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「飲食店倒産」過去30年の最多を更新 危惧される「人手不足倒産」とは?

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2023年上半期の飲食店倒産(負債1000万円以上)が424件となり、過去30年間で最多を更新した。コロナ禍後も客足が戻らなかったことや、燃料や原材料の価格高騰という理由も多いが、実は飲食店に迫っている危機はそれだけではない。ここでは倒産の主な理由を紹介し、飲食店がそこから学ぶべきことを紹介していきたい。
 

倒産件数は前の年より8割増加

東京商工リサーチが、2023年上半期(1-6月)の飲食店倒産についての調査結果を発表した*1。それによると、2023年上半期(1-6月)の「飲食業」の倒産は424件で、前の年の同じ時期を78.9%上回って急増している。上半期では1994年以降の30年間で最多を記録している。
 
休業・時短協力金など経営基盤を支えてきた制度が終了し、それとともにエネルギー価格や物価の高騰が押し寄せていることが大きな原因だろう。飲食料品の値上げの波は秋に再び訪れるとの予測もある。すでに8月には醤油やだし類などの値上げが控えている*2。値上げに歯止めがかかることはなさそうだ。
 
しかし、他に注目したい点がある。業種別では、コロナ禍で参入が相次いだ「宅配飲食サービス業」が前の年より210.0%の増加(10→31件)。「持ち帰り飲食サービス業」も137.5%増加(8→19件)していることだ。コロナ禍で好調だったはずのこれらのサービスで倒産件数が増加しているのは、ひとつの大きな変化といえる。また、資本金別で見ると「100万円未満」の小・零細規模の倒産増加(218.1%増)が目立ち、前の年の3倍以上になっている。
 
*1 「『飲食業倒産』上半期(1-6月) 過去30年間で最多の424件」東京商工リサーチ
*2 「『飲食料品値上げ』 上半期の最多は『加工食品』 対象品目は約3万品、秋には値上げ第3波も ~主要飲食料品メーカー200社の『価格改定・値上げ』調査~」東京商工リサーチ
 

食料品値上げだけではない倒産の原因

さて、もうひとつ注目したいのが倒産の原因である。
 
この調査によれば、倒産を原因別に見ると「販売不振」が最多の350件、「既往のシワ寄せ」が25件、「他社倒産の余波」21件と続いている。
 
しかし飲食店については、もうひとつの危機が訪れている。東京商工リサーチの6月の調査によれば、コロナ禍で人員削減を実施したすべての飲食店が「人手不足」に陥っていることがわかっているのだ。
 
人の流れが回復しているにもかかわらず、人手不足のために営業のチャンスを失っているという状況だ。エネルギーや飲食料品の値段が上がっている状況の中では、売上の機会を増やし収益を上げることはもちろん重要である。しかし人手不足でそれができない、という新しいジレンマが発生している。
 

人手不足倒産は今後、深刻化も

もうひとつの調査データを紹介したい。これは飲食店のみを対象にしたものとは異なるが、帝国データバンクが4月に実施した調査では、「人手不足倒産」は異例のペースで増加している。
 

(出所:「『人手不足倒産』が急増、4 月は過去最多」帝国データバンク p1)
 
帝国データバンクは人手不足倒産を「コロナ禍では表面化しなかったリスク」だとしている。あらゆる業界で言えることだが、一般的に企業は「需要の急激すぎる変化」に弱い。今回は新型コロナの法律上の分類が「5類」に引き下げられて以降、需要の急激すぎる増加に対応できない企業が増えているのだ。
 
さらに、インバウンド需要の急増もまた人手不足に拍車をかけていると考えられる。
 

「2000円でも人手集まらない」地域も デジタル含めた合理化を

一方で人件費が高騰しているのも事実である。沖縄では国際通りの飲食店が、時給2000円を提示しても人手が十分に集まらないといったケースが明らかになっている*3。外国人を雇用してもまだ足りないのだという。
 
なお、外国人労働者は知人や友人のグループで働き先を探すことが多く、店側と時給引き上げ交渉をする例もあるという。国際通り商店街振興組合連合会の石坂彰啓事務局長は「店舗が時給に頭を悩ませるレベルの問題ではない」とも語っている。
 
こうした傾向は待てばそのうち回復するという意識では危うい。経営を維持していくためには、デジタルを導入した合理化のもとで、必要分の人材を補っていくという両輪の計画が必要だろう。
 
*3 「沖縄の人手不足 破格の時給2000円でも集まらない 国際通りの飲食店で深刻化 『時給で頭悩ませるレベルじゃない』」沖縄タイムス
 

 

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