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スーパードライも値上げ 円安止まらず、飲食店の仕入れにも大きな影響

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円安を背景にした食料品の値上げが今年も相次いでいる。今年に入って既に4000品目が値上げされただけでなく、6月にはさらに6000品目以上の値上げが予定されている。食品メーカーはこれまで小売価格を上げるよりも、内容量を減らして価格を据え置く「ステルス値上げ」で対応してきたが、その手法にも限界が来ているようだ。円安にウクライナ情勢の不透明さが相まって、飲食店の仕入れには大きな影響が出始めている。
 

食品主要105社、6000品目以上が値上げ

食料品の値上げが続いている。食料品の値上げは今年4月までに4801品目にのぼり、さらに5月以降6167品目の値上げが予定されている。値上げ率は平均で11.1%になっている*1。値上げ品目が最も多いのは加工食品、次いで調味料。値上げの幅が最も高いのは「酒類・飲料」で、平均15%の上昇となっている。輸入ワインなどの価格上昇が影響している。
 
これまで食品各メーカーは販売価格を値上げするよりも、内容量を減らして価格を据え置く「ステルス値上げ」で対応してきた。しかしその手法も限界のようだ。今年は本格的な値上げが止まりそうにない。
 
背景にあるのはウクライナ情勢だけでなく、円安の影響だ。帝国データバンクの別の調査では、円安の影響を受けて56.5%の企業が「対策を取っている」と回答しており、そのうちの3割以上は「販売価格への転嫁」を具体的な対応策にしている*2。
 
これによって商品の包装資材なども値上がりする。資材などの高騰を受けて、アサヒビールは、10月1日出荷分からスーパードライやチューハイ、ウイスキーなどを値上げすると発表した。
 
麦芽などの原材料、包装資材、エネルギー価格、物流費などのコスト上昇が理由で、「生産・物流に関わる各種コストの上昇は今後も継続するものと想定しており、企業努力だけで吸収することが困難な状況」としている*3。大手企業でさえ苦しい環境に置かれているのだ。
 
*1 「⾷品主要 105 社、6000 品目超が今年『値上げ』価格は平均で 1 割アップ」帝国データバンク
 
*2 「円安に関する企業の対応状況アンケート」帝国データバンク
 
*3 「ビール類・RTD・その他樽詰酒類・ノンアルコール飲料・国産ウイスキーの価格改定について」アサヒビール
 

「円安」は今に始まったことではない

ウクライナ情勢の悪化によって、ニュースで頻繁に円安が取り上げられるようになったが、実は「円安」という現象は今に始まったことではない。
 
「円高」「円安」には「1ドル=何円になれば円高/円安」という決まった数字がない。そのため長期的な為替の動きは把握しにくいが、円という通貨の「購買力」は年々下落を続けている(図1)。
 

◇出所:「円の実質実効為替レートの歴史的な低下の意味 ~購買力平価による水準評価から考える円相場の現在地~」国際通貨研究所 図1 円の購買力の推移
 
上のグラフの赤線がドルに対する円の「購買力」を示している。1970年半ばをピークに円の購買力は下がり続けていることがわかる。実際、日銀によると、牛肉は10年前に比べ2.4倍、小麦は約66%も値上がりしているのだ*4。
 
*4 「円の実力低下、50年前並みに 購買力弱まり輸入に逆風」日本経済新聞 2022年1月21日
 

世界的な食料争奪戦も 長期化に備えた対応を

「特に4月以降から仕入れ値が全般的に上がっている。輸入品だけではない。」と話すのは都内のイタリアンレストラン経営者だ。料理の値上げはしていないため、粗利は5~10%減ったという。
 
円安が続くようならメニュー価格も考えざるを得ない。その際には量や食材を変え、粗利率の高いメニューの投入を考えているという。食料品の値上げが進んでいるのは為替の影響だけでなく、世界的な食料不足も背景にある。よって、食品の高騰は時期を待てば収まるとは考えにくい。
 
今後も食品を始めとした物価は値上がりを続ける可能性が高いという前提で、何らかの本格的な対策を考える時期に来ている。
 

 

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