員も…自宅で冷凍した“おにぎり”にも菌が」埼玉新聞
*5 「ブドウ球菌食中毒 (Staphylococcal foodborne poisoning)」食品安全委員会 
*7 「黄色ブドウ球菌(細菌)[Staphylococcus aureus]」農林水産省
*8 「鹿屋市の飲食店で製造された弁当を食べた20人が食中毒の症状」NHK
*9 「桐生市内の菓子店が製造した食品を原因とする食中毒事件について(食品・生活衛生課)」群馬県
 

清水 沙矢香(しみず・さやか)

2002年京都大学理学部卒業後、TBSに主に報道記者として勤務。社会部記者として事件・事故、テクノロジー、経済部記者として各種市場・産業など幅広く取材、その後フリー。取材経験や各種統計の分析を元に多数メディアや経済誌に寄稿中。
 

 

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