繁盛店への道

相次ぐSNS悪用の「バイトテロ」や従業員のトラブル、防ぐ方法はあるのか?

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店内の施設や食材を悪用した写真をアルバイトがSNSに投稿し炎上する、それが店の評判にも影響してしまう——このような例が後を絶たない。いわゆる「バイトテロ」である。
 
また、金銭の持ち逃げや職場での男女関係、セクハラやパワハラなど、経営者の頭を悩ませる人事問題は多岐にわたる。
 
このようなトラブルにどう対処すべきか、未然に防ぐ方法はあるのか。社労士の浦辺里香氏に伺った。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太(ルーテージ株式会社)。
 

「バイトテロ」なぜなくならない?防ぐ方法はある?

Q.飲食店では、SNSに不衛生な写真を投稿する「バイトテロ」が絶えませんが、そもそもこうしたバイトテロはなぜ起こるのでしょうか?
 
A.飲食店で圧倒的に多い労使トラブルはやはりバイトテロですね。冷蔵庫に入ったり、一度ゴミ箱に入れた食材で調理をしたりする様子をSNSに投稿して炎上する。なかには、消費期限切れのものをわざと棚に並べて写真を撮り「店で賞味期限切れの商品を売っている」とウソの投稿をする、そのような事例もありました。アルバイト店員が家庭裁判所に送致されたケースもあります。
 
バイトテロの動機は、こちらの想像以上に安易なものなんです。単純に面白いから、炎上させたいから、注目されたいから。いわゆる「バズりたい」という、それだけの理由ということが多く見受けられます。
 
Twitterなんかですと、フォロワーにしか投稿内容を見られないように限定している、いわゆる「鍵アカウント」、こちらへの投稿ならば身内しか見ないから大丈夫だろう、そう考えてしまっています。しかしこうした投稿は、いまはスクリーンショットという形で簡単に保存・拡散されてしまいますから、大きな話に発展するのは珍しいことではありません。デジタルネイティブの負の側面、あるいは料理というのはある意味ではクリエイティブな仕事ですが、それが悪い方向に働いてしまった結果がバイトテロと言えるでしょう。
 
浦辺里香さん
 
Q.防ぐ方法はないのでしょうか?
 
A.方法としてはいくつか考えられます。まず、「店内でやたらと写真を撮っているアルバイトがいる」ということで発覚するケースがあります。そういった目配せに対して早期に手を打つことです。
 

そして、もうひとつの対処法としては、そもそも職場にスマートフォンの持ち込みを禁止することです。それだけでも大きなリスク回避方法になります。
 

しかし、ただ「持ち込み禁止」と店内に周知するだけでは足りません。最初の雇用契約や就業規則を伝える段階でスマートフォンの持ち込み禁止を明文化するのが理想的です。それもただ紙を渡すだけではなく、雇用契約時にきちんと「読み合わせ」のようにして説明するとなお良いでしょう。
 

Q.店舗の経営に大きな影響が出てしまった場合、解雇することはできるのでしょうか?
 

A.究極的には、雇用契約書や就業規則に「業務中の店内写真をSNSに投稿した場合は解雇する」と明確に記して、労使で合意しておくことで解雇は不可能ではありません。ただし実害が発生していない場合、解雇無効とされることもありますが、抑止力にはなります。
 

ただ、注意しなければならないのは、クビになったからもういいや、ということで解雇後に余計に写真を拡散されてしまうというリスクがあることです。やはり、日頃から信頼関係を築き、彼らを敵に回さないことが最も理想的ではあります。
 

金銭持ち逃げ、男女関係にはどう対処する?

Q.他には、レジからのお金の持ち逃げや、職場での男女関係といったトラブルも飲食店では見受けられますが、どのような防止策や対処ができるのでしょうか?
 

A.まずお金については、アルバイトに管理を任せるほうが間違っているのではないかと思います。経営者が「レジは自分のお財布なんだ」と思えば他人に任せる気にはならないはずです。金銭の管理は経営者の義務です。
 

Q.今はキャッシュレス決済が多いですから、例えば現金をあまり店に置かないという意味では利用するのも手段になりそうですが。
 

A.良いと思います。キャッシュレス決済には手数料がかかるということで前向きになれない経営者も多いかとは思いますが、その手数料は金融機関まで現金を運ぶ手間賃と考えたり、従業員にお金を持ち逃げされないための保険料だ、という考え方もできます。キャッシュレス決済の場合、決済の記録が証拠としても残りますし。
 
浦辺里香さん
 

Q.それから、男女関係のトラブル、これはどう対処したら良いでしょうか。
 
A.これは難しいところで、恋愛そのものは私人間でのことですから、職場が介入するわけにはいきません。ただ、業務時間内にトラブルを起こさないこと、店の信用に関わったり店の品位を下げたりしてしまうようなことがあれば注意をしなければなりません。
 

ハラスメントへの対応方法はあるか

Q.今回は最後に、ハラスメントについてお伺いしたいと思います。職場内でのセクハラ、パワハラについて、経営者はどう対応すれば良いでしょうか。
 

A.まず、ハラスメントについては相談窓口を設けることが法人の場合、義務化されています。中小企業の場合は2022年4月から義務になります。社内であったり第三者の弁護士事務所であったりするのですが、最近は「ハラスメントを受けた」と従業員側が一方的に主張して、しかし結局は冤罪になるというケースが多くなっています。
 

しかしこうした事態については、残念ながら経営者側を守る明確な法律はないのが実情です。ですので、日頃からの努力が必要です。
 

困ったときは労働局や労働基準監督署などに相談することも考えられますが、従業員への教育研修や、揉め事になったときには出来事について口頭での対処で済ませるのではなく、これも文字にして残すことが大切です。もちろん、その際にはお互いの主張について「これで間違いないか」と文字にしたものを一緒に読む、読み合わせを徹底するのがベストです。
 
Q.具体的なお話をありがとうございました。
 
A.ありがとうございました。
 

まとめ
バイトテロをはじめ、従業員とのトラブルはいつ、誰が経験してもおかしくない。必要なのは、やはり従業員を敵に回さないこと、そのためにじっくりと信頼関係を築くことという、人間どうしとしての基本的なところにあるようだ。

 
浦辺里香(うらべりか)
URABE社会保険労務士事務所代表(特定社会保険労務士)/ブラジリアン柔術紫帯/ライター
早稲田大学卒業後、日本財団、東京中日スポーツ新聞社を経て社労士として開業。
■4コマ漫画的ブログ https://uraberica.com/
■Twitter https://twitter.com/uraberica
 
川瀬 亮太
RESTA編集責任者/ROOTage株式会社 代表取締役
飲食店の開業サポート、自社でも飲食店を経営する
 

〇【社労士に聞く 第一弾 前編】 https://inuki-ichiba.jp/resta/koyou-kyufukin-1/
〇【社労士に聞く 第一弾 後編】 https://inuki-ichiba.jp/resta/koyou-kyufukin-2/
〇【社労士に聞く 第二弾】 https://inuki-ichiba.jp/resta/labor-management/
 

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