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区分所有マンションで飲食店開業する際に押さえておきたいポイント

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飲食店を開業する際の店舗物件はいろいろとありますが、その中でも特殊と言えるのが、区分所有マンションの物件となります。特に、昨今では、建物の建替えにより新築のマンションなどの集合住宅が増え、それに伴い分譲販売された区分所有マンションの1階に飲食店が入居するケースが増えてきました。しかし、その割には区分所有マンションのことがあまり飲食店開業者に知られていないと感じます。今回は、区分所有マンションで飲食店を開業する際のメリット、起こりえる問題、押さえておきたいポイントなどについてまとめました。区分所有マンションの特性を理解することで思わぬトラブルに巻き込まれないようにしてください。
 


 

◆区分所有マンションとは?

分譲マンションのような1つ1つの物件が独立して構成されているとき、それぞれの独立した各部分を所有することを「区分所有」といいます。また、各部分(専有部分)について、これを所有する権利を持っている者のことを「区分所有者」といいます。分譲マンションでいうと、例えば102号室を売買で購入して所有している者は、102号室の区分所有者となります。建物については、主にファミリータイプのマンションやワンルームマンションが該当し、
多くの場合、1階部分が店舗部分となっており、これを所有する区分所有者より借り受けることで飲食店を開業することになります。
 

◆管理組合や理事会の存在

区分所有マンションには、建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)という法律に基づいて、建物の区分所有者全員が構成員となる管理組合という団体が存在します。更に、管理組合の総会において区分所有者の中から選任された理事で構成される理事会というものがあります。この理事会の中には、理事長、副理事長、会計などの役職が設けられています。各区分は、その所有者自身がそれぞれ管理することになりますが、階段、エレベーター、エントランスなどの設備や共用部分は、所有者の共有となっているため、管理組合である所有者全員で管理しなければなりません。建物の規模が大きい場合、所有者の数が多くなりすぎることもあり、管理組合員全員で管理することが非効率的となるため、代表者を選出し、理事会が構成されるのが一般的となっています。区分所有マンションで飲食店を開業する場合、この管理組合や理事会が入居審査や各申請に対する承諾などに関わってくるため、区分所有マンション以外の店舗物件とは、異なる(勝手が違う)ということを頭に入れておかなければなりません。
 

◆区分所有マンションで飲食店開業するメリット

区分所有マンションの1階で飲食店開業するメリットにはどのようなものがあるのでしょうか。2つのメリットについてご紹介をします。
 

◇上階の住民が来店し、リピーターとなる可能性がある

上階に住民がいるということは、他の物件と異なるポイントです。自宅の近くに店舗があるということは、店舗来店のハードルが下がることにもなり、リピーターになりやすいと考えられます。
 

◇1階路面店で視認性が高い

区分所有マンションの店舗区画は、1階であることが多く、また、路上に面していることから視認性が高い傾向があります。視認性が高いので、店舗内の様子も外からわかりやすく、看板効果も高められることから、顧客に認知されやすいといったメリットがあります。
 

◆区分所有マンションで起こりえる問題

区分所有マンションで起こりえる問題にはどのようなものがあるのでしょうか。
 

◇承諾に時間がかかる

区分所有マンションで飲食店を開業する場合、営業内容、営業時間、内装工事、看板のデザインや置き看板の位置など管理組合理事会の承諾が必要となります。ここでは、細かい審査を行い、これを通過しないと飲食店を開業することができません。注意が必要な点としては、理事会の開催頻度とそのタイミングになります。おおよそ月に1回の開催頻度ですが、2、3ヶ月に1度のところもあります。また、理事会から変更や改善などの指摘事項があった場合や理事会開催のタイミングを逃したりした場合、承諾までの期間が更に長引いてしまいます。区分所有マンション以外の店舗物件と比較すると申請に対する承諾の期間が長いことがわかります。このことは、飲食店の開業準備に影響を及ぼします。特に内装工事については、物件を借りてから申請することになるので、空賃料が発生して運転資金を減らしてしまうことになります。このような事態を回避するために、最悪の事態を想定しつつ、なるべく早めに申請書類を準備し、不備がないかの確認をすることが大事です。なお、申請には管理組合所定の書式でないと受け付けてくれないこともあるので事前に確認をするようにしてください。
 

◇深夜営業が禁止となっている

「賃貸借契約書の特約事項に営業時間制限について規定されていなかったので深夜営業をしても問題ないと思っていたら、管理規約および使用細則に深夜営業を禁止する旨の規定があり、想定していた店舗の営業ができなくなってしまった」といったことは起こりえることです。深夜営業が禁止となっていない区分所有マンションであっても深夜にアルコールを提供する場合は、その建物の存する用途地域を確認する必要があります。区分所有マンションに限らずですが、用途地域によっては、深夜にアルコールを提供できないということもあるのであわせて確認をしなければなりません。深夜にアルコールを提供する飲食店を営業する場合は、こちらの記事を参考にしてください。
 
参考:深夜酒類提供飲食店営業届が必要な要件と届出の手続きや注意点を解説
 

◇共用部分が使用できなくなる

「建物の共用部分に前テナントの冷凍ストッカーが置いてあり、これをそのまま使用できると思っていたが、物件の引渡し後に管理組合より撤去をするようにと申し入れがあり、止む無く撤去をすることとなってしまった」という事例があります。前テナントは長年営業しており再三にわたる管理組合からの指摘に対し応じてこなかった、または、長年営業している関係でなかなか管理組合が指摘できないでいた(その他憚れる事情があった)ということも考えられます。テナント入れ替えのタイミングで、ようやく撤去が実現できると考えるのはよくあることです。
 

◇入居後に管理規約および使用細則が変更される

区分所有マンションにおいて規定されている管理規約および使用細則は、遵守すべき共通ルールになります。(詳細については後ほどご紹介します。)この管理規約および使用細則ですが、例えば、テナントから発生する匂いや煙に対するクレームが多発したため、管理規約および使用細則を変更し、重飲食での営業をしてはならないとするルールに変更することもできます。当然、変更後は、それに従う義務があるので、テナントは、業態変更を余儀なくされるということになります。この変更については、管理組合の総会で一定以上の賛成(管理規約については議決権の3/4以上の賛成、使用細則については議決権の過半数の賛成が必要となる)を得ることで、管理規約および使用細則を変更することになっています。
 

◆押さえておきたいポイント

区分所有マンションで飲食店を開業する(営業していく)上で押さえておきたいポイントをいくつかご紹介します。
 

◇契約前に管理規約および使用細則を確認

区分所有マンションには、区分所有法に基づいて定める管理規約があります。この管理規約は、建物、敷地、附属施設などの管理や使用についての区分所有者相互間の事項が規定されています。この管理規約は、それぞれの区分所有マンションの実状に合わせて、規定をすることができます。言わば、管理規約は、区分所有マンションのルールブックのようなものです。この管理規約に基づいて設定される詳細なルールのことを使用細則といいます。使用細則は、区分所有者の集会において、管理規約とは別に作成される規則で、より詳細に遵守すべきことが規定されます。使用細則の内容は、区分所有マンションごとに様々ですが、おおよそ、禁止事項、管理組合に届出や許可をとるべき事項、共用部分の使用に関する事項、違反者に対する措置などが定められています。当然ですが、区分所有マンションで飲食店を開業する際は、これらの事項について契約前にしっかり確認をして遵守しなければなりません。
 

◇賃貸借契約書の利用を制限する旨の規定

管理規約および使用細則には、禁止事項が規定されているという話をしました。一方で賃貸借契約書においても利用を制限する旨の規定が存在します。前者が管理組合によって作成されたものであるのに対し、後者は、賃貸人である区分所有者と賃借人である飲食店開業者が合意した内容となります。ここで問題となるのは、管理規約および使用細則の禁止事項と賃貸借契約書の利用の制限する旨の規定が接触した場合、どちらが優先されるのか(すべきなのか)ということです。これについては、結論、管理規約および使用細則が優先されることになります。賃貸借契約書の雛形は、物件を管理している不動産会社が用意するケースが多いのですが、しっかり管理規約および使用細則を確認せずに作成していた場合、こういったことも起こりえます。契約前にそれぞれの内容を確認するようにしてください。
 

◇管理会社と事前に打合せをする

承諾を要することについては、事前に管理会社と打合せをして、不備のないように必要書類を準備するようにしてください。また、審査を通過しやすい書類の作成の仕方などのアドバイスを受けることもしたほうがよいかと思います。可能であれば、理事長に対し事前に資料を提出しておいたりして、根回しをしておくとよいでしょう。区分所有マンションの場合、その建物一棟の管理を委託されている管理会社と、賃貸人が対象物件部分の管理を委託している管理会社の、2つがあります。管理組合や理事会などと繋がりがある管理会社が前者の管理会社となりますが、まずは、後者の管理会社を通じて進めることになります。
 

◇管理組合や管理会社とのトラブル履歴の確認

区分所有マンションで起こりえる問題として、共用部分が使用できなくなることがあることをご紹介しました。前テナントと管理組合や管理会社がトラブルになっていたことが伝わっていないという問題はよくあることです。これは、共用部分の使用に限らずですが、前テナントと管理組合や管理会社との間で何かしらのトラブルがあった場合、事前にそれを把握していれば、こんなはずではなかったということを回避できるはずです。トラブル履歴については、必ず確認をするということを忘れないでください。
 

◇上階の住民と良好な関係を築く

区分所有マンションの上階の住民と良好な関係を築くことができれば、その店舗を利用してくれたりします。また、気に入ってくれればリピーターとなる可能性があります。一方で、匂い、煙、騒音、ゴミ出しなどのクレームが上階の住民より発生して、不誠実に対応した場合、大きなトラブルに発展してしまうこともあります。最悪の場合、区分所有者の共同の利益を守るために義務違反者に対する措置(区分所有法)として、行為の停止等の請求(区分所有法第57条)や使用禁止の請求(区分所有法第58条)の訴訟提起をされる可能性があります。こうなってしまったら営業どころではなくなってしまいます。上階の住民の属性としては、区分所有者が賃貸している場合と区分所有者自らが居住している場合があります。区分所有者の場合、管理組合や理事会の構成員であるということを忘れてはいけません。上階の住民と良好な関係を築くことは、区分所有マンションで飲食店を営業していく上で重要なポイントであることを忘れてはいけません。
 

◆おわりに

ここまで区分所有マンションで飲食店開業する際に押さえておきたいポイントなどについて説明をしてきましたがいかがでしたでしょうか。飲食店経営は長期の営業を前提としています。区分所有マンションにおいてそれを実現するためは、契約前に管理規約および使用細則の内容をしっかり確認すること、オープン後は、上階の住民や管理組合などと良好な関係を築いていくことが重要であるということを忘れないでください。

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飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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