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「腸管出血性大腸菌」を予防しよう  死亡例もあるO157食中毒に飲食店ができる対策は?

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大腸菌は家畜や人の腸内にももともと存在しており、ほとんどは無害です。しかしいくつかの種類の大腸菌は人に下痢などの症状を引き起こすことがあり、「病原大腸菌」と呼ばれています。
 
なかでも「腸管出血性大腸菌」と呼ばれるものは、人の体内で毒素を出して腸からの出血を引き起こします。さらに血小板の減少や腎機能障害といった重い症状に至ることもあり、死亡例も少なくありません。
 
食中毒というと肉類のイメージが強いかもしれませんが、腸管出血性大腸菌による食中毒は生野菜や浅漬けといった食品からも発生しています。腸管出血性大腸菌はどのような特徴を持ち、どのような料理で重篤な事例があったのか、飲食店ではどのような対策を行えば良いか、詳しく紹介していきます。
 

◆腸管出血性大腸菌とは

病原性大腸菌には170もの種類があります。そのうち腸管出血性大腸菌の代表的なものとして「O(オー)157」「O26」「O111」などがあります。特に、重症化するものの多くはO157です。
 
腸管出血性大腸菌による感染症は例年7月~8月に多くなる傾向があるとされていますが、その他の時期になればなくなる、というわけではありません。
 

大阪市での腸管出血性大腸菌感染症の発生状況
(出所:「腸管出血性大腸菌感染症-O157、O111、O26などについて」大阪市
 
腸管出血性大腸菌は7℃~50℃という幅広い温度で増殖し、37℃が最適な温度とされていますので*1、食材の生育・処理環境や保管状況によっては季節を問わず食中毒につながると考えた方が良いでしょう。
 

◆腸管出血性大腸菌による症状と致死率

腸管出血性大腸菌、特にO157による食中毒には、さまざまな症状があります。無症状あるいは軽い症状で済む人もいます。しかし典型的な症状としては、3~4日の潜伏期間を経て1~3日間は水のような便が続き、その後血便が出るようになります*2。
 
そして、なかには深刻な症状に至ることもあります。腸管出血性大腸菌に感染した人のうち6~9%の割合で「溶血性尿毒症症候群(HUS)」に至る人がいます。特に10歳以下の子供では15%とHUSの発症割合が高くなります*2。
 

◇溶血性尿毒症症候群(HUS)とは

溶血性尿毒症症候群(HUS)とは、全身に小さな血栓ができ、脳や心臓、腎臓などへの血液の流れを妨げる病気です。下の3つの症状が特徴です*2。
 
・溶血性貧血
・血小板の減少
・急性腎障害
 
また、中枢神経に障害をきたすこともあります。HUSでも軽傷の場合は約1週間で症状が消えていきますが、なかには重症化することもあり、HUSを発症した人の致死率は3~5%となっています*2。
 

◇腸管出血性大腸菌の感染力と感染経路

また、腸管出血性大腸菌、とくにO157は感染力が強いという特徴を持ちます。通常の細菌性食中毒では細菌を100万個単位で摂取しないと感染しないのに対し、O157はわずか100個程度の菌数の摂取で発症するといわれています*3。感染経路としては、飲食物による経口感染がほとんどですが、人から人に感染することもあります*2*3。
 

◆腸管出血性大腸菌はどのような料理から見つかっている?

O157の感染が発生した食品についての事例は、多岐にわたります。2022年には京都府の飲食店でレアステーキやローストビーフを食べた12人からO157が検出され、うち女性1人が亡くなっています*4。さらに過去には、冷凍メンチカツがO157食中毒の原因になったこともあります*5。
 
O157による食中毒の原因は、おもに生あるいは調理不十分の肉製品、生乳です。しかし乾燥して固めたサラミ、低温殺菌していないアップル・サイダー、ヨーグルト、生乳から作られたチーズなどでもO157による食中毒が発生しています*1。
 
また、気をつけなければならないのは、肉だけではありません。
 

◇浅漬けや生野菜からO157に感染

野菜の浅漬けや生野菜からO157による食中毒が発生し、人が亡くなった事例もあります。2012年のことですが、北海道で白菜の漬物を食べた169人が集団食中毒を起こし、高齢者施設で7人、旅行で北海道に来ていて同じ商品を食べた1人、あわせて8人が亡くなりました*6。この事例では、すべての商品というより、白菜を漬け込んだ特定の樽にO157による汚染があったと考えられています。
 
また、器具に関係なく生野菜そのものがO157に汚染されていたと考えられる事例もあります。2016年には、千葉県などの老人ホームでキュウリの和え物を食べた人のあいだでO157による集団食中毒が起き、10人が亡くなっています*7。
 
栽培やその後の取扱いの段階で、家畜や野生動物の便と接触して汚染される果物や野菜が食中毒の原因となることも指摘されています(芽野菜、ホウレンソウ、レタス、サラダキャベツ、サラダ)*1。O157は肥料や用水路の堆積物の中でも数か月間は生存することも確認されています*1。肥料から野菜に菌が入っていってもおかしくありません。
 

◆感染経路をふさいでいくために

ここまで見てきたように、あらゆるところに潜んでいる可能性があるO157ですが、飲食店では可能な限りの対策をしたいものです。予防策として推奨されているものをご紹介していきます。
 

◇肉類の調理

他の食中毒予防のためにも言われることですが、まず中心部まで75℃で1分以上加熱することでO157は死滅します*8。そして、生食用の牛肉については、2011(平成23)年に厚生労働省が基準を定めています。
 
検査や検査記録の保存、調理過程や調理環境のほか、調理に使う器具の扱いなどについてさまざまな項目があります。広島県のホームページに概要がわかりやすくまとめられていますので、一度確認してください*9。
 

◇野菜類の調理

続いて野菜類です。野菜については、以下のことに気を付ける必要があります*8。
 
(1) 野菜は新鮮なものを購入し、冷蔵庫で保管する等保存に気をつける。
(2) ブロッコリーやカリフラワー等の形が複雑なものは、熱湯で湯がく。
(3) レタス等の葉菜類は、一枚ずつはがして流水で十分に洗う。
(4) きゅうりやトマト、りんご等の果実もよく洗い、皮をむいて食べる。
(5) 食品用の洗浄剤や次亜塩素酸ナトリウム、又は亜塩素酸水等の殺菌剤を使ったり、加熱することにより殺菌効果はより高まる。
 
細菌は時間が経てば経つほど、食品の中で増えていきます。常温で放置しないことが大切です。また漬物に関しては、原材料の保管と漬け込みは10℃以下で行うことも厚生労働省から通知されています*6。店内での衛生管理ももちろんですが、材料の仕入れ先で適切な管理がされているかどうかも重要になってくることでしょう。
 
また、ハエがO157を運ぶことも指摘されています*8。注意が必要です。
 
*1 「志賀毒素産生性(腸管出血性)大腸菌について (ファクトシート)」厚生労働省FORTH
*2 「腸管出血性大腸菌感染症」国立感染症学会」
*3 「疾患別解説 腸管出血性大腸菌感染症」厚生労働省FORTH
*4 「レアステーキ食べO157感染、90代女性が死亡 京都の食料店加工」朝日新聞デジタル
*5 「No.17012 冷凍メンチカツを原因とする腸管出血性大腸菌O157による食中毒事例」国立保険医療科学院
*6 「漬物による腸管出血性大腸菌O157食中毒と課題について」一般財団法人東京顕微鏡院
*7 「生野菜を原因とする食中毒にご用心!」東京都北区
*8 「腸管出血性大腸菌Q&A」厚生労働省
*9 「生食用牛肉の基準が定められました!生肉の取扱いに注意しましょう!!」広島県
 

 

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