「お店のコンセプトを食器屋に共有する意義」飲食店開業時の食器準備について 前編
器は洋服と一緒。「気にしない人もいれば、気にする人もいる」
飲食店開業にあたり、やはり一番に思い浮かぶのは、「どんなメニューを出すお店にしようか」ということです。そのため、メニュー開発などに時間を割き、最後に「あっ、食器も決めないと」という方が意外に多いそうです。ただ、食器によって、料理の見栄えが変わることは明確。とくに近年のSNSの台頭により、いかにビジュアルがよいかという上で、器が果たす役割というものはとても大切だと思います。
今回は、飲食店開業の際に、食器コンサルサポートとして卸業を行う、食器のプロフェッショナル、株式会社アレゴリーの大舘聡史さんに話を伺いました。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太(ルーテージ株式会社)。これから独立開業をする方にとって、とてもヒントになるメッセージばかりです。
―現在、一般向けの食器のセレクトショップを代官山と川崎にもつ大館さんですが、実はプロ向けの食器サポートもかなりされているんですよね。
大舘:はい、業務用取引として、飲食店開業をされるお客様への提案からサポート、納品までをさせていただいています。
―開業するときは、食器についてどうしても後回しになってしまいがちに思うので、大館さんのようなプロからのアドバイスをいただけるのはうれしいですね。
大館:わたし的には、器ってある意味洋服と同じなんです。いわゆる、ファッションに関心があるか無いかということです。
―といいますと。
大舘:洋服もファストファッションから、オーダーメイドのものまで幅広い選択肢がありますよね。同様に、器も作家ものから、カジュアルラインまで様々。そして、料理を一層際立たせるための役割を果たすんです、器は。洋服も、気合のはいったものを着用すると自分自身の気持ちも引き締まりますよね。
もちろん、同じものをずっと大切に使うパターンもありますし、時代の波によって変化をつけていく場合もあります。わたしの仕事は、お店のオーナーが器に対して、どんな意思を持っているかをヒアリングするところからスタートするんです。
―なるほど。洋服といわれるとまさに!ですね。
大舘:そうなんです。「コットンがいいですか?ウールがご希望ですか?」と同じで「土ものがいいですか?磁器がいいですか?」と素材のことから入れますし、今回の業態はカジュアル店舗でアルバイトさんがほとんどということであれば、扱いが簡単なものがいいですし、単価が1万円以上するお店であれば、それに見合った器選びも大切になってきます。
お店のコンセプトが固まった時点で相談を
―今まで、多くのお客様を見てきた中で、注意する点ってありますか?
大舘:ありますね。まず、必要要件をまとめる前に、買い始めてしまう方は要注意です。気に入った食器を集めてしまうタイプですね。料理のポーション(原価計算)や、テーブルサイズを無視、さらに収納に関しても意識がいかないパターンはちょっと危険です。
―あー、なんか想像つきますね。
大舘:単価を気にしないで、出会ったものを買い始め、最後に予算が足りなくなって、急にテイストの違うものが入ってきたり…。結果、うまくまとめられる場合はよいのですが、多くの方はチグハグになってしまうんです。
―これから独立をする方は、どれくらいの時期から食器について意識しておくのがよいのでしょうか。
大舘:ベストは、2,3か月前ですね。まず、お店のコンセプトがまとまった時点で、一度われわれのような食器屋にアクションを起こしてほしいです。概要をきくと、だいたい食器の方向性や、テイスト、かけられる金額などが試算できるので。
実際、3週間あれば、納品は可能です。でも、その前にすり合わせを何度もすることで信頼関係を築くことができると思うんです。お店全体のイメージや、料理のポーションも含め、情報がたくさんあるに越したことはありません。「あと2週間でオープンなんです、予算がないけど食器のアドバイスを!」と言われてもなかなか厳しいものがありますので。
―急ぎすぎると、絶対にいいことがないように思います。
大舘:まさにそうです。「買ってしまえ!」と勢いで買って、食器洗浄機が使えなかったとか…スタッキングでチップができやすいとか。当たり前にチェックするべきところを見逃してしまいますし。例えば、カウンターのお店なんかは、収納もあまりないので、はじめは枚数少な目のスタートをお勧めしたりしますね。そこで、お店の回転をみて追加したりするのも全然ありなんです。
―先ほど、料理の単価に合わせてというお話が出ましたが、なんとなく食器を決める際の予算ってあるんですか?
大舘:そうですね。あくまでも参考として聞いていただければと思うのですが。1テーブルあたりでいうと、単価3万円のお店であれば、5~6万程度、居酒屋であれば、5千円~1万5千円で計算するといいのではないかと思います。平均は、テーブルあたり3~4万という感じでしょうか。
―なるほど、すごい参考になります。
大舘:10年前って、居酒屋の取り皿は安く済ませるという感覚が普通だったんですね。でも、最近では、実は取り皿が一番テーブルの上にのっている時間が長く、お客様が一番目にする皿だという認識に変わってきてまして。取り皿をこだわるお店が増えてきたりしています。
―それは、めちゃめちゃ興味深いですね。
(後編)に続きます。
▲株式会社アレゴリー 代表取締役社長 大舘聡史
青森県出身。実家が日本料理店のため、幼少期から身近に器があった。
10年間のインテリアショップSV経験などを経て、31歳で独立。代官山・川崎の実店舗のほか、WEBでの販売も人気を博している。一般販売のほか、業務用対応も行う。
(株式会社アレゴリー 公式ホームページ)
◆繁盛店への道 最新記事はこちらから
「繁盛店への道」の関連記事
関連タグ