開業日の決め方にルールはある?決め方のポイントや提出期限、メリットも解説
個人事業主にとって、開業日は事業を開始した記念日となるため、いつにするかに頭を抱えている人もいるでしょう。この記事では、開業日の決め方やポイント、開業届の提出期限などについて解説します。開業届を提出するメリットやデメリットも解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
◆開業日とは
開業日とは、個人事業主が「事業を始めた日」として設定した日のことです。個人事業主は、法人とは違い、事業を始めた日が明確でない場合もあるため、深く考えずに決める人もいます。しかし、開業日は個人事業税に関わるため、慎重に検討しましょう。
◆開業日の決め方にルールはある?
開業日の決め方に、明確なルールはありません。しかし、自分のお店である以上、自由に考えたり決められたりする分、さまざまな要素を複合および鑑みて決めるとよいでしょう。
以下は、開業日を決める方法の例です。
・年末年始の忘年会や新年会シーズン、3月~4月頃の送別会や新入生歓迎の時期、開業予定の立地で催し物が多い時期など、繁忙期・閑散期を考慮する
・OPEN間近のスタッフが不慣れなタイミングを、あえて避ける
・物件取得を決め、諸々の準備が完了した日を開業日に設定する
・1周年記念などの店舗イベントに合わせる
◆開業日の決め方とおさえておきたいポイント
開業日を決める際には、おさえておくべきポイントがあります。ここでは、2つのポイントについて解説します。
◇開業日によっては経理処理に影響する
開業日は自由に決められますが、開業日次第では、経理処理に影響することを理解しておきましょう。開業日より後に発生した印刷代や備品代などは、必要経費として計上可能です。しかし、開業日以前の印刷代や備品代などは、開業費扱いになります。開業費は、繰延資産と呼ばれる資産として扱われ、原則として5年間で償却される点も覚えておきましょう。
◇開業日は後から変更できる
開業日は、開業届を提出して1か月以内であれば、取下げできます。1か月を過ぎた場合は、再度開業届を提出する必要があります。開業届は、何度でも提出できるため、開業日を変更したい場合は、日付のみを変更して再提出すれば問題ありません。ただし、必要以上に提出を繰り返すと、税務署に不審に思われる可能性があります。むやみに変更するのは避けましょう。
◆開業届の提出期限
所得税法第229条では、「開業届は事業開始日より1か月以内に提出しなければならない」と示されています。事業所得や山林所得、不動産所得が発生するいずれの事業を開始した場合も、同様です。ただし、仮に期限を過ぎたとしても、ペナルティを科されたり、税務署から催促されたりすることはありません。
※参考:所得税法 | e-Gov法令検索
◇開業届は過去に遡って提出できる?
開業届は、過去に遡って提出できます。例えば、開業届を提出せずに数年間事業を続けてきた個人事業主が、青色申告をしたいと考えたとしましょう。青色申告をするには、開業届を提出する必要があります。この場合、提出された申告書に記入された開業日が、正式な開業日だと見なされます。
◆開業届を提出すると得られるメリット
開業届を提出すると得られるメリットは、主に2つあります。ここでは、2つのメリットについて解説します。
◇青色申告申請ができる
開業届を提出すると、青色申告申請ができます。個人事業主が所得税を申請する方法は、白色申告と青色申告の2つです。通常は白色申告が行われますが、青色申告を希望する場合は、事前に申請する必要があります。
青色申告申請によって得られるメリットは、以下の通りです。
・最大65万円の特別控除を受けられる
・赤字が出た年の損失を翌年から3年間にわたって控除できる
◇屋号で銀行口座開設ができる
開業届を提出すれば、「屋号+個人名」で事業用の口座を開設できる銀行もあります。屋号で口座を開設する場合、開業届の控えが必要となるケースがあるため、準備しておきましょう。屋号で口座を開設できれば、個人のお金と事業のお金を区別でき、経費処理や確定申告、資金管理などをスムーズにできます。顧客や取引先からの信用を得やすくなる点も、メリットです。
◆開業届を提出すると生じるデメリット
開業届にはメリットがある反面、デメリットも生じます。ここでは、2つのデメリットについて解説します。
◇失業手当を受け取れなくなる
開業届を提出すると、失業手当を受け取れなくなります。開業届を提出した個人事業主は、失業状態にあると判断されないためです。そのため、失業手当を受ける予定がある人は、届出日を見直すことをおすすめします。また、再就職手当の受給を検討している人は、受給資格も確認しておきましょう。
◇配偶者の扶養から外れる可能性がある
開業届を提出すると、配偶者の扶養から外れる可能性があります。扶養から外れると、国民健康保険料と国民年金保険料を納めなくてはなりません。健康保険の被扶養者の条件は、組合によって異なります。ただし、収入が一定額を超えない場合は、引き続き扶養に入り続けられる場合もあるため、確認するとよいでしょう。
◆開業届を提出するときの注意点
開業届を提出する際には、気をつけるべき点があります。ここでは、2つの注意点について解説します。
◇副業ではなく本業になってから提出する
開業届は、副業ではなく本業になってから提出しましょう。副業として収入を得ているときは、開業届を提出する必要がありません。副業で得た所得は、雑所得と判断されます。雑所得の場合、事業所得から利用できる10万円または55万円(一定の要件を満たす場合は65万円)の青色申告控除は、適用されません。
◇年内に事業所得があった場合は年内に開業届を提出する
年内に事業所得があった場合、年内に開業届を提出しましょう。開業届の提出が翌年になると、前年の所得に対する青色申告控除が受けられません。開業届を提出する際に、青色申告承認申請書も提出します。その他注意すべき点については、以下の記事で紹介しているため、参考にしてください。
※参考:飲食店を開業する手順や必要な資格、届け出など準備の方法を解説| RESTA[レスタ]
◆開業届に関するよくある質問
開業届を提出する際には、疑問点を払拭しておくことが大切です。ここでは、よくある質問について解説します。
◇開業届は開業前でも提出できる?
開業届は、開業前には提出できません。開業届は事業開始を申告する書類であるため、開業日が提出日よりも後にならないように、気をつけましょう。特に士業や許認可など登録が必要な事業を始める場合は、要注意です。ただし、開業届を開業前に提出したからといって、ペナルティを科されることはありません。
◇収入がなくても開業届の提出は必要?
収入がなくても、事業所得が発生する事業の場合、開業届を提出すべきです。青色申告が認められると、最長3年間赤字を繰り越せます。そのため、収入がないときや赤字のときでも、事業所得が発生する場合は、開業届を提出するメリットがあります。
◆まとめ
開業日は、個人事業主が「事業を開始した日」として指定した日のことです。開業日の決め方に明確なルールはありません。そのため、多くの要素を総合的に考慮して判断し、開業日を設定するようにしましょう。
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