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飲食店の廃棄物、事業系ゴミの処理方法と業者選びの注意点を解説

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飲食店を開業する際、どのような店づくりをするのか、いかにして集客して売上を上げるのか、利益を出すために下げられる経費はあるのかなど経営に関することに関心が集中してしまうあまり、飲食店から出るゴミ(廃棄物)の処理をどうするかについてはどうしても後回しにしがちです。しかし、店舗から日々発生するゴミをどう処理するのかについての問題は、放置することはできません。なぜなら、飲食店を経営する(事業を行う)ことで発生するゴミは、事業系ゴミと呼ばれ、家庭ゴミとは取り扱いが異なるため市区町村が収集をしてくれないからです。ここでは、事業系ゴミについて深堀するとともに、その処理方法やゴミ回収業者選びの注意点などについて詳しく解説をしていきます。
 


 

◆事業系ゴミとは?

排出されるゴミは、家庭から発生する家庭ゴミと飲食店など事業活動から発生する事業系ゴミの2種類に分けられます。事業系ゴミは、家庭ゴミとは取り扱いが異なり、処理責任は市区町村にはなく、事業者となり、法にもとづいて適切な処分をしなければなりません。そのため、正確な知識をもってゴミ処理の対応する必要があります。また、さらに、この事業系ゴミについては、大きく産業廃棄物と事業系一般廃棄物の2つに分類されます。それぞれの定義や詳細については以下のとおりとなります。
 

◇産業廃棄物

産業廃棄物とは、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃アルカリ、廃プラスチック類その他政令で定める廃棄物であるということが廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第四項第一号に規定されています。わかりやすく言うと、事業活動から発生する廃棄物のうち同法律に規定された20種類の廃棄物のことを指します。これを飲食店にあてはめると産業廃棄物の詳細は以下のとおりとなります。
 
・フライヤーなどの廃食用油、油脂・汚泥(グリーストラップの清掃時に排出されるゴミ)
・発砲スチロールやプラスチック容器などの廃プラスチック類
・アルミホイル
・レトルトパウチ
・ラップ
・燃え殻
・ガラス
・蛍光灯
・食器などの陶磁器類
・おしぼりのビニール袋、傘のビニール袋
・ラミネート加工されたメニュー表
・置き忘れのガスライター
 
〇参考:飲食店の厨房にグリーストラップ「グリスト」を設置する義務や必要性はあるのか?
 

◇事業系一般廃棄物

一般廃棄物とは、産業廃棄物以外の廃棄物であると廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二条第二項に規定されています。さらに、事業系一般廃棄物とは、このうち家庭から出る家庭系一般廃棄物を除いたものになります。事業系一般廃棄物の飲食店における具体例は以下のとおりとなります。
 
・燃えるゴミ(可燃ゴミ)
・調理残渣などの生ゴミ全般(廃棄や食べ残しなど)
・割りばしなどの木材
・レシート
・紙ナフキン
・紙のメニュー表
・パンフレット
・布類
・書類
 
一般家庭の燃えるゴミと変わらないと思って家庭ゴミの集積所に出すと不法投棄として処罰(廃棄物処理法違反)される可能性があるので、事業活動から発生するこのようなゴミはしっかり事業系一般廃棄物として扱ってください。
 

◇その他、資源ゴミとして扱われるゴミ

事業系ゴミの中でも資源として活用できる資源ゴミについては、産業廃棄物や事業系一般廃棄物と分けて再利用処理するようにしましょう。資源ゴミの具体例としては、ダンボール、古紙(新聞、雑誌、紙パックなど)、空き瓶、空き缶、スプレー缶、ペットボトル、プラスチック製の容器などがあります。
 

◆廃食用油のリサイクル

業務用フライヤーで使用した天ぷら油など事業系の廃食用油は、経済上の価値のある有体物(資源)として取引されるも多く、取引された場合、そのほとんどは飼料用として利用され、外食産業にとっては重要なリサイクル方法となっています。これまで産業廃棄物として有料で回収を委託していたけれどなるべく経費を削減したい、環境に良いリサイクルに切り替えたいと考える飲食店事業者は定期的に無料で廃食用油を回収する業者があることや、廃食用油のリサイクルはあくまで資源としての取引なのでマニフェスト伝票は必要ないことから事務作業の手間を削減することができる、などのメリットがあるので検討してみてはいかがでしょうか。
 

◆事業系ゴミの関係法令等について

廃棄物の処理について、廃棄物の処理及び清掃に関する法律の第三条(事業者の責任)に事業者は、「その事業活動に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。」と規定しています。(排出事業者処理責任の原則)また、産業廃棄物および一般廃棄物の処理責任については、それぞれ以下のように規定されています。
 
以下、廃棄物の処理及び清掃に関する法律より関係法令を抜粋。
 
【産業廃棄物の処理責任について】
(事業者及び地方公共団体の処理)
第十一条 事業者は、その産業廃棄物を自ら処理しなければならない。
(事業者の処理)
第十二条
5 事業者は、その産業廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第十四条第十二項に規定する産業廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する産業廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
6 事業者は、前項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
7 事業者は、前二項の規定によりその産業廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、当該産業廃棄物の処理の状況に関する確認を行い、当該産業廃棄物について発生から最終処分が終了するまでの一連の処理の行程における処理が適正に行われるために必要な措置を講ずるように努めなければならない。
【一般廃棄物の処理責任について】
(市町村の処理等)
第六条の二
6 事業者は、一般廃棄物処理計画に従ってその一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合その他その一般廃棄物の運搬又は処分を他人に委託する場合には、その運搬については第七条第十二項に規定する一般廃棄物収集運搬業者その他環境省令で定める者に、その処分については同項に規定する一般廃棄物処分業者その他環境省令で定める者にそれぞれ委託しなければならない。
7 事業者は、前項の規定によりその一般廃棄物の運搬又は処分を委託する場合には、政令で定める基準に従わなければならない。
 

◆廃棄物処理法違反の罰則規定

飲食店から出る事業系ゴミについて、法律に従わず、自ら適切に処理をしなかった場合、罰せられる可能性があるので注意をしてください。事業系ゴミは、高度経済成長期の反省から公衆衛生上の問題や公害問題を引き起こすことを防ぐために、事業者に重い責任を課しているのです。具体的には、家庭ゴミと一緒に出すなどのいわゆる不法投棄をした場合や、無許可の回収業者に事業系ゴミの処理を委託した場合などの不法行為が発覚すると、廃棄物の処理及び清掃に関する法律第二十五条の規定により5年以下の懲役、もしくは1,000万円以下の罰金、またはこの併科の罰則(法人の場合、行為者のほか法人に対して3億円以下の罰金)を科される可能性があります。ですので、事業系ゴミを処理する際は、しっかりと決められた法律を守るようにしてください。
 

◆事業系ゴミの処理方法

事業系一般廃棄物については、直接、市区町村の清掃施設(処分場)に持ち込んで処理することもできる(東京都23区の場合は、ゴミの持ち込み処分ができる区とできない区があります。)のですが、飲食店の場合、日々の営業で忙しく、多くは、一般廃棄物収集運搬業許可を受けた回収業者に委託して処理をしています。一方で、産業廃棄物は、直接、市区町村の清掃施設に持ち込んで処理することができないので、都道府県知事が許可する産業廃棄物処理業者へ委託することになります。産業廃棄物の内容によって、業者の許可の種類が異なるのでしっかり確認した上で業者を選定するようにしてください。なお、処理にかかる費用についてですが、事業系一般廃棄物や産業廃棄物は、処理責任が事業者にあることから、原則として、有料となります。(事業系一般廃棄物を清掃施設に自己搬入する場合、手数料が発生します。)
 

◆ゴミ回収業者選びの注意点

事業系一般廃棄物を処理するためには、市区町村より一般廃棄物収集運搬業許可を受けた業者でなければなりません。一方で、産業廃棄物を処理するためには、都道府県より産業廃棄物収集運搬業許可を受けた業者でなければなりません。それぞれ許可が異なります。依頼をするゴミ回収業者が、許可を受けているかどうかについて選定する前に確認をするようにしてください。なぜならば、産業廃棄物の処理責任は事業者にあるため、処理について何らかの問題が発生した場合、責任を問われる可能性があるからです。
 
その他、許可の有無の確認以外でもいくつか確認した方がよいことがあるので列挙していきます。
 
・詳細な見積もりを出すことができる。
見積書に詳細な内容が明記されていない場合は、後から追加料金などを請求してくることも考えられます。それぞれの項目の内訳が明記されているか確認するようにしてください。
・こちらの都合(夜間、早朝、回収頻度など)の融通がきく。
ゴミの量が多いので毎日回収してほしいにもかかわらず、余裕がなく対応ができないゴミ回収業者もあるので、事前に詳細を打合せして確定しておく必要があります。
・優良産廃処理業者認定制度による認定がされている。
この制度は、通常の許可基準よりも厳しい基準に適合した優良な産廃処理業者を、都道府県・政令市が審査して認定をします。認定を受けている業者は、遵法性、事業の透明性、環境配慮の取組、電子マニフェスト、財務体質の健全性の基準に適合している業者ということになります。詳しくはこちら【優良産廃処理業者認定制度-環境省】をご覧ください。
・電話等での従業員の対応がよい。
ゴミ回収業者の従業員は、店舗に出入りすることになるので、対応がよいかどうかは確認しておくとよいでしょう。
・ゴミ回収業者が対応可能なエリアに店舗がある。
対象外のエリアであればそもそも回収ができないですし、不得意なエリアであればコストは高くなる可能性があります。

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飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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