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「30代女性」をターゲットにして、坪月商100万円を売り上げる「おでん屋」の秘訣とは

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第八十七弾

 
飲食店の「ターゲットが、30代女性」と聞いて、どのような印象を抱くであろうか。率直に言って、「ちょっとセンスが古くないか」と思っていないか。「いまの時代、顧客は、もっと多様化しているから」と。
 
今回は、この「ターゲットが、30代女性」を掲げて、爆発的にヒットして、店舗展開を行なっている「おでん屋」のことを紹介する。「おでん屋」と聞けば、中高年の集まる居酒屋をイメージしてはいないだろうか。このお店はあくまで「30代女性」なのである。
 
店名は「O’denbarうまみ」(以下、おでんバーうまみ)。2021年2月に創業店舗を横浜・関内にオープンして、以来、表参道、代官山、赤坂、麻布十番、新橋、仙台(FC)、三軒茶屋と8店舗を展開している。
 
お店の特徴は、10坪以下ないし15坪程度までと狭小物件で、路面店もあるが、地下1階や空中店舗も存在する。そして、ランチタイムから営業している。ディナー帯はほとんど予約で満席。webで同店を紹介する記事では、「坪月商70万~100万円」と繁盛店揃いとのことだ。
 
平日19時の新橋店の様子。小さなビルの5階にあって予約で満席となっている【平日19時の新橋店の様子。小さなビルの5階にあって予約で満席となっている】
 

独立の道が「日本の出汁文化」にたどり着く

「おでんバーうまみ」を経営するのは、株式会社WAS(本社/東京都港区、代表/宇野優司)。前述の通り、コロナ真っ盛りのときに会社を立ち上げている。
 
同社代表の宇野優司氏(34歳)は、高校生当時から「将来は経営者になりたい」と夢を描いていた。大学卒業後、株式会社グロブリッジに入社。同社は、飲食業の直営店を展開しながら、飲食店の集客支援などを行っていた。宇野氏としては、同社の事業内容が、自身にとって将来のキャリア形成に役立つと考えていたという。そして、新事業であるオーストラリアの飲食店展開を担当しマネージャーも勤めた。
 
その後、宇野氏は「グローバル」「IT」の知見を深めようと、アメリカ本社のデル・テクノロジーズ株式会社に入社、大手法人営業を担当し1年間勤務した。
 
このとき宇野氏は28歳になっていた。「起業するタイミングを感じていた」という。宇野氏は、これまでの人生を振り返って、「自分は、何が出来るのか?」と自問自答した。
 
そこでたどり着いたのは「飲食の道」。学生時代、宇野氏は「栄養学」を勉強していた。アルバイトをした飲食店で、「調理師」の免許を取得した。そして、外食企業で学んだことも踏まえて、これらの経験を「起業」につなげていきたいと考えた。宇野氏は、このように語る。
 
「私が考える『起業』とは、『世界で事業を行う会社』ということでした。では、世界に通用する、自分にとっての『食の素養』とは何だろうか、と。そこで、『日本人であること』『日本の食文化』ということを突き詰めていったところ、『出汁の文化』に行きつきました。
 
「グローバルで認知されている日本の外食は『ラーメン』『すし』ですね。では、日本で十分に通用していながら、グローバルにないものとは何だろうか、と。そこで『おでん』が浮かんだのです。そこで、日本における「王道のおでん」をグローバルに広げていこうと考えました。会社名の『WAS』も、『わびさび』が由来です」
 
2013年12月、「和食:日本の伝統的な食文化」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されたことから「出汁」がひらめいたという【2013年12月、「和食:日本の伝統的な食文化」が、ユネスコの無形文化遺産に登録されたことから「出汁」がひらめいたという】
 

コンセプトをロジカルに組み立てて繁盛店を展開

宇野氏が考えた「おでん屋」のコンセプトを、以下に紹介しよう。宇野氏の考え方は、とてもロジカルなので、ここでは箇条書きにした。
 
・ターゲットは「30代女性」。
・店舗は7坪から十数坪と小型で、必ずバーカウンターがあり、地下1階や空中階でも賑わっている。「隠れ家」のイメージ。不便な場所でもwebで集客する。
・客単価は4000円から5000円。「30代女性」が日常的に使える金額。
 
宇野氏は、これらを確認してから、10坪以下の物件を探すようになった。
その理由は、こうだ。
 
・ワンオペで店舗を回すことができる。
・居抜き物件が基本で、追加投資はほぼやらない。施工期間も短くて済む。ただし、カウンターのない物件には、必ずカウンターを設ける。それは、「30代女性」がやってくる「おでんバー」だから。
・表参道、代官山、赤坂、麻布十番、三軒茶屋という地名も、「30代女性」をターゲットにしているから。
 
このような「おでん屋」の立地を探す上で、日ごろ心掛けていることはこのようなことだ。
 
「1つ目は、オフィス街としての需要がしっかりとある。つまり『働いている人』が、その街に存在しているということ。2つ目は、『わざわざ飲みに行く』という、いわゆる繁華街的な要素を持っている。3つ目は、背景に住宅地があって、居住者がそれなりに存在している。これによって、デリバリー需要も満たすことが出来る」
 
宇野氏は、これまで展開してきた8店舗は、「概ねこれらをクリアしている」という。このような町で働く女性が、「行ってみたいおでん屋さんが出来た」とか。その町に憧れて、例えば、「代官山にあるおでん屋さんに行く」とか。このような「30代女性」のシーンを容易に思い描くことが出来る。
 
「おでんバーうまみ」にとって、カウンター席は必須の造作となっている【「おでんバーうまみ」にとって、カウンター席は必須の造作となっている】
 

ローコストの仕組みでグローバル1000店舗を標榜

「おでんバーうまみ」はランチタイムも営業する。それは、前述のような町で、このような業態を成立させるための重要なポイントとなっている。
 
一般的に、居酒屋がランチ営業を行うことについては「議論」が生じる。それは、生産性が低い、従業員が疲弊する、等々。しかしながら「おでん屋」の場合、ランチ営業はさほど頑張る必要がない。空中階にお店があることで、ランチ難民が訪れる。それが、居酒屋の営業につながるという。
 
「われわれの仕込みとは、基本的に放っておくことが出来るのです。例えば、角煮が『煮込まれる』、牛筋が『煮込まれる』ということですね。おでんの出汁は、前日から昆布を漬けておいて、朝出勤したタイミングで火にかければいい。ですから『ランチ集客』ということを一生懸命にやらなくてもいいのです」
 
旬の食材を使用した、酒に合う一品料理を多数ラインアップして、顧客を飽きさせない【旬の食材を使用した、酒に合う一品料理を多数ラインアップして、顧客を飽きさせない】
 
「そこで、ビルの路面にランチメニューの看板を出しておいて、それを見たランチ難民の人が、「お手ごろ価格」ということで、ふらっと店に入ってご利用してくださる。ここでおいしくいただいた記憶によって、ディナーにつながる。このようなパターンが結構ありますね」
 
ここまで「ターゲット30代女性」の「おでん屋」述べてきたが、とてもロジカルなコンセプトを理解していただけたと思う。
 
「おでんバーうまみ」は、これからFC主力で展開していくという。海外展開では、オーストラリアに現地法人を設立して、この4月9日シドニーに海外1号店をオープンした。
そして、「グローバル1000店舗」という構想を描いている。筆者は、これは実現するのではないかと思えてならない。
 
日本の貴重な「出汁文化」によって、グローバル1000店舗に挑戦する【日本の貴重な「出汁文化」によって、グローバル1000店舗に挑戦する】
 

 
千葉哲幸(ちば てつゆき)
フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。
 

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