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飲食店のガス容量アップの方法は?ガス設備の基礎知識と居抜き物件の注意点

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ガスは、飲食店を経営する上で重要なインフラの1つです。だからこそ出店をする前に必要な基礎知識をつけておきたいところです。本記事では、飲食店の業態によって必要となるガス容量はどのくらいなのか、その計算方法や容量不足の場合のガス容量アップの方法、都市ガスとプロパンガスの違い、ガス代をどう削減するのか、ガス漏れ事故対策、居抜き物件におけるガスの注意点など、これから飲食店を出店する方にとって有益な情報となるように、ガスについてのあれこれを説明していきます。
 


 

◆飲食店の業態によって必要となるガスの容量

都市ガスの場合、1本の供給管から引き込み管によって各区画へガスが供給されています。自身のこれから出店する飲食店で使用するガスの消費量(カロリー数)が、この分岐したガスの最大容量の範囲内なのかを確認する必要があります。次の表は、ガスの号数ごとの対応可能な飲食店の業態になります。あくまで目安として参考にしてください。
 

ガスメーターの号数 対応可能な飲食店の業態
~6号 バー、カフェ、喫茶店、寿司店など
6号~10号 居酒屋、和食店、イタリアン、フレンチなど
10号~16号 ラーメン店、中華料理店、焼肉店など

 
ガスメーターの号数は、ガスメーターに貼ってあるラベルに明記されています。NB6、NS6と記載がされていたら6号ということになります。6号は1時間あたりの使用最大流量が6㎥となります。あくまで号数の確認については、簡易的な容量の調査ということに留めてください。詳細については、ガスの容量を上げる方法の部分で説明をします。
 

◆必要なガス容量の計算方法

自身の出店する飲食店に必要なガス容量の計算方法は、使用するガス器具の消費量(カロリー数)を全て合算することで求めることができます。各ガス機器の消費量はカタログなどから調べてください。ガス使用量を調べた結果、ガス容量が不足するようであれば、容量を上げるためのガス工事をするか、または一部のガス機器を電気のものに変更するなどの対応が必要となります。
 
【必要なガス容量の計算例】
ガスメーターが10号=10㎥/hの場合、13A(東京ガス)は、1㎥あたり111,000Kcalとなるので、10×11,000=110,000Kcalとなります。使用するガス機器を以下とすると合計が129,500Kcalとなってしまいます。これでは容量オーバーです。一部を電気機器に変更するか、16号に変更する必要があります。計算や判断はこのようにします。
・業務用ガスレンジ30,000Kcal
・スチームコンベクションオーブン10,000Kcal
・食洗器16,000Kcal
・20号給湯器30,000Kcal
・茹で麺器23,500Kcal
・ガスフライヤー20,000Kcal
 

◆ガス容量アップの方法

ガスの容量については、ガスメーターの号数のみを見て判断しがちですが、あくまでガスメーターは、流れるガスの最大流量を制限するためのものになります。例えば、口径の大きいサイズのガスの配管であるにもかかわらず、号数の小さいガスメーターが設置されていたとして、この場合、号数以上のガスが流れることが阻止されます。反対に、ガスの配管の口径が小さいサイズにもかかわらず、号数の大きなメーターが設置されていた場合、設置されているガスメーターが機能していないことになります。そのため事前にガスの配管の口径を確認する必要があります。居酒屋を出店しようとしてガスのメーターを確認したところ家庭用レベルであったとしても諦める必要はありません。もし、ガスの配管の口径が必要な容量を満たしているのであれば、ガス事業者に号数を上げて(ガスメーターを交換して)もらうことで解決することができます。ガス容量の確認で最も重要なポイントは、設置されているメーターに繋がっている配管の口径のサイズによって判断するということです。ちなみにその際の費用は無償となります。ガスメーターの各号数に対しての口径のサイズ(mm)は以下の通りとなります。参考にしてください。
 
・6号:25A(34mm)
・10号:32A(42.7mm)
・16号:40A(48.6mm)
 
ガスの配管のサイズが必要な容量に対し、小さい場合は、ガス本管からの引き込み管を交換しなければなりません。この場合、敷地境界線まではガス会社の負担となりますが、敷地内に関する部分の工事費はテナントが負担することになるため想定外の出費を余儀なくされる可能性があります。但し、ガス容量を増やすためのガス工事はどの物件でもできるとは限りません。
 

◆都市ガスとプロパンガスの違い

ガスは、電気や水道とは異なり、都市ガスとプロパンガスの2種類があります。ここでは、それぞれの違いはどこにあるのかなどについて説明をしていきます。
 

◇都市ガス

都市ガスの原料は、天然ガスです。都市ガスはプロパンガスとは異なり、ボンベを設置しません。ボンベではなく地中にガス導管を設置してそれを通じて各店舗に供給を行います。そのためガス導管が通っていないエリアでは都市ガスは使用できません。
 

◇プロパンガス

プロパンガスの原料は、液化石油ガス(Liquefied Petroleum Gasといい、その頭文字をとってLPガスとも呼ばれています)です。そして、これを圧縮することによりブタンやプロパンを液化させたガス燃料です。プロパンガスの多くは、室外にボンベを設置します。都市ガスとは異なり、ガス導管が通っていないエリアでも飲食店の現場まで配送してくれるのがプロパンガスの特徴になります。
 
都市ガスとプロパンガスでは、発熱量(火力)が異なります。都市ガスは、11,000kcal/㎥に対して、プロパンガスは、24,000kcal/㎥となっています。比較すると2倍以上違います。同じ調理であっても2倍以上コストがかかるかと言うと、都市ガス用コンロのガス穴はプロパンガス用コンロよりもガスが多く出る仕様となっているため、都市ガスとプロパンガスでは使い勝手を含めてそれほど違いはありませんので安心して使用してください。
 

◆飲食店のガス代を削減する具体例

飲食店を経営する上でガス代は避けては通れないコストの1つです。ここではガス代を削減できる可能性がある具体例をいくつか上げてみたいと思います。
 

◇最新のガス機器を使用、居抜き物件は要注意

最新のガス機器は、古いタイプのものと比較すると熱効率が高いものが多いです。同じ調理にもかかわらず、必要なエネルギーを削減することができます。また、必要以上にスペックの高いガス機器を選択するとガスを浪費することになりかねませんので、自身の経営する飲食店の規模や調理量などを考慮して最適なガス機器を使用するようにしましょう。特に飲食店の居抜き物件の場合は、古いタイプのガス機器が多い印象です。必要に応じて交換するようにしてください。
 

◇ガス機器の定期的なメンテナンス

ガス機器が不完全燃焼を起こしている状態だとガスを無駄に消費してしまうだけでなく、安全性についてもリスクが高くなってしまいます。炎の色を確認した際に青色が強い状態が保たれていない場合は、異常が発生している可能性があります。
 

◇調理方法の見直し

飲食店の業態とそこで提供する料理にもよるところではあるのですが、調理方法を見直すことでガスの使用量が減り、ガス代を削減できる可能性があります。例えば、煮込みをする際に鍋に蓋をすることで大幅に熱効率を上げることができ、また、予熱に時間がかかりそうな調理は、一度に多めに作ることでガス使用量を減らすことが可能となります。
 

◇ガスの自由化

プロパンガスについてはかなり前から自由化がされていて自由にガス事業者を選択することができました。一方で都市ガスについても2017年4月から自由化されることとなり、プロパンガス同様に自由にガス事業者を選択することができるようになりました。結果、ガス代削減のため、いくつかのガス事業者の中から自身の経営する飲食店に合ったプランのガス事業者を選択することができる状況となっています。ガス事業者を一度も変更したことがない飲食店事業者の方は是非見直しを検討してみてください。
 

◆ガス漏れ事故を起こさないために

一般家庭においてはIH調理器が普及してきていますが、飲食店の厨房においてはガス機器が主流となっています。このガス機器ですが、使用方法を誤ると火災の発生や一酸化炭素中毒などのガス事故につながってしまいます。時には人命にもかかわる重大な事故に発展してしまうおそれがあるので最大限に対策をしたいものです。
 

◇点検不足や設備上の不備

厨房内で使用しているガス機器の点検や清掃をしていない場合やガス機器自体に不良があった場合、ガス事故につながる可能性があります。また、ガス機器に問題はなくとも取り付けの際の施工に不備があった場合もガス事故となる可能性があります。
 

◇ガス機器の操作ミス

ガス機器の正しい操作方法を知らなかった場合など人的原因がガス事故につながることもあります。
 

◇ガス事故防止のための具体策

厨房内でガス機器を使用する際は換気扇や排気ファンなどで必ず換気をする、常に新鮮な空気を補給するための給気口の前に物を置いて塞がない、ガス機器や給排気設備のメンテナンスや清掃を定期的に行う、ガス漏れや不完全燃焼によって発生した一酸化炭素を検知するためのガス・CO警報器を設置する、などの対策をしてガス事故防止に努めてください。
 
参考:飲食店の皆様へガス安全使用のお願い|経済産業省
 

◆飲食店の居抜き物件におけるガスおよびガス設備の注意点

飲食店の居抜き物件の場合、前テナントと同じ業態であれば問題ないかと思われますが、確認は必要となります。同じ業態であってもガスを多く使用する場合は要注意です。プロパンガスを使用している居抜き物件の場合は、ガスボンベの大きさが20kgなのか50kgなのか、またガスボンベの数、圧力調節器の容量、ガス配管の口径も確認が必要です。都市ガスについては前述したとおりになります。
 
その他、居抜き物件の注意点として、ガス配管があります。厨房内のガス管は調理の際に使用する水分、塩分、酸などが付着して腐食しやすい環境下にあります。特に飲食店の居抜き物件の場合、長年営業をしていたケースはガス管が腐食している可能性もありますので注意が必要です。営業開始後にガス管の腐食を発見したら直ちにガス機器の使用を止めガス事業者に連絡をしてください。
 

◆おわりに

ここまでガス設備に関する基礎知識から飲食店の居抜き物件におけるガスの注意点まで幅広く説明をしてきました。特に料理が主体となる飲食店の業態では、ガスはとても重要な役割を果たします。飲食店を出店するための物件探しでは、立地のこと、賃貸条件のことなどについつい目が行きがちですが、ガスなどのインフラも本記事を参考に忘れずに確認をするようにしてください。

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飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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