開業ノウハウ

飲食店をM&Aで始める!メリットや進め方・注意点を解説

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M&Aとは他の会社を買収したり合併したりすることです。さまざまな業種のなかでも、飲食店のM&Aは人気があります。この記事では、飲食店のM&Aを取り巻く現状や飲食店経営の特徴、飲食店をM&Aで始めるメリットなどを解説します。あわせてM&Aの進め方や注意点なども解説するため、ぜひ参考にしてください。
 


 

◆飲食店を取り巻くM&Aの現状

飲食店のM&Aは人気が高まっていますが、なぜ人気があるのでしょうか。ここでは、飲食店のM&Aの現状を解説します。
 

◇2020年3月以降に売上が激減

大規模感染症の流行によって、特に2020年3月以降は飲食店全体の売上が激減しました。外出の自粛や人との接触を控えるといった対策が求められたためです。また、感染症対策として、行政から営業規制が課せられた時期もありました。この時期以前に飲食店のM&Aを行った事業者は、客足が遠のいてしまうなどの、苦戦を強いられたともいわれています。
 

◇M&Aは大規模感染症が落ち着いた今がチャンス

ここ数年で大規模感染症は一定の落ち着きを見せており、安心して外食できる環境に戻りつつあります。そのため、外食のニーズが高まっている現状があります。飲食店のM&Aを行うなら、今がチャンスだといえるでしょう。飲食店へのニーズが増加しているため、M&Aで飲食店を獲得することで、スピーディにビジネスチャンスにつなげやすくなっています。
 

◆飲食店経営の特徴

飲食店を経営する際には、飲食店経営の特徴を事前に把握しておくことが大切です。ここでは、飲食店経営の特徴を3つ解説します。
 

◇初期投資が大きい

飲食店の新規開業は、初期投資が大きいという特徴があります。飲食店の開業は、店舗を用意するだけでなく調理設備や採用コストなどもかかるため、初期費用が大きくなりがちです。また、水道光熱費や食材の仕入れ費用なども必要です。
 

◇売上が立地条件に左右されやすい

飲食店の売上は、立地条件に大きく左右されます。人の流れが多かったり、駅から歩いてすぐだったり、立地条件が良ければその分客数が増えて、売上につなげやすくなります。そのため、立地条件が良ければ良いほど、買収額が高額になる傾向があります。
 

◇景気動向や流行の影響を受けやすい

飲食店は、景気動向や流行の影響を受けやすい業種の1つです。たとえば、食材の仕入れ額の値上がり、SNSやメディアでの発信による流行など、景気やその時々の流行などに大きな影響を受けやすくなっています。
 

◆飲食店をM&Aで獲得するメリット

飲食店をM&Aで獲得するメリットは何なのでしょうか。ここでは、M&Aで飲食店を獲得する2つのメリットを解説します。
 

◇エリア・ターゲットを選定する必要がない

飲食店を新規開業する際には、まずエリアの選定やターゲットの設定などが必要になります。飲食店開業のノウハウがないと、それらの選定を誤ってしまう可能性があります。しかし、M&Aではすでに出店している飲食店を買収、もしくは合併するため、エリアやターゲット選定が必要ありません。駅前や繁華街などの好条件の立地を確保しやすい点も、メリットです。
 

◇歴史やブランド力をそのまま引き継げる

新規開業の場合には、歴史やブランド力がないため認知されていない状態です。顧客の認知度向上や集客には、時間がかかるでしょう。しかし、すでに歴史やブランド力がある飲食店をM&Aで獲得することで、店舗そのものだけでなく、その店が築き上げてきたブランドや実績、歴史などを引き継げるため、集客しやすくなる可能性があります。
 

◆飲食店のM&Aにおける相場

飲食店のM&Aの相場は、ほかの業種と比較すると安価だといわれています。そのため、法人としてのM&Aだけでなく、個人も参入しやすい市場だといえるでしょう。ここでは、具体的な相場について解説します。
 

◇相場は「時価純資産+実質営業利益の3~5倍」が目安

飲食店のM&Aの相場は、他の業種よりも安価だといわれている一方、非常に幅が広いのが特徴です。そのため、一概に何百万というような目安が出しにくくなっています。大まかな目安としては、「時価純資産+実質営業利益の3~5倍」程度です。
 
ただし、M&Aにかかるコストは店によって異なります。たとえば、駅に近い、交通量が多く人の流れが多いなど立地が優れている、人気店など、条件の良い飲食店は価格が高くなります。しかし、新規開業と比べると低コストで済むケースが多いです。
 

◆飲食店のM&Aで案件を探す方法

飲食店のM&Aを検討していても、案件の探し方がわからないという人も多いでしょう。ここでは、飲食店のM&A案件を探す方法を解説します。
 

◇M&A仲介会社

M&A仲介会社とは、売り手と買い手の間に入り中立な立場でM&Aを進める会社です。M&A仲介会社を利用するメリットは、条件に合った飲食店を紹介してもらいやすいことです。また、売り手と買い手の間に入って、交渉や手続きを行ってくれるため、スムーズにM&Aが進みやすいというメリットもあります。
 

◇金融機関

金融機関ではM&Aに特化した部署に相談できるため、適切なサポートを受けられます。また、何らかの事業を行っている場合、普段から金融機関に経営相談をする機会も多いでしょう。普段から付き合いがある金融機関がある場合は、相談しやすいことも大きなメリットです。ただし、仲介手数料が高い場合もあります。
 

◇M&Aプラットフォーム・マッチングサイト

M&Aプラットフォーム・マッチングサイトとは、サイトを介してマッチングを支援するサービスです。手数料が安価な傾向にあるため、コストを抑えてM&Aをしたいという場合にもよいでしょう。マッチングの相手の幅も広くなっています。ただし、サポートを受けたい場合は、専門家に別途依頼する必要があるため、注意が必要です。
 

◇事業承継・引継ぎ支援センター

事業承継・引継ぎ支援センターとは、国の機関です。全国47都道府県に国が設置している公的相談窓口のことで、事業承継に関する相談を受け付けています。提供しているサービスは基本的にマッチングで、条件に合った案件を紹介してくれるのが魅力です。ただし、サポートは行っていないため、M&Aのサポートを受けたい場合は専門家へ依頼する必要があります。
 

◆飲食店のM&Aの進め方

飲食店のM&Aはどのように進めればよいのでしょうか。ここでは、飲食店のM&Aを進める手順を解説します。
 

◇1.秘密保持契約書を交わす

条件に合う相手とマッチングした後は、秘密保持契約書を交わします。秘密保持契約書とは、相手側と共有した情報を、外部へ漏らさないことを定めた契約書です。秘密保持契約書を交わしたら、資料の開示を受けましょう。
 

◇2.店舗視察をする

一般客として入店して、店舗の視察を行いましょう。実際に営業している店舗の視察をすることで、客層や客数なども把握しやすくなります。一般客として視察をすることは、飲食店のM&Aならではといえるでしょう。
 

◇3.意向表明書を提出する

視察などが終わったら、意向表明書を提出します。意向表明書とは飲食店を譲り受けたいという意向を示すための書面です。面談をしてM&Aが合意に至ったら、基本合意書を取り交わしましょう。
 

◇4.クロージングを行う

基本合意書の取り交わし後に、買収調査(デュー・デリジェンス)を実施します。買収調査とは、飲食店の財務面や税務面、リスク調査などのことで、専門家に依頼することが一般的です。問題がなければ最終契約を交わして、クロージングとなります。
 

◆飲食店のM&Aに関する注意点

飲食店のM&Aには注意したいポイントもあります。ここでは、飲食店のM&Aに関する注意点を2つ解説します。
 

◇無形資産を確実に引き継ぐ

飲食店のM&Aでは、無形資産の引き継ぎが重要です。無形資産とは、目に見えない資産のことで、メニューそのものや調理方法、接客の方針、メニューの開発方法などが該当します。飲食店のなかには、ノウハウをマニュアル化できていないケースもあるため、その場合はマニュアル作りから行わなければなりません。
 

◇属人的な要素を検討する

小規模飲食店の場合には、属人的な要素が店の人気を支えているケースもあります。たとえば、オーナーとの会話が楽しい、オーナーの作る料理が好きで通っている、などです。このように、属人的な要素の強い飲食店の場合には、オーナーに残ってもらうことも検討しましょう。双方の条件が合えば、残ってもらえる可能性も高いでしょう。
 

◆M&Aと事業譲渡・居抜きの違い・メリット

飲食店事業を検討する際には、M&Aだけでなく事業譲渡や居抜きという方法もあります。そのため、3者の違いを理解して比較検討し、自社に合った方法を選ぶとよいでしょう。特に、居抜きは新たに事業を始めやすいというメリットがあります。ここでは、M&Aと事業譲渡、居抜きの違いを解説します。
 

◇M&A

M&Aとは買収や合併のことで、一般的に店舗物件や内装設備だけでなく、その店が持っているブランドやノウハウ、従業員、営業権などを丸ごと譲渡されるものです。すでにM&Aについては述べましたが、M&Aのメリットを改めて見てみましょう。まず、大きなメリットの1つは、エリアやターゲットを選定する必要がないことです。その店が持つ歴史やブランド力、メニューなどをそのまま引き継げるため、認知度向上の必要がなく集客しやすくなります。
 

◇事業譲渡

事業譲渡は、厳密にいうとM&Aの手法の1つに含まれています。一般的に、M&Aは事業を丸ごと譲り受けることですが、細かく分けるとさまざまな手法があり、事業譲渡はそのうちの1つです。
 
事業譲渡とは、「一部の事業のみを譲り受ける」手法を指します。譲り受ける範囲については面談で双方合意のうえで決められるため、不要な事業を引き継ぐ必要がないことは、大きな利点です。ただし、事業譲渡の場合は飲食店経営の許認可の譲渡ができないため、新しく許認可を取得する必要があります。
 

◇居抜き

居抜きとは、それまで営業していた飲食店の内装や設備などが、そのままの状態になっている物件のことです。居抜きはM&Aや事業譲渡と比較すると、開業費用が抑えられるというメリットがあります。M&Aや事業譲渡の場合、事業に価値がプラスされるため、その分価格は高くなります。しかし、居抜きは店舗や内装設備の価格であるため、費用を抑えやすいでしょう。
 
また、「飲食店がある場所」として近隣に認知されているため、集客しやすい点もメリットです。居抜き物件に強い不動産会社に依頼すれば、開業のノウハウや飲食店経営の情報、知識などが得られるため、初めてでも参入しやすいでしょう。
 

◆まとめ

飲食店のM&Aには、エリアやターゲット選定が必要ない、歴史やブランド力を引き継げるといったメリットがあります。飲食店のニーズは高まっているため、M&Aで飲食店を獲得してビジネスチャンスを掴むのもよいでしょう。さらに手軽に進めたい場合は、居抜きという方法もあります。居抜きはM&Aや事業譲渡よりもコストを抑えやすく、初めてでも参入しやすくなっています。
 
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