繁盛店への道

接客コンサルタント井崎正吾氏に聞く、繁盛店の接客の極意 第二回「接客リーダーの大切さ」

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東京には約8万件以上のレストランがある。その中にもお客様に選ばれる店と選ばれない店の違いは大きい。
味のクオリティが大切なのはもちろんだが、ここ近年一層注目されているのが接客だ。人口減少に伴い、飲食業に従事するスタッフを探すのが大変だという話はあちらこちらから耳にする。しかし、接客の素晴らしいお店には質のよいスタッフが集まっているように思う。

今回、その接客についてのコンサルタントとして様々なレストランを教育している、「Solid Foundation Japan」の井崎正吾氏に話を伺った。3回の連載としてお伝えしていく。聞き手は、編集責任者の川瀬亮太氏(ルーテージ株式会社)
 

 

第二回「接客リーダーの大切さ」

―(川瀬氏)よく外部コンサルの方に反発がおきるなんて声もよく聞きますが。接客コンセプトを伝える上で井崎さんが大切にしていることとはどんなことでしょうか。
(井崎氏)本部から依頼をされる場合、現場のスタッフは、自分達のやり方が正しいと思っているため当然反発を起こしますよね。実際にそのようなシーンは経験済みです。
しかし、丁寧に接客についての知識を伝え、ロールプレイングでの体験を経て、実践につなげていくという方法で進めていくとスムーズに受け入れていただけるようになるのです。実は、飲食業界は、サービスというものに関して独学で学んでいる方が多いので、接客の裏付けや、心理的な知識を得ると、今までのサービスに一層自信がつくのでしょう。みるみると顔つきが変わっていくスタッフをみると嬉しくなりますね。
 
―なるほど。確かに、多くの飲食店ではサービスについての教育体験は薄いように感じます。そのような機会に触れることで、スイッチが入っていくんですね。
(井崎氏)はい、しかしいきなり全員にスイッチを入れ、徹底を図るというのは難しいので、まずは店舗内にリーダーを作りたいと思います。マネージャーがリーダーになるのが一番ですが、マネージャーがいないお店もありますよね。料理長の他は、アルバイトで回しているようなお店も。
そんなときには、アルバイトの中でもリーダーの素質がある人材を見極めて、まずその人材に積極的に接客コンセプトを理解してもらうことを大切にしています。
接客 井崎氏
 
―そのような人材を見極めるポイントなどを教えていただけますか?
(井崎氏)そうですね、例えばですが、「コーヒーを提供するとき、何に気を配りますか」という質問に対し、3つのみ回答をするスタッフもいれば、20のことを答えるスタッフもいるんですね。そうなってくると、結果的に自分の手元作業のことだけではなく、周囲をも気にかけることが出来ている人材かどうかという点が明確になってきますよね。
 
―とても具体的ですね!確かにそのようにサービスに対する意識が高いスタッフは伸びていくに違いありません。
(井崎氏)まずはこのようにリーダーにふさわしいと思う方を中心に接客コンセプトを一緒に共感していく作業をはじめます。「この対応はありだけど、この対応は良くない」というお店のサービスの物差しを一緒になって作っていくんです。そうすると、リーダーは自分が納得したうえで、他のスタッフにもわかりやすく説明をしてくれるようになります。そしてスタッフの51%にお店の接客コンセプトが浸透したとき、お店のエネルギーはプラスの方向へ自然と向かっていくようになりますね。
 
―まずは、接客リーダーがとても大切な役割を果たすんですね。
(井崎氏)はい、ところが接客リーダーを作るだけでは、お店全体のサービス向上にはつながりません。そのリーダーが、スタッフ一人ひとりに対し、「気にかけてあげること」「認めてあげること」も大切なことだと実感しています。
日本のサービス業は欧米のチップ制度とことなり、個人評価があまり明確になることがありませんよね。そんな中で、モチベーションを保つということはとても難しい。中には、「頑張っても頑張らなくても、誰も見ていないし、給料も変わらないし」と考えているスタッフがいても不思議ではないとも思います。そのため、私が現場に入る際は「体調はどう?」「さっきのお声がけ良かったね」など、常にスタッフに対し、「見ている」というアプローチを欠かさないようにしていますね。
 
―それだけで、モチベ―ションはかなり違ってきますね。
(井崎氏)実際に、どうしても遅刻癖のあるスタッフがいたのですが、ただ「遅刻するな」と叱っただけでは、治りません。「何時に目覚ましをかけているの?」「何個目覚ましをかけている?」とのコミュニケーションから始め、「どうしたら遅刻しないと思う?」という自分で考えるところまで持っていきました。そうすると、遅刻はぴたりと止まりました。結局、自分自身で出した結論をしっかり守っていくんです。
 
―そこまで、親身になって寄り添っていかれるんですね。
(井崎氏)もちろんです。人材難が深刻化している日本で、「良い人材に育ってもらいたい」「良い人材に集まってもらいたい」と、ただ願っているだけでは決して実現しないと思います。きちんとスタッフと向き合い教育し、そして人材が育つことで、企業価値が高まり、優秀な人材が集まるのではないでしょうか。もちろん、サービスの教育の他、ソムリエや業務にまつわる資格補助制度があったり、売り上げに貢献したスタッフは海外研修へのチャンスがあるといった飲食企業は、働く職場として魅力的ですよね。
ただ、モノを運ぶだけであれば、ロボットで十分ですよね。しかし、サービスというコミュニケーションは人だからこその武器だと思うんです。
接客 川瀬氏
 

最終回「コミュニケーションが何より大切」→

 

井崎 正吾 経歴

1994年 パークハイアット東京「New York Grill&Bar」開業メンバーとして、サービスに従事する。その後、飲食企業の立ち上げ、営業本部長、代表取締役も歴任。
2008年には「Solid Foundation Japan」を立ち上げる。
2015年 カフェ・カンパニー株式会社 取締役クオリティ本部長に就任。
2018年より「Solid Foundation Japan」の活動を再始動。
日本ホスピタリティ推進協会教育機構認定「ホスピタリティ・コーディネーター」取得
国内外、異業種異業態の飲食店舗200店舗に携わる。
 
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 
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