顧客満足を高める接客に効果的な「担当制」~お客様から呼ばれることを前提としない接客を目指す~
今回は、顧客満足を獲得するうえで効果的な接客環境「担当制」についてお伝えしたいと思います。
「うちの店はサービススタッフ2名だけの小さなお店だから担当制なんて必要ない」というお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、実際に、担当制を導入しなくても、スタッフ同士の情報伝達が行き届いていれば、担当制を導入した時と同じくらいの接客レベルになる場合もあります。しかし、お客様から呼ばれることを前提としない接客を目指すのであれば、どんなに少人数でも担当を設定することをお勧め致します。
接客が担える部分を最大化する為に必要な環境は、業態に関係なく、1人の接客スタッフが担当するテーブルをエリアで括る「担当制」や「エリア制」と呼ばれる接客環境だと思います。一般的に、欧米では自分が担当したお客様が払ったチップを副収入にできる「チップ制」が定着しているので、誰がどのテーブルを担当したのか明確な担当制が当然の環境となっていますね。
日本ではチップ制を導入されていませんが、ファインダイニングや業態に関わらず席数の多い大型店舗では、この「担当制」を導入しています。しかし、カフェや個人オーナーのレストランではまだまだ導入されていないケースが多いようです。
担当制サービスの理想
理想は、担当(責任)は明確になっているが、スタッフ同士が助け合い、気づくとスタッフ皆で店全体をまわしているという状態。これが一番効率的に接客できている状態です。
そこへ行き着くためには、先ず一人一人の接客技術を磨くこと。具体的には無駄な動きを無くし、効率よく接客できるようにすることです。そうすると、気持ちにも時間にもゆとりができて、他のスタッフを手伝おうという気持ちになるものです。
担当制で生まれるメリットとは
では具体的に説明を進めていきましょう。この「担当制」のメリットは、1人のスタッフが、担当したお客様の入店から退店までの責任をもつため、そのお客様の食事のペースや好み、性格(会話がお好きだったり、そうでなかったり)を把握することで、より手厚い接客が可能となることです。
例えば、担当制を導入していないと、『ドリンクのお替りをスタッフに訊かれたので断ったら、またすぐ違うスタッフが訊きに来て何度も断って面倒』ということも起きてしまいます。担当制が決まっていれば、このような煩わしさをお客様が感じずに済むわけです。
また、運営側の視点で見ると、イレギュラーなリクエストの多い常連客の予約が入った場合に、ベテランスタッフが担当するテーブルにアサインするなど、スタッフの力量に合わせて、席の振り分けができたり、後日お客様から苦情の連絡があった場合でも、テーブルを担当したスタッフが分かれば、当日の状況をより詳しく確認することができます。
そして、営業中に、どのスタッフがどのお客様を担当しているのかが明確であれば、店長やオペレーションリーダーが店舗全体の状況などを確認しやすくなります。このシステムを導入することで、スタッフから「接客に集中できるので働き易い」という声が挙がることも幾度となくありました。
担当制で注意したいポイント
このように、より手厚い接客を行う上で、担当制が効果的なことはご理解頂けるかと思います。私も今までお手伝いをしてきた幾つもの飲食店で、この担当制を導入して頂きました。最終的にはその効果を理解頂けるのですが、そこに至るまでに、いくつかの問題が発生する場合があるので、ここでお伝えしておきます。
まず多いのは、担当を決めたのは良いですが、『自分の担当エリア以外のテーブルでお客様から呼ばれた時に、そのテーブルの対応をしたことによって、自分のエリアにスタッフが無人となり、また別のエリアのスタッフがそのエリアで呼ばれたから対応する』というケース。これを繰り返しているうちに、いつしか担当が担当でなくなってしまう、という問題です。
この問題を解決するには、他人のエリアは手伝わないということでは無く、別のエリアのテーブルから声がかかっても、無視はせず、お客様はサービスを必要としていることを分かってもらえば数十秒は待って頂けます。必ず、返事をしたうえですぐにそこへ向かわず、本来の担当スタッフかフリーで動いているオペレーションリーダーを探して呼ばれていることを伝え、そこへ向かってもらいます。
そのどちらも対応できない場合は、お客様の要望を伺います。「水を注いでほしい」というリクエストやドリンクの追加注文などであれば、すぐに対応ができるので、対応したうえで、本来の担当スタッフへ手伝った内容を伝えます。簡単に言えば、『返事はしっかりとして、自分がすぐに行かない』ということ。「担当の者が参りますので少々お待ちください」というお声がけをし、本来の担当スタッフかオペレーションリーダーに申し送りし、自分のエリアに戻って担当テーブルの進行に問題無いか見渡すことです。そのためにも、店長やオペレーションリーダーは、常に店全体に目を配り、フォローできるようにする必要があります。
次に、稀にある問題ですが、お客様が本来の担当スタッフとは異なる別のセクションを担当しているスタッフに声をかけた際、『声がけを聞こえないふりや、返事はするが来ない』という状況が時折見受けられます。このような状況が起きる背景には、いくつか理由があります。
『自分が担当しているテーブル以外には興味をもたなかったり、他のスタッフに自分のエリアのテーブルの接客をしないでくれと伝えたり』と、過度に自分の担当エリアに固執するスタッフが出てくるケースです。このケースは、『自分が担当したエリアのお客様は絶対に自分の接客で喜んでもらう』という意思の表れである場合があるので一概に悪いものとも言えませんが、1人で複数のテーブルを完璧に対応することは中々難しいことです。過度にお客様をお待たせしたりする場面は結果的によくありません。この解決には、上司からのコーチングが必要です。意地を張っている場合も多いので、協力して行っていく大切さを説いてあげてください。
スタッフ同士が「お願いします」「有難うございます」という基本のコミュニケーションをしっかりと取り合うこと。後輩スタッフが先輩スタッフにお願いしやすい環境を上司が作っていくことがもっとも大切なのです。
スタッフの「担当制」というスタイルで、ぜひ顧客満足度アップを目指してください。
井崎 正吾 経歴
1994年 パークハイアット東京「New York Grill&Bar」開業メンバーとして、サービスに従事する。その後、飲食企業の立ち上げ、営業本部長、代表取締役も歴任。
2008年には「Solid Foundation Japan」を立ち上げる。
2015年 カフェ・カンパニー株式会社 取締役クオリティ本部長に就任。
2018年より「Solid Foundation Japan」の活動を再始動。
日本ホスピタリティ推進協会教育機構認定「ホスピタリティ・コーディネーター」取得
国内外、異業種異業態の飲食店舗200店舗に携わる。
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