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「ドミナント戦略」「炉ばた居酒屋」で実績を重ねて世界展開を目論む絶好調

株式会社絶好調(本社/東京都新宿区、代表/吉田将紀)という飲食企業がある。同社の特徴は、東京・西新宿で居酒屋をドミナント展開していること。同社は14店舗を擁しているが(2025年2月末現在)、西新宿7丁目に7店舗、西新宿1丁目に2店舗を展開している。そしてもう一つの特徴は、「炉ばた居酒屋」業態をメインに展開していること。この二つの特徴は、同社の体質をより強いものにして、新しい境地を次々と切り拓いている。

「居酒屋甲子園」の世界観でドミナント戦略を活かす
絶好調が設立したのは2007年6月のこと。新宿・歌舞伎町ゴールデン街近くの雑居ビルの最上階(9階)に「絶好調てっぺん」を開業した。代表の吉田氏(48歳)は、「居酒屋甲子園」の創始者である大嶋啓介氏が創業した「てっぺん」の立ち上げメンバーで、ここでアントレプレナーシップが鍛えられたようだ。
「絶好調てっぺん」は「炉ばた居酒屋」の店で、新鮮な魚や野菜を焼いて提供した。当時の居酒屋甲子園の世界観に倣った「清潔感がある元気のいい接客」も相まって、不利な立地でありながらリピーター客でにぎわった。客単価は5000円で、同社のお客は同店の「価値」を正しく評価する、いわゆる「いい客」がそろっていた。
そして、現在のメインブランドとなる「燗アガリ」を15年5月西新宿7丁目にオープンして、ここから西新宿ドミナントにシフトしていく。
ドミナント展開のメリットは言うまでもないが、自社の店舗が近くにあることから、各店舗の状況に応じて従業員を流動的にシフトインできること。食材のコントロールも同様である。

さらに、お客が同社のあるお店を訪ねて満席だった場合に、ドミナントの中の同社のほかの店を紹介して入店してもらうことができる。店の雰囲気やクオリティも同一であるから、お客は安心してそのお店に行くことになる。
このような具合に、「清潔感がある元気のいい接客」が西新宿7丁目に7店舗存在していることによって、このような居酒屋の文化がこのエリアに浸透している。また、大ガードの大きな通りを挟んだ西新宿1丁目に、絶好調から独立した國屋(本社/東京都新宿区、代表/國利翔)が3店舗隣接して出店していて、絶好調が浸透させた西新宿7丁目の居酒屋文化を面として広げている。
このわずか10年の間で、西新宿7丁目から1丁目で見られる飲食業の様子は大きく様変わりをしている。
仙台の老舗「元祖炉ばた」を事業承継、「炉ばた文化」を深める
さて、絶好調は2020年8月に仙台市内の国分町にある「元祖炉ばた」を事業承継した。同店は昭和25年(1950年)に創業した店で、店名通りに日本の「炉ばた居酒屋」の元祖となった店である。
仙台には絶好調を卒業して、仙台駅の近くで居酒屋を営業している人物がいて、東京の絶好調のメンバーは同店を訪ねることが多くなった。東京で炉ばた焼きの居酒屋を展開する代表の吉田氏は「炉ばた文化」の研究に余念がなく、仙台の卒業生を訪ねるたびに、この「元祖炉ばた」を訪ねて「炉ばた居酒屋」の在り方に想いを巡らしていた。
あるとき「元祖ろばた」を経営する人物から、絶好調に「この店を継いでもらえないか」と相談を受けたという。代表の吉田氏が「なぜ、当社に声を掛けてくださったのか」と尋ねたところ、このように話してくれたという。
「これまで当店にお客様として来店していただいていた絶好調のみなさんを見ていて、その雰囲気がとても素敵だった。こちらのみなさんに、是非うちの店を継いでもらいたいと考えるようになったから」
吉田氏は、これまで仙台をはじめ宮城を訪問するようになって、宮城の豊富な食材や酒の奥深さに魅了されていた。この「元祖炉ばた」からの事業承継の申し出は、宮城に対するリスペクトが、事業基盤をつくることにつながっていった。
そして、この「元祖炉ばた」を拠点にして、仙台市内に2023年4月「鳥たか」をオープン、その1年後の24年4月「鳥たかハナレ」をオープンした。
さらに24年10月、東京・立川に「燗アガリ」をオープンした。同店が出店した場所は、立川駅南口近くの飲食ビル「GEMS立川」の3階。このビルは野村不動産と飲食企業のMOTHERSが共同でプロデュースしたもの。
このビルの中に絶好調が出店したきっかけは、MOTHERSから声を掛けていただいたことからとのことだが、絶好調ではこの立川の店を拠点に、立川エリアにドミナント展開を行うきっかけとなったと言えるだろう。この立川の店は、30代以上の中高年層の男性・女性で連日にぎわうようになり、予約が必要な店となっている。

今年5月ミラノに出店、「炉ばたを世界に。」を展開する
絶好調の今年の大きな話題は「イタリアのミラノ」に炉ばた居酒屋を出店すること。オープンは5月の予定。これまで絶好調の「燗アガリ」をデザインしてきたスタジオムーンの乙部隆行氏も自身のfacebookで、「絶好調のミラノ店舗の設計のために、ミラノに来ている」といった話題を投稿していて、この計画は着々と進行しているようだ。
絶好調はなぜ、イタリアに「炉ばた居酒屋」を出店するのだろうか。この質問に対して吉田氏はこう語ってくれた。

「それは、当社の『炉ばたを世界に。』というミッションから。当社は『炉ばた発祥の店』を運営しているので、『炉ばた文化』を日本だけではなく世界に広げていきたい。特にヨーロッパは、距離的に日本から遠いということもあり、本物の日本食の店が少ない。そこで『日本の食』『おもてなし』『炉ばた』という日本の居酒屋のクオリティを、イタリアのミラノから展開していきたい」
吉田氏は、これまで海外視察を重ねてきて「イタリアはいい国だなあ」と思うようになった。コロナがあけてから同社の業績は順調に回復するようになり、「このタイミングでイタリアにチャレンジしようと決断した」とのこと。
イタリアに魅かれた要因は、イタリア料理に「炉ばた料理」に通じるものを感じたから、とのこと。それは、どちらも食材が生かされた料理で味付けがシンプルということ。ここに同社の方向性との親和性が高いと考えた。

ミラノの物件は昨年の夏に決めて現地法人を設立。絶好調には、ローマで2年間働いていた経験を持ち、帰国して同社に8年間務めた店長兼料理長が在籍していて、この人物が現地法人の代表を務める。さらに日本から2人を送り、日本人3人が店の全面に立って営業するとのこと。
西新宿1丁目で、同社から独立した國屋が店舗展開をしていることを前述したが、筆者が2月上旬に同社代表の國利氏に取材をする機会があり、「絶好調のミラノ出店」の話題を投げかけたところ、國利氏は「『絶好調てっぺん』を立ち上げた当時のメンバーと一緒に、ミラノの店に行って手伝いをする」という。
絶好調の吉田氏のアントレプレナーシップは、吉田氏と一緒に歩んできた人々に脈々と受け継がれているものと筆者は感じた。
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
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