「魚民」もつ鍋への虫混入をきっかけに考えたい、事故防止と発生時の正しい対応
モンテローザ傘下の居酒屋チェーン「魚民」を利用した客が、「もつ鍋に大量の虫が入っていた」とSNSに投稿し炎上状態となった。モンテローザはメディアの取材に対して事実を認め、「白菜の洗浄不足でアブラムシのような虫が多数混入した」と説明、謝罪しているが、飲食店の時短解除直後の出来事だけに、今後の営業に与える影響は大きいだろう。
店側が事実を積極公表しなくても、今はSNSで瞬く間に全国に知れ渡る時代だ。このような事態を招いてしまったとき、飲食店としてはどう対応すべきだろうか。
画像拡散が持つインパクト
ことの発端は11月16日未明、Twitter上に「もつ鍋に虫が入っていた」投稿があったことだ。数万件のリツイートがあり、炎上状態となった。
もつ鍋の取り皿に数十以上もの虫のようなものが浮かぶ画像とともに、「もつ鍋頼んだら、1000匹くらい虫が入ってた…」「他の料理にも虫入ってて気持ち悪すぎる」「半分くらい食べちゃいました…」などと投稿されていた。同時に、ツイートは都内の「魚民」だということも明かしている。
このツイートが瞬く間に広まったのは、画像のインパクトである。人によっては、画像だけで吐き気を催してもおかしくない。文字だけで「虫が入っていた」と伝えられるよりもユーザーに与える衝撃は大きい。圧倒的な破壊力を持ってしまうとも言える。
真の問題はその後
もちろん飲食店としては、異物や虫の混入はあってはならないことと考えるのが前提だ。しかし今回は、その後の店員の対応にも焦点が当てられている。店員に虫の混入を指摘したところ、「店員さんの態度も信じられなくて、割引にしておきますねって言われた」という。
居合わせたとみられる他のユーザーによると、デザートのサービスを提案されたが同じ厨房で作られるものであるため断ったこと、そして最終的には全額無料になった、と投稿されている。
店長不在であったという旨も投稿されていた。この店員の態度が「不適切」としてさらにツイート炎上を加速させたことは想像に難くない。
その後、当該店舗には保健所が立ち入り検査を実施した。その結果について、モンテローザは毎日新聞の取材に対し「調理場内の衛生状態への問題の指摘はありませんでしたが、白菜に付着していたアブラムシのような虫をきちんと取り除かない洗浄不足が原因ではないかとの見解がありました」と説明している*1。
「二次不祥事」という考え方
一連の対応が良いものであったかについては疑問が残る。特に近年、不祥事が起きた後の対応について「二次不祥事」という考え方がある。
過去には、料理の原材料の産地を偽る「産地偽装」が相次いで話題になった。2013年にはホテルのレストランでメニューと違う産地の食材が使われていた事件について、大手ホテル・旅館チェーンでも同様の問題をめぐって、いずれも社長辞任に追い込まれたケースがある。
「騙すつもりはなかった」「担当者の認識不足だった」と釈明している。しかし産地偽装という最初の不祥事に続き、全ての事実を公表しなかったという対応の悪さで、消費者からより強く疑いの目を持たれるようになってしまったのである。
こうした対応の悪さで企業イメージを大きく下げてしまうことを「二次不祥事」という。場合によっては、二次不祥事のほうが大きな騒動になってしまう。特定の店舗だけでなく、全社的な信頼を失ってしまうからだ。
そもそも法律を守っている会社かどうか?過去にも同様のことを繰り返していたのではないか?というところまで、会社そのものが批判の対象になってしまうのである。
SNS時代の不祥事への対応
SNS時代では、今回の「魚民」がその典型であるように、不祥事がその日のうちに全国に拡散されてしまう。経営者が事実を把握するよりもはるかに早いスピードだ。
この時代でまず重要なのは、情報共有の体制とスピード感である。不祥事が起きてしまったとき、「上にばれないように」となってしまう従業員教育をしてしまうと、事実の把握が遅れ、二次不祥事を招くことになってしまう。
そして、情報の積極的な開示である。実は、顧客目線に立てば当然のことである。ある店舗で衛生上の問題が発生したとき、自主的に翌日の営業を見合わせるなどの対応を先送りで取るほうが良いだろう。顧客にとってはそのほうが好感を持てるだろう。
食品メーカーの「自主回収」がその好例である。一時的な負担にはなるものの、営業再開をしやすい、会社としての信頼を損なわないほうが重要だ。
人間が提供するサービスである限り、100%は存在しない。肝心なのはミスをした「その後」である。従業員からの迅速な報告や、場合によっては内部通報をしやすい環境作りも必要だ。
*1 「魚民が謝罪 『もつ鍋に大量の虫混入』とツイッターで拡散」
毎日新聞 2021年11月17日
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