繁盛店への道

「繁盛店になるために知っておきたい器の知識」飲食店開業時の食器準備について 後編

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食器の知識を少し持つだけで、圧倒的にお店がよくなる

飲食店開業にあたり、やはり一番に思い浮かぶのは、「どんなメニューを出すお店にしようか」ということです。そのため、メニュー開発などに時間を割き、最後に「あっ、食器も決めないと」という方が意外に多いそうです。ただ、食器によって、料理の見栄えが変わることは明確。とくに近年のSNSの台頭により、いかにビジュアルがよいかという上で、器が果たす役割というものはとても大切だと思います。
 
前編に続いて、飲食店開業の際に、食器コンサルサポートとして卸業を行う、食器のプロフェッショナル、株式会社アレゴリーの大舘聡史さんに話を伺いました。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太(ルーテージ株式会社)。またまた、とてもヒントになるメッセージが詰まっています。
 
―大舘さんからのお話を聞くにつれ、やはり器のもつ役割というか大切さに気付かされます。
大舘:本当に、そうなんです。例えばお客さまが「この器素敵ですね」と声をかけてくださったとき、「ありがとうございます」だけで終わるのか、「●●焼きなんです」や「・・・・の手仕事が気に入って」など、少しでも話が広がったほうが、コミュニケーションとしてはいいと思うんです。
 
基本的な知識をもっているだけで、楽しくなりますよね。器の産地と食材の産地を合わせたりすることもできるようになりますし。接客の際の話題にもなります。なので、わたしたちのような情報を持っている食器屋をいくつかブレーンとして持っているお店は強いです。もちろん扱い方もきちんとお伝え出来ますしね。
 
粗い土物は、温かみはありますが、食器洗浄機はNGですし、中国製は成形や加飾の精度が高くないものも多いですが、逆に生地強度が強いなどのメリットがあったりとかは、意外に知られていなかったりします。
 

 
―食器の世界でもブームってありますよね。木のぬくもりのプレートだったり、ストーンプレートの流れがきたり。
大舘:まさにそうなんです。時代の変化をキャッチするというのも、お店にとって大切なことです。売上にも影響すると思います。特に今は、すぐ写真に収められることが日常なので、SNSのことも意識したほうがいいですね。しかし実際は、大体のお店がオープン時に購入したものを使用しつづけます。器を変えるタイミングとかはなかなかないと思うんですが、できればメニュー替えの際に、新しい食器を加えることを意識するといいと思います。
 
―たしかに、お料理と器のバランスでよりおいしそうにも見えます。
大舘:気を付けてほしいのは、買いやすい値段だったからといって器を購入して、10品コースのうち3皿ほどをコストダウンしたとしましょう。そうすると、不思議なもので、よい器ではなく、コストを抑えた器のイメージが印象として残ってしまうんです。せっかくいい器も使っているのに勿体無いですよね。なので、トータルバランスはとても大切です。あと、単品のお皿の場合、テーブルとお皿のサイズ感をきちんと意識することも必要です。狭いテーブルで2品並んだらもう置けないとなると、売り上げにも影響が出てしまいますから。
 
―これからオープンするお店の方におすすめするとしたら、どんな食器でしょうか。
大舘:そうですね。ビストロやカフェの空間でも、古い和陶器を取り入れたりして、提案をしたいです。わたし自身、実家の日本料理店の影響もあり、和のテイストになじみがあるというのもありますが、今は少し古物などを取り入れたりしながら組み合わせると逆に新しい感じがしますね。
 

 
―食器の使い方で、大舘さんが驚いたお店などはありますか?
大舘:かなり前ですが、当時の「つるとんたん」の器は良かったですよね。うどん屋さんで、あの大きさの器が登場するというのは誰もが驚いたのではないでしょうか。
 
―普通の発想では思いつかないです。
大舘:場所も取りますし、重くて扱いも大変。現場オペレーション的には抵抗あったと思うんです。しかし、インパクトは最高です。いまだにお店も人気ですよね。お客様が楽しんでいることが何よりです。我々もご提案の際に、重ねて収納はできないけど面白い製品などをあえて入れるようにしています。
 
―大舘さんの営業サポートは、食器以外にもアドバイスがあるんでしょうか。
大舘:グラスなどももちろんですが、厨房道具全般のサポートもしています。グラスなどのサイズを決める際には原価を聞いて、氷をいれつつ一緒に検証するなんてこともあります。
 

 
―今回インタビューをさせていただいているこの場所は、サンプルが満載ですね。
大舘:そうですね、具体的なサンプルを見ていただきながら、アドバイスができる空間になっています。どうしてもカタログなどでのイメージだけではサイズ感も伝わりづらいですし、手触りも大切だと思っているので、代官山のショップからすぐそばのここに業務用サンプルを集めています。
 
―例えば、居抜きで前のお店の食器をそのまま使うこともあると思いますが、どのように組み合わせることができるんでしょうか。
大舘:もちろん、そのような場合もあります。その際は、一度すべて見せていただきたいと思います。そうすると、何を足していくかとか、組み合わせについてのアドバイスもできますから。
 
―なるほど。最後に飲食店の方、またはオープンを控えている方にメッセージをお願いします。
大舘:とにかく、器を選ぶ際、なんでも食器屋に聞いてみてください!自己判断だけでセレクトするよりも絶対に良い結果になると思います。飲食店の繁盛なしにうつわ屋の繁盛はありえないので、我々はいつも飲食店の味方です。
 

▲株式会社アレゴリー 代表取締役社長 大舘聡史
青森県出身。実家が日本料理店のため、幼少期から身近に器があった。
10年間のインテリアショップSV経験などを経て、31歳で独立。代官山・川崎の実店舗のほか、WEBでの販売も人気を博している。一般販売のほか、業務用対応も行う。
(株式会社アレゴリー 公式ホームページ
 
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