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秋の全国火災予防運動週間~飲食店での火災には特徴がある~

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11月9日から、秋の全国火災予防運動週間が始まる。これから冬場にかけて、空気の乾燥による火災の発生や大規模化のリスクが増してくることもあり、より注意が必要な時期となる。飲食店を出火元とする火災とその傾向、予防について紹介したい。
 

秋〜冬は火災が増える

東京消防庁の管轄内では、去年の下半期の住宅出火状況は下のようになっている(図1)。
 

 
図1 季節別住宅火災被害状況(令和2年下半期)
(出所:東京消防庁「令和3年秋の火災予防運動」)
 
11〜12月の冬場にかけて火災件数が増えていることがわかる。火を扱うことが多い飲食店の場合はより注意が必要だ。
 
飲食店の秋〜冬の火災の事例としては、新潟県糸魚川市で平成28年12月に起きた大規模火災を覚えている人も多いことだろう。市街地では40年ぶりの大規模となったこの火災は、ラーメン店が出火元となった。
 
糸魚川市は普段、特別に強風の日が多い地域というわけではない。しかし当日は新潟地方気象台が強風注意報を発表していた。強風による飛び火もあり、消火にかかった時間は約30時間、147棟を焼く大惨事となった(図2、3)。
 

 
図2、3 糸魚川市大規模火災の様子
(出所:「平成29年版 消防白書」総務省消防庁)
 

飲食店火災の原因で最も多いのは?

さて、この糸魚川での火災の出火原因は「大型こんろの消し忘れ」だった*1。
 
実は、総務省消防庁の統計によると、飲食店での出火原因で最も多いのが「こんろ」である。全体の4割近くを占めている(2009年〜2018年、図5)。
 

 
図5 飲食店の出火原因
(出所:「飲食店におけるこんろ火災の実態について」総務省消防庁 p1)
 
また、そのうちの6割がこんろを放置していたなど、その場を離れている間に出火している(図6)。
 

 
図6 出火したこんろの状況
(出所:「飲食店におけるこんろ火災の実態について」総務省消防庁 p1)
 
また、飲食店でのこんろ火災は、初期消火が難しいとも消防庁は指摘している。これらを踏まえ、対策を見ていこう。
 

飲食店での「こんろ火災」の防止法

まず、消防庁が示しているこんろ火災の経過と対策は以下のようなものである(図7)。
 

 
図7 こんろ火災の経過と対策
(出所:「小規模飲食店に設ける厨房用自動消火装置等のあり方に関する検討部会 報告書」総務省消防庁 p6)
 
油の加熱や周囲の可燃物といった想像しやすいものだけでなく、ダクトなどに油に引火するというケースには特に注意したい。
 

人手不足時にはさらなる注意を

季節的に火災が大規模化しやすい状況となっているだけでなく、今年はコロナ禍という特殊要因があることにも注意したい。
 
非常事態宣言が解除され多くの飲食店が通常営業に復帰していることだろうが、忘年会のシーズンがまもなく到来する。
 
じゅうぶんな人手を確保できていない飲食店の場合、接客に気を取られてしまい厨房に目を配る人員が欠けてしまう可能性は大いにある。アルバイトに多くの仕事を任せている場合は、業務の割り振りとして「火元確認を第一にする人員」をつけることも防火のひとつの手立てである。特にスープの煮出しや煮込みといった調理には時間がかかるため「ながら」業務をしがちだが、気の緩みのないように防災につとめていきたい。
 
*1 「平成29年版 消防白書」総務省消防庁
 

 

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