飲食店開業における防火管理者について知ろう!必要な場合は?資格の取得方法は?
飲食店開業に最低限必要な資格は2つ、「食品衛生責任者」「防火管理者」といわれています。「食品衛生責任者」はどのような店舗においても必須ですが、実は「防火管理者」の方は店舗によっては必要ない場合もあります。とはいえ、せっかく開業するからには、火災から店舗を守りたいもの。今回は、「防火管理」と「防火管理者」に焦点を合わせてご紹介します。
目次
防火管理体制
東京消防庁によれば、防火管理とは「火災の発生を防止し、かつ万一火災が発生した場合でも、その被害を最小限にとどめるため、必要な対策を立て、実行すること」とされています。
そして、「劇場・飲食店・店舗・ホテル・病院など不特定多数の人が出入りする用途(特定用途)がある防火対象物」を「特定用途の防火対象物」といい、そのうち「防火対象物全体の収容人員が30人以上のもの」については、防火管理者が必要であると説明しています。
防火管理体制とは、選任された防火管理者、テナントビルによっては選任された統括防火管理者、防火管理技能者がともに消防計画を立案し、管理業務に携わる組織の仕組みをいいます。
火災は人命にも関わり、被害が甚大なため、防火管理体制をしっかり整えておくことは重要なのです。
防火管理者の役割
防火管理者の要件として、東京消防庁は「防火管理上必要な業務を適切に遂行することができる管理的又は監督的な地位にある方で、防火管理に関する知識及び技能の専門家としての資格を有していることが必要です」と説明しています。つまり、アルバイトやパートなどではなく、店舗に常駐するオーナーや店長が防火管理者の役割を担うことが期待されているのです。
防火管理者資格には甲種と乙種の2種類があります。
店舗の収容人数30人以上であり、防火対象物の延べ床面積が300平方メートル以上の場合には、甲種防火管理者が必要です。300平方メートル未満の場合には、乙種の資格でも構いません。30人とはお客様の数ではなく、アルバイトや経理などの従業員すべてを含みますので注意が必要です。
テナントビルに入居している場合には、ビル全体の収容人員が30人以上であれば、各テナントに防火管理者が必要です。自店舗の収容人員が30人以上の場合には、甲種防火管理者が必要であり、30人未満であれば、乙種でも可能な場合もあります。また、複数の防火管理者が存在するテナントビル、地下街などでは、相互協力する体制である「統括防火管理制度」があり、「統括防火管理者」が選任されている場合が少なくありません。統括防火管理者の設置が必須の防火対象物の条件、統括防火管理者の要件などにも規定がありますので、詳しくは、所轄の消防署に問い合わせてください。
防火管理者資格取得のための講習
防火管理者の資格要件の、防火管理に必要な知識や技能については、防火管理講習を修了することによって「有している」と認められます。
学識経験者であれば防火管理講習を受講する必要がありません。日本防火・防災協会によると、学識経験者には、「市町村の消防職員で、管理的または監督的な職に1年以上あった者」「防火対象物点検資格者講習の課程を修了し、免状の交付を受けているもの」などが該当します。学識経験者に該当するのではないかと思われる方は、所轄の消防署で確認するとよいでしょう。
防火管理講習の実施者には以下の3つがあります。
- 総務大臣登録講習機関(日本防火・防災協会)
- 都道府県知事
- 消防本部、消防署のある市町村の消防長
講習修了の資格はいずれも全国共通であり、修了証は永年有効です。ただし、特定用途であり収容人員300人以上の防火対象物の甲種防火管理者は、5年以内に再講習を受けなければなりません。該当するかどうか不明な場合には、所轄の消防署で確認しましょう。
防火管理講習は、甲種を取得する場合には、2日間(約10時間)の「甲種新規講習」を、乙種の場合には、1日(約5時間)の「乙種講習」を受講します。なお、「自衛消防業務講習修了者」「消防設備点検資格者」は講習科目の一部が免除されます。科目の一部免除の申請は、申し込み時に行ってください。
講習会の日程については、日本防火・防災協会ホームページの「防火管理講習会日程一覧」で調べることができます。受講料も年々改定されていきますので、日本防火・防災協会のホームページにて最新の情報を確認しましょう。地域によっては、定員に達するのが早いところがありますので、早めに予定を組んでおくことをおすすめします。
防火管理者になるためには
所轄の消防本部あるいは消防署に防火管理者選任届を提出して、はじめて防火管理者となります。「防火管理者選任届出書」を正副2部(消防署保管用と事業所保管用となります)、防火管理講習修了証を持って、消防署長宛てに届け出ましょう。
「防火管理者選任届出書」の様式は、地方自治体のホームページでダウンロードが可能なところが多く、記入例を掲載しているところもありますので調べてみてください。
具体的な防火管理業務とは?
防火管理者の責務として、以下のようなものが挙げられます。
防火管理に係る消防計画の作成と届出
防火管理の中枢を担うのが、消防計画です。そして、消防計画は所轄の消防署へ提出しなければなりません。消防計画は収容人員や延べ床面積によって、小規模、中規模、大規模に分類されています。作成例やひな型を挙げてあるところも多いので、所轄の消防局のホームページで探してみましょう。
計画書を作成するだけではなく、防火のための従業員教育を実施するとともに、有事の際のそれぞれの役割分担や行動について明確に決め、周知しておくことも忘れないようにしましょう。
消防用設備の整備と点検
火災感知報知受信機、消火器、避難設備、誘導灯などの設備場所の確認や整備、点検。
避難および防火のうえで必要な構造、設備の維持管理
防火シャッターや防火ダンパーなどの防火施設、避難通路や非常口、排煙設備などの避難施設に異常がないか、障害がないか確認。
消火、通報、避難の定期的な訓練実施
消火訓練、避難訓練は年2回以上、通報訓練は年1回以上行う必要があります。3つの訓練を連携して行う総合訓練の場合であっても年2回以上の実施が必要です。訓練を行う際には、事前に所轄の消防署へ消防訓練実施計画書の提出をして通知しておきましょう。訓練実施の公的な記録となります。
また、消火栓の取り扱いは難しいので、1号屋内消火栓や屋外消火栓を用いる訓練は、消防設備点検業者に立ち会ってもらうことをおすすめします。
火気の使用、取り扱いに関する監督
「一般的火気管理」として、発電設備、ボイラー、炉、調理用器具などの「火を使用する器具」「使用に際し、火災発生の恐れのある器具」に対する、定期的点検、修理、清掃などの管理。「喫煙の管理と制限」として、禁煙場所と喫煙場所を分けての火元点検や出火防止対策などの管理。さらに、「たき火の制限と放火防止対策」も含まれます。
収容人員の管理
店舗内の人の数が収容人員を超えないように管理。
お客様と店舗を守るために
飲食店は火を扱う場合が多く、防火体制を整えておくことは重要です。火災はお客様や従業員の人命にかかわることもあるため、念には念を入れて発生の予防につとめ、いざというときの対応方法についても熟知しておかねばなりません。せっかく開業にこぎつけた大切なお店だからこそ、自分自身で防火管理講習を受けて、防火管理の正確な知識を持ち、防火の観点から見た自店舗の状況を把握できるようにしておきましょう。
参考:
- 防火管理講習案内|日本防火・防災協会
- よくあるご質問|日本防火・防災協会
- 防火管理者が必要な防火対象物と資格|東京消防庁
- 防火管理実践ガイド|東京消防庁
- 防火・防災管理者選任(解任)届出について|東京消防庁
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
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