飲食店に現れる害虫やネズミの正しい対処法は？クレームが出たらどうする？

害虫やネズミは飲食店にとって食品などの被害だけでなく、来店客に大きな悪印象を与え、クレームのもとにもなる。そこで飲食店に現れやすいゴキブリやネズミの生態をおさえた正しい対処方法や、クレームがあった場合の対応についてここで押さえておきたい。

ゴキブリが原因で客ら6人死傷も

2015年に広島のビルで、ゴキブリが原因で火災が起き、メイド喫茶の客らが死傷した*1。火元はメイド喫茶の入るビルの1階に入っていた飲食店。勤務する男性がゴキブリを駆除するためにガスバーナーを使用してしまい、段ボールなどに引火し、2階のメイド喫茶の客ら6人が死傷、ビルは全焼した。

飲食店であれば、厨房などでゴキブリを見かけてもおかしくはない。ガスバーナーを使ってしまったというのは極端かもしれないが、ゴキブリなどの発生はもちろん、衛生上の問題がある。また、害虫やネズミが店内に現れると「もう来たくない」と思う来店客もいるため、害虫やネズミにはしっかり対処したい。

*1　「ゴキブリ駆除でバーナー使用、引火しメイド喫茶の客ら６人死傷…火元の飲食店側を提訴」読売新聞オンライン

夏に現れやすい主な衛生害虫などの種類

飲食店で繁殖しやすい衛生害虫には、おもに以下のようなものがある。発生場所や注意点も異なる。

■ゴキブリ
代表的なものがゴキブリで、フンや死骸などが食品に混入するというリスクがある。見かけるたびに駆除する、毒エサを置くといった対策は多くの飲食店が実施しているが、闇雲に追いかけてもキリがないため、動線を追うことが重要になる。

まずゴキブリの侵入経路は店舗の入口だけではないという点に注意が必要だ。毒エサなどの対策は入口付近だけでなく、換気口にも必要である。また、ゴキブリは数ミリの隙間からでも侵入できるため、壁や窓サッシの隙間がある場合はテープで塞いでおくのも有効だ。エアコンのホースの穴などにも注意したい。

そしてゴキブリの場合、卵を産ませないことが最も重要になる。ゴキブリは①温かく、②暗くて湿度が高く、③餌があるという3つの条件を満たす場所に卵を産みつける。よって冷蔵庫と壁の間、段ボールの下、観葉植物の土の中などもゴキブリにとっては良いコンディションになるため、重点的に清掃しておきたい。

卵を発見した場合はしっかりと処理する。その場合、産んだメスのゴキブリが店内に残っていたり巣が近くにあったりする可能性を疑う必要がある。卵を見つけた場所に毒餌を設置し、繁殖の根を断つようにしたい。

■チョウバエ
小型でハート型をしているのが特徴。こちらも発生源を見極めたい。チョウバエの発生源は汚水槽や排水層だが、飲食店の厨房の場合、排水マスだけでなくグリース阻集器が発生原因になっていることがある。こうした場所に浮いているカスが幼虫の餌になる。よって排水マスや排水溝の衛生を保つほか、グリース阻集器は定期的に清掃する必要がある。下の図を参考にしたい。成虫を見かけた場合は、殺虫剤で駆除していくのが効果的だ。

◇出典：東京都下水局

ネズミが引き起こすのは食中毒だけでない

また、繁殖力があり注意が必要なのがネズミ。不快なだけでなく、サルモネラ菌などを持っているため食中毒の原因となる。さらに困ったことに、ネズミは尿を少しずつ垂らしながら移動するため、見つけた時には店内のどこに菌が撒き散らされているかわからない。

また、ケーブルなどを噛みちぎり火災の原因となるほか、人を噛むこともある。ネズミに噛まれると、鼠咬症と呼ばれる症状が出る。1~2週間の潜伏期間を経て、高熱やリンパ節の腫れ(腫脹)を引き起こす。

日本で飲食店内に多いのはドブネズミかクマネズミで、妊娠期間は20~21日間、一年に5~6回は妊娠し、一度に7匹ほどの子どもを産むという繁殖力を持っている。1.5cmほどの穴があれば侵入できてしまうため、壁に穴がある場合は塞ぎ、他にネズミが入ってきそうな場所には忌避剤を設置する。

害虫やネズミで来店客からクレームがあった場合

来店客から苦情があった場合は、まずアルバイトに任せず、責任ある担当者が対応するのが良い。「うちではそんなことはありえない」「どこの飲食店にだっている」といった反論は逆に相手の怒りを増幅させるだけになってしまう。まずどこでどのような害虫やネズミを見かけたかなど、相手から「話を聞く」のが良い。

明らかなクレーマーでない限り、まずお詫びし、次回の来店につながるようにチケットを渡すなどなんらかのインセンティブを提供するのも良いだろう。いずれにせよ重要なのは、事前の予防等、発見したらその根を絶つことである。飲食店の衛生問題はSNSですぐ拡散される時代であることにも注意したい。