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テイクアウトや宅配にも注意 冬に増える食中毒の種類と発生時の対応

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飲食店で最も避けたい事態のひとつが食中毒だ。食中毒は季節問わず、様々な原因で発生する。また、最近はテイクアウトや宅配の需要が増えているが、弁当などにも注意が必要だ。季節による食中毒の発生状況や種類、そして発生した場合の対処方法を知っておきたい。
 

食中毒は年間を通して発生

食中毒の原因には様々なものがある。細菌、ウイルス、寄生虫、フグなどの自然毒などで、年間を通した食中毒の発生件数と原因物質を見ると下のようになっている(図1)。年間を通して食中毒は発生し、また、季節によってどの原因物質が異なっていることがわかる。
 

 
図1 月別の食中毒発生件数と原因
(出所:「食中毒が多い季節は?」農林水産省)
 
また、2020年の1年間で起きた食中毒の原因の内訳はこのようになっている(図2)。
 

 
図2 食中毒発生の原因別割合
(出所:「原因物質別の食中毒発生状況(2020年)」食品安全検定)
 
魚介類に寄生するアニサキスが最も多い。次いで生や加熱不足の肉がよく原因となるカンピロバクター。カンピロバクターは殺菌されていない井戸水や湧き水などが原因になることがある。菌を持った動物のフンに汚染されている可能性があるためだ。そして3番目に、二枚貝に含まれるノロウイルスが多くなっている。もちろん食品そのものだけでなく、調理に使った器具にも寄生虫や細菌は付着することがある。
 

冬に特に注意すべきはノロウイルス

これからの季節にかけて、厚生労働省が特に注意を呼びかけているのはノロウイルスだ。上記のように発生件数が最も多いこともそうだが、ノロウイルスは患者の数でも年間を通して半数を占めている。そして発生件数は、11月~2月の冬期に多くなっている(図3)。
 

 
図3 ノロウイルスの患者数、発生件数、1件あたりの患者数
(出所:「冬は特にご注意!ノロウイルスによる食中毒」厚生労働省)
 
食中毒発生1件あたりの患者数が34.3人と、他の原因による食中毒よりはるかに多いため、大規模化しやすいというのもノロウイルスの特徴だ。飛沫など、人から人に二次感染することが大規模化しやすい原因と考えられる。感染拡大防止対策として、厚生労働省は塩素消毒を推奨している。消毒液には次亜塩素酸ナトリウム製品を使い、目的ごとに違う濃度での消毒を勧めている(図4)。
 

 
図4 塩素消毒用消毒液の作り方
(出所:「冬は特にご注意!ノロウイルスによる食中毒」厚生労働省)
 
新型コロナウイルスの感染防止のために次亜塩素酸ナトリウムを購入したという飲食店は多いことだろう。店舗にある製品の濃度を確認して、ノロウイルス対策にも利用したい。客にも引き続き手指の消毒を求めるといったことも有効になりそうだ。また、テイクアウトや宅配の需要が高まっている。こちらにも注意が必要だ。
 

食中毒発生時の対応〜食品衛生法にも注意

食中毒の発覚は、そのほとんどが客に症状が出てからということになるだろう。その後、以下のような段取りで飲食店に通知される(図5)。
 

 
図5 食中毒発生後の対応
(出所:「食中毒の現状について」厚生労働省)
 
食中毒の疑いがある場合、まず医師から保健所に届出がある。保健所に情報は集約され、場所が特定されると保健所が飲食店に立ち入り検査などをし、店内の調査などを実施するという流れになっている。
 
症状を訴える客から店に直接連絡があった場合は、まず病院を受診してもらうのが良い。
 
そして、気をつけたいのが食品衛生法の改正である。法律の改正により、2021年の6月からは「『HACCP(ハサップ)』に沿った衛生管理」が求められる。小規模事業者の場合はやや簡略化された「HACCPの考えを取り入れた衛生管理」を求めているが、その「HACCPによる衛生管理」とはこのようなものである(図6)。
 

 
図6 HACCPによる衛生管理
(出所:「食品衛生法改正 説明資料」厚生労働省)
 
材料が運ばれ、保管され、調理され提供されるまでのすべての段階の温度や時間、取り扱い方法などを記録しておかなければならないというものである。リスクのあるすべての行程の管理情報を記録しておくことで、食中毒が起きたとき、どの段階に問題があったのかわかりやすくなる。小規模な一般飲食店向けの手引書を日本食品衛生協会が作成している*1。
 
食中毒は、もちろん未然に防ぐことが最重要である。しかし万が一の時の対応のためにも、この手引き書にあるフォーマットを積極活用したい。
 
*1 「HACCPの考え方を取り入れた衛生管理のための手引書(小規模な一般飲食店事業者向け)」
 

 

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