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キャッシュレス決済会社が倒産したら飲食店はどうなる?売上金への影響と加盟店の対策

クレジットカードやQRコード決済、電子マネーなど、今やキャッシュレス決済は飲食店にとって身近な存在です。
これから飲食店を開業する人の中にも、「どのキャッシュレス決済サービスを導入するか」を開業準備のひとつとして検討している人は多いでしょう。実際、決済手数料や導入費用、対応ブランドなどを比較しながらサービスを選ぶのが一般的です。
一方で、意外と見落とされやすいのが「決済サービスを提供する会社そのものが倒産・サービス停止するリスク」です。
2026年7月6日には、クレジットカードの早期決済代行事業などを手がける株式会社全東信が大阪地方裁判所に破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けました。長年にわたり事業を展開してきた決済関連企業の経営破綻は、キャッシュレス決済を利用する店舗にとって決して他人事ではありません。
飲食店にとってキャッシュレス決済は、単なる「支払い方法」ではなく、売上と資金繰りを支える重要なインフラです。
もし利用している決済会社が突然倒産したら、カード決済は使えるのでしょうか。すでに決済済みの売上金は入金されるのでしょうか。また、営業中に突然サービスが停止した場合、店舗はどう対応すればよいのでしょうか。
本記事では、決済会社の倒産やサービス停止によって飲食店に起こり得る影響と、加盟店が最初に確認すべきこと、未入金売上への対応について解説します。
さらに、これから飲食店を開業する人に向けて、キャッシュレス決済会社を選ぶ際に確認しておきたいポイントも紹介します。
目次
◆キャッシュレス決済会社が倒産すると飲食店はどうなる?
まず理解しておきたいのは、「決済会社が倒産したら、すべての店舗で同じことが起こる」わけではないという点です。
キャッシュレス決済には、国際ブランド、カード会社、決済代行会社、加盟店、端末提供会社など、複数の事業者が関わっています。店舗によって契約形態も異なるため、ある会社が経営破綻しても決済を継続できるケースがある一方、端末やサービスが利用できなくなるケースも考えられます。
そのため、実際に問題が発生した際には、自店の契約内容や関係各社からの公式発表を確認する必要があります。
そのうえで、飲食店への主な影響としては、次のようなものが考えられます。
◇キャッシュレス決済が利用できなくなる
最も直接的な影響は、クレジットカードや電子マネーなどの決済が利用できなくなることです。
店舗では通常通り営業していても、会計時になって初めて「カードが通らない」「決済画面が立ち上がらない」と気づく可能性があります。
特に、ディナー営業中や週末などの繁忙時間帯に発生すると、現場は混乱します。現金を持っていないお客様への対応も必要になり、会計待ちやクレームにつながる恐れもあるでしょう。
近年は財布を持たず、スマートフォンやクレジットカードだけで来店するお客様も珍しくありません。「現金でお願いします」と伝えても、その場で支払えないケースも想定しておく必要があります。
◇決済済みの売上金が入金されない可能性がある
より深刻なのが、すでにお客様の決済は完了しているにもかかわらず、その売上金が店舗へ入金されていないケースです。
キャッシュレス決済では、お客様が支払った日と、店舗の銀行口座へ売上金が振り込まれる日が同じとは限りません。契約しているサービスの入金サイクルによっては、一定期間分の売上が未入金の状態になります。
例えば、月商300万円の店舗でキャッシュレス比率が50%だった場合、単純計算では月150万円がキャッシュレス経由の売上です。実際の未入金額は入金サイクルによって異なりますが、決済会社の破綻が資金繰りに直結する可能性は十分にあります。
家賃、食材費、人件費、借入金の返済など、飲食店では毎月多くの支払いが発生します。入金予定だった売上が突然入らなければ、利益が出ている店舗であっても支払いが困難になります。
◇店舗オペレーションにも影響が出る
影響は売上金だけではありません。
キャッシュレス決済が停止すれば、スタッフへの周知、店頭やレジ前の案内、予約客への説明、SNSやホームページの更新なども必要になります。
また、POSレジやモバイルオーダーと決済サービスを連携している店舗では、会計の流れ全体に影響が及ぶ可能性もあります。
つまり、決済会社の倒産やサービス停止は、「カードが使えなくなるだけの問題」ではなく、店舗オペレーションそのものに影響する可能性があるのです。
◆決済会社の倒産・サービス停止時に加盟店が最初に確認すべきこと
決済会社の倒産やサービス停止を知った際、重要なのは「とりあえず様子を見る」のではなく、自店への影響をできるだけ早く把握することです。
ここでは、加盟店が優先して確認したい項目を紹介します。
1.現在も決済できるか確認する
まずは、決済端末やシステムが正常に利用できるかを確認します。
ただし、一度決済できたからといって、その後も継続して利用できるとは限りませんし、売上が未回収になるリスクも考慮しなくてはいけません。公式サイト、加盟店向け管理画面、登録メール、決済ブランドや関係各会社からの案内なども確認しましょう。
店舗スタッフにも状況を共有し、「決済できない場合は誰に報告するか」「お客様にはどう説明するか」を決めておくことが大切です。
2.未入金の売上金を確認する
次に確認したいのが、「現在、いくらの売上が未入金なのか」です。
加盟店管理画面やPOSデータ、売上明細、銀行口座への入金履歴などを照合し、少なくとも以下の内容を整理しましょう。
・決済済みの売上総額
・すでに入金された金額
・今後入金予定の金額
・本来の入金予定日
・決済手段別の売上額
経営者としてまず把握したいのは、「最大でいくら影響を受ける可能性があるのか」です。
筆者自身も飲食店を経営していますが、日々の営業ではどうしても売上や原価、人件費に意識が向きがちです。一方で、「決済済みだが、まだ口座に入っていない売上がいくらあるか」まで常に把握できている経営者は、それほど多くないのではないでしょうか。
今回のような事態を考えると、未入金残高を定期的に確認することも、飲食店の資金管理の大切な業務だと痛感します。
3.自店の契約先を確認する
意外に見落とされやすいのが、「自店は誰と契約しているのか」という点です。
決済端末に表示されているブランド名、営業担当者の会社、実際の契約主体、売上金の振込元が一致しているとは限りません。
グルメサイトやPOSレジ事業者、通信会社など、何かのキャンペーン絡みで契約していたり、複数の代理店事業者が決済の仕組みに関わっているケースもあります。
契約書や加盟店規約、入金明細を確認し、自店とどの会社の間に契約関係があるのかを整理しましょう。
4.売上データや契約書を保存する
サービス停止後は、加盟店向け管理画面にアクセスできなくなる可能性も考えられます。
そのため、売上明細、入金予定、取引履歴、契約書、規約、事業者から届いたメールなど、必要な資料は早めに保存しておくと安心です。
特に未入金額が大きい場合は、「いつ、いくら決済されたのか」を確認できる資料が重要になる可能性があります。
管理画面のデータは、CSVやPDFでダウンロードできる場合があります。ダウンロード機能がない場合でも、必要な情報を確認できる範囲で保存しておきましょう。
5.代替決済手段を確保する
既存サービスの復旧や今後の方針を待つだけでは、営業への影響が長引く可能性があります。
別の決済サービスをすでに契約している場合は、すぐに利用できる状態か確認します。代替手段がなければ、新たなサービスへの申し込みも検討しましょう。
ただし、申し込み当日にすべての決済手段が使えるとは限りません。加盟店審査や端末配送に時間がかかる場合もあります。
「問題が解決するまで待つ」のか、「並行して代替サービスを準備する」のか。営業への影響を考えながら、早めに判断することが重要です。
◆未入金の売上金は回収できるのか?
決済会社が破産した場合、飲食店経営者が最も気になるのは「まだ振り込まれていない売上金は戻ってくるのか」という点でしょう。
結論からいえば、これは契約関係や資金管理の方法、破産手続の状況などによって異なります。
未入金額が店舗へ支払われるケースも考えられる一方、加盟店側が破産手続の中で債権者として扱われる可能性もあります。その場合、最終的な回収額や時期は手続きの状況などに左右され、満額回収できるとは限りません。
そのため、「お客様のカード決済は完了しているのだから、店舗には当然全額入るはず」と自己判断するのは避けたほうがよいでしょう。
未入金額が大きい場合は、まず契約書や加盟店規約を確認し、破産管財人や関係事業者からの案内に従うことが重要です。必要に応じて、弁護士などの専門家への相談も検討しましょう。
また、問い合わせが殺到し、電話だけに頼らず、公式サイトや書面、メールなどの案内を確認し、記録を残しておくことも大切です。
なお、破産時の売上金の扱いは個別の契約や事実関係によって異なります。自店の状況について判断が必要な場合は、専門家へ相談してください。
◆キャッシュレス決済の停止は店舗営業にどう影響する?
決済サービスの停止は、単に「支払い方法がひとつ減る」という問題ではありません。
特に影響を受けやすいのが、キャッシュレス比率の高い店舗です。
例えば、インバウンド客が多い店舗、ビジネス街の店舗、客単価の高いレストランなどでは、クレジットカードが使えないこと自体が来店や注文のハードルになる可能性があります。
宴会やコース料理など高額会計が多い店舗も注意が必要です。1万円程度であれば現金で支払えるお客様でも、数万円、十数万円の会計になると、キャッシュレス決済が使えないことの影響は大きくなります。
また、現場スタッフへの情報共有も重要です。
お客様から「なぜカードが使えないのか」と聞かれた際に、スタッフごとに説明が異なると不信感につながります。「現在、決済サービスの都合により一時的に利用できません」など、統一した案内を準備しておくとよいでしょう。
さらに、現金のみで営業する場合はレジの釣り銭不足にも注意が必要です。普段キャッシュレス比率が高い店舗ほど、現金対応の準備が少ないケースがあります。
決済停止時には、次のような対応を同時に進める必要があります。
・店頭やレジ前で利用可能な決済手段を案内する
・スタッフ全員に説明方法を共有する
・レジの釣り銭を確保する
・予約時点でお伝えする、既に予約されている客へ案内する
・ホームページやSNSの情報を更新する
・代替決済サービスを準備する
経営者だけが状況を把握するのではなく、店舗全体で対応できる体制を整えることが重要です。
◆これから飲食店を開業する人が決済会社を選ぶ際のポイント
これから飲食店を開業する人にとって、キャッシュレス決済会社の選定は重要な準備のひとつです。
開業時は、物件取得費、内装工事、厨房機器、仕入れ、採用など多くの費用がかかります。そのため、決済サービスについても「初期費用が安いか」「端末代が無料か」「手数料が何%か」といった点に目が向きやすいでしょう。
もちろんコストは重要です。しかし、長く店舗を経営することを考えれば、それだけで決めるのはおすすめできません。
◇運営会社と契約主体を確認する
まず確認したいのは、「誰がサービスを運営し、自店は誰と契約するのか」です。
知名度のあるカードブランドに対応しているからといって、そのブランド企業と店舗が直接契約しているとは限りません。
また、運営会社の会社概要や事業実績、契約主体などを確認しましょう。Q Rコード決済を含めたキャッシュレス会社は新興企業が多く、統廃合も進んでおり複雑です。
特に営業代理店から提案を受けた場合は、「この会社と契約するのか」「売上金はどこから振り込まれるのか」まで確認しておくことが大切です。
◇決済手数料だけで選ばない
開業前は少しでも固定費や経費を抑えたいものです。そのため、0.1%、0.2%の手数料差が気になる人も多いでしょう。
しかし、決済サービスは売上金の回収に関わる重要なインフラです。
手数料だけでなく、
・運営会社(親会社なども確認)
・契約主体
・入金サイクル
・対応ブランド
・サポート体制
・解約条件
・トラブル時の対応
などを総合的に比較することが大切です。
例えば、月商300万円でキャッシュレス売上が150万円の場合、手数料率の差が0.1%なら単純計算で月1,500円の差です。
もちろん長期的にはコスト差になりますが、その金額だけでサービスを決めるのではなく、上記の項目も含めて総合的に判断する視点を持ちましょう。
◇入金サイクルを確認する
入金サイクルは資金繰りだけでなく、未入金リスクにも関係します。
例えば、売上金が短いサイクルで入金される仕組みであれば、常時滞留する未入金額を抑えやすくなります。一方、入金回数が少ない場合は、タイミングによって未入金残高が大きくなる可能性があります。
開業直後の飲食店は、想定以上に資金繰りが厳しくなることも珍しくありません。
食材の仕入れは先に発生し、給与や家賃の支払日も待ってはくれません。その一方で、キャッシュレス売上は後日入金となります。
「月何回入金されるか」「締め日から何日後に振り込まれるか」は、開業前に必ず確認しておきたいポイントです。
◇障害・サービス停止時のサポート体制を見る
飲食店の営業は、夜間や土日祝日にも行われます。
平日昼間しか問い合わせできないサービスでは、金曜夜にトラブルが起きた際、すぐに相談できない可能性があります。
電話窓口の有無、対応時間、緊急時の連絡方法なども確認しましょう。
開業者にとっては、通常時の使いやすさだけでなく、「困ったときに誰へ連絡できるか」も重要な比較ポイントです。
◆飲食店が平時からできる4つのリスク対策
決済会社の経営状態を、加盟店側が完全に把握することは困難です。
だからこそ、「絶対に倒産しない会社を探す」よりも、万が一の際に被害を小さくする仕組みを作ることが現実的です。
1.決済手段を一社に依存しすぎない
最も分かりやすい対策は、決済インフラを一社に集中させすぎないことです。
もちろん、複数サービスの導入には端末管理や経理処理の負担があります。そのため、すべての店舗が何社ものサービスと契約すべきという話ではありません。
ただし、売上の大半を一社経由にしている場合、そのサービスが停止した際の影響は大きくなります。
店舗規模やキャッシュレス比率に応じて、メインとサブを分けるなどの方法を検討してもよいでしょう。
2.未入金残高を定期的に把握する
「今、決済会社経由でいくらの売上が未入金なのか」を把握する習慣も重要です。
月末にまとめて確認するだけでなく、定期的に売上と入金を照合しましょう。
特に複数店舗を運営している場合、各店舗では小さな金額に見えても、会社全体では未入金額が大きくなることがあります。
また、入金予定日に振り込みがない場合、早い段階で気づける体制を作ることも重要です。
3.入金サイクルの短いサービスを検討する
手数料が同程度であれば、入金サイクルも比較材料になります。
入金が早ければ資金繰りが改善しやすいだけでなく、未入金の状態にある売上を抑えることにもつながります。
これは既存店だけでなく、運転資金に余裕が少ない開業初期の店舗ほど意識したいポイントです。
4.緊急時の対応を決めておく
「カードが突然使えなくなったらどうするか」を事前に決めておくだけでも、現場の混乱は減らせます。
例えば、
・お客様への案内文
・スタッフの報告ルート
・代替決済手段
・釣り銭の確保
・SNSでの告知担当者
などです。
筆者も飲食店を経営していますが、店舗運営では想定外のトラブルが突然起こります。厨房機器の故障、停電、予約システムの不具合などと同じように、決済トラブルも「起きてから考える」のではなく、最低限の対応だけでも事前に決めておくことが重要だと感じます。
特に営業中のトラブルでは、経営者が現場にいないこともあります。店長やアルバイトスタッフでも初動対応ができるよう、簡単なルールを共有しておくと安心です。
◆まとめ
キャッシュレス決済は、飲食店にとって便利なサービスであると同時に、売上と資金繰りを支える重要なインフラです。
そのため、決済会社の倒産や突然のサービス停止は、「カードが使えなくなる」だけでは済みません。未入金売上、店舗オペレーション、お客様対応、資金繰りなど、経営全体に影響する可能性があります。
重要なのは、問題が起きてから慌てるのではなく、平時から自店の契約関係や入金サイクル、未入金残高を把握しておくことです。
また、これから飲食店を開業する人は、決済手数料や端末費用、一見お得なキャンペーンなどで、サービスを選ぶのではなく、運営会社、契約主体、入金サイクル、サポート体制なども確認しましょう。
キャッシュレス決済は、導入して終わりではありません。
「売上金がどのような流れで自店に入るのか」「もしサービスが止まったらどうするのか」まで考えておくことが、これからの飲食店経営におけるリスク管理のひとつといえるでしょう。
【参考資料】
・東京商工リサーチ「(株)全東信」
・株式会社全東信 公式サイト
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川瀬 亮太
飲食店開業応援マガジン「RESTA」編集者。店舗プロデュースやブランディング、飲食店の開業・営業支援などを行うROOTage株式会社 代表取締役。主に小規模飲食店の支援を行いがなら、取材・執筆も行う。現場経営者との交流を通じて、実践的なノウハウを発信している。
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