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水場に出現するチョウバエ 飲食店ではどのような対策ができる?

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飲食店では厨房によく出現する「チョウバエ」。「コバエ」とわたしたちが呼んでいるもののひとつです。ゴキブリもそうですが、チョウバエもまた、汚い環境に生息している状態であちこちを飛び回るので食材を汚染してしまうほか、時に人の消化器に寄生する「ハエ症」という感染症をもたらします。
 
また、チョウバエが多く見られるようであれば、すなわちそれはチョウバエが好む環境=不衛生、ということです。チョウバエの生態や「ハエ症」などについて、飲食店がおさえておくべき基本的なことをご紹介します。
 

◆日本に生息するチョウバエの種類と特徴

チョウバエとは「蝶のようなハエ」という意味で名前がつけられています。体調は1ミリ~3ミリといった小型の種が多く、そのほとんどが不衛生な環境で発生します。日本では「オオチョウバエ」「ホシチョウバエ」の2種が多く生息しています。オオチョウバエは少し大きく4~5ミリメートル、ホシチョウバエは1.5~2ミリメートルの体長を持ちます*1。
 

写真 左:オオチョウバエ、右:ホシチョウバエ
(出所:「チョウバエ類について」名古屋市
 
いずれも幼虫は水生で、腐敗物が発生している汚水、排水溝、浄化槽、汚水だまりなどから発生するほか、台所や風呂場の排水施設内で発生することもよくあります*1。成虫は汚泥の中に卵を産みつけ、そこで孵化した幼虫は汚泥を食べて成長します。また、暖房のある建物では、ほぼ年間を通じて発生し、繁殖もします。
 
また、ビルには汚水を貯める汚水槽がある場合があります。その汚水槽もチョウバエの発生源になりえます。汚水槽に発生した成虫が汚水槽の隙間や排水管を通ってビル内に大量に侵入した事例もあります*2。
 

◇チョウバエが人にもたらす「ハエ症」とは

日頃はチョウバエが人体に直接的な影響を与えることはあまりありませんが、幼虫がヒトの消化器内や皮膚の下に寄生してしまうと「ハエ症(ウジバエ症とも呼ばれます)」という感染症を引き起こすことがあります*3。体内に入って消化器などの組織・器官を融解したり、鼻や口、耳などに侵入することでさまざまな症状をもたらします。
 
ただ、ここまでの実害がなかったとしても、チョウバエがよく発生する場所はそもそも不衛生だということです。不衛生なところから出てきて食材の上などに止まってしまうこともしばしばです。よって駆除はもちろん、チョウバエが好むような環境は改善しなければなりません。
 

◆チョウバエが好む温度はある?

ではチョウバエが好む温度について詳しく紹介していきます。
 

◇チョウバエと気温の関係は?

なお、オオチョウバエに関する研究では、15℃~30℃と、いずれの温度でも高い確率で孵化します。卵の発育速度については高温のほうが早くなります。
 

(出所:森原修、安江安宣「オオチョウバエの発育に及ぼす温度の影響」農林水産省データベース p82
 
しかし一方で、成虫の生存日数は温度の低いほうが長い、というやっかいな存在です。
 

(出所:森原修、安江安宣「オオチョウバエの発育に及ぼす温度の影響」農林水産省データベース p84
 
夏場に多い、というイメージが強いかもしれませんが、そうとも言い切れないのです。
 

◇チョウバエが好む、意外な場所

さらに観葉植物の土も、一般的に虫が好む「暖かく湿度が高い場所」で、チョウバエが発生することがある場所です。植物を置いたら室内に虫が増えた、という場合は植物を風通しの良いところに置く、家庭園芸用の殺虫材を使うなどの対策が必要です。
 

◆特徴を踏まえたチョウバエへの対策方法

では、これらのチョウバエの特徴を踏まえた上で、対策方法を考えていきましょう。チョウバエが好む発生場所は、先ほども紹介した通り、汚水、排水溝、浄化槽、汚水だまりです。よってこれらの部分は徹底的に汚れを落としておく必要があります。
 
また、厨房などの排水溝は下水管から匂いや虫が上がってこないよう、「防臭弁」という途中で水がたまる場所が設けられています。しかし防臭弁がひび割れなどで壊れていた場合、水がたまらなくなり、臭いや虫が直接上がってきやすくなります。よって、防臭弁のチェックをしておく必要があります。自分で難しい場合は、業者さんに依頼しましょう。長期間使用されていないことで防臭弁の中が乾燥してしまい、役割を果たさない可能性もあります。
 
なおテナントビルの場合、ビル全体の汚水槽からチョウバエが発生している可能性もあります。どれだけ気をつけても大量のチョウバエが発生し続ける場合は、他の階のテナントさんと話し合い、ビルの管理会社に掛け合ってみる必要もありそうです。
 
*1 「チョウバエ類について」名古屋市
 
*2 「衛生動物シリーズ10 チョウバエ」京都府
 
*3 末吉昌宏「日本で発症した人体ハエ症の再検討」
 

 

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