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内装工事の耐用年数って?確定申告に向けて知っておきたい減価償却のポイント

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新規開店に向けてテナントを借り、内装工事を行うという場合はどのような会計処理となるのでしょうか。内装工事費は、開業資金とは別の扱いです。あやふやなままにしておくと、確定申告の際に誤った処理をしてしまい、損をしたり修正の必要が出てきたりする可能性もあります。
 
内装工事には耐用年数という考え方が適用されますが、あまり良くわからないという人も多いようです。ここでは飲食店の内装工事を行ったときに、理解しておきたい耐用年数と減価償却について解説していきます。
 


 

▶内装工事の耐用年数とは?

内装工事では耐用年数という不動産に関する考え方が適用されます。まずは内装工事の耐用年数について基本的な考え方を見ていきましょう。
 

▷耐用年数は不動産に対する寿命

耐用年数はことばのうえでは「使用に耐えうる年数」ですが、会計上では社会的に見たときの価値という意味です。例えば建物の場合では鉄筋コンクリートは47年、木造は22年などと決められており、実際にはまだ住める状態であっても年月とともに資産価値が減っていくという考え方をします。耐用年数は、税法上の資産価値のもととなる期間として定められています。資産の使用可能期間ではありますが、あくまで税法上の基準的な考え方であり実際の建物の寿命というわけではありません。
 

▷内装工事は建物に価値を付加する

内装工事を行うと、建物に対して価値が付加されたと考えます。つまり内装工事をすることで、不動産の資産価値が上がります。
テナントの場合でも、内部造作をひとつの固定資産とし、耐用年数が適用されます。内装工事の科目は「建物」と「建物附属設備」として確定申告の際に振り分ける必要があるため、工事を実施する際には確認しておくことが必要です。また、耐用年数は造作の種類や用途、使用材質などから合理的に判断されるため、似たような内装工事であってもすべてが一律であるというわけではありません。
 

▶飲食店の内装関連の耐用年数

具体的な耐用年数を先に出てきた「建物」と「建物附属設備」、「その他のもの」に分けて確認します。
 

▷建物(飲食店)

建物にもさまざまな種類がありますが、ここでは飲食店舗に関連する耐用年数を見ていきます。建物の耐用年数は以下の通りです。
▷木造・合成樹脂造のもの:20年
▷木骨モルタル造のもの:19年
▷鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造のもの
・延べ面積のうちに占める木造内装部分の面積が30%を超えるもの:34年
・その他のもの:41年
▷れんが造・石造・ブロック造のもの:38年
▷金属造のもの
・4mmを超えるもの:31年
・3 mmを超え、4 mm以下のもの:25年
・3 mm以下のもの:19年
 
参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)
 
建物では主に材質によって耐用年数が変わってきますが、混合の場合には面積の割合によって変わるので注意が必要です。また金属造では、耐久性・堅牢性から年数設定に違いが見られます。
 

▷建物附属設備

建物が構造物そのものを指すのに対して、建物附属設備は家屋に付帯してその効用を高めるものを指します。飲食店舗関連の建物附属設備の耐用年数を見ていきましょう。
▷アーケード・日よけ設備
・主として金属製のもの:15年
・その他のもの:8年
▷店舗簡易装備:3年
▷電気設備 蓄電池電源設備:6年
▷その他のもの:15年
▷給排水・衛生設備、ガス設備:15年
 
店舗簡易装備とは比較的短期間で取り替えられる設備を指します。例としては、ルーバーや壁板、陳列棚、カウンターなどがあります。電気設備には、照明設備も含まれます。
 
参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(建物/建物附属設備)
 

▷その他の器具・備品

飲食店では、数多くの備品があります。参考までにその他の器具や備品についても、耐用年数を紹介しておきましょう。
▷陳列だな、陳列ケース
・冷凍機付・冷蔵機付のもの:6年
・その他のもの:8年
▷冷房用・暖房用機器:6年
▷電気冷蔵庫:6年
▷氷冷蔵庫、冷蔵ストッカー(電気式のものを除く。):4年
▷じゅうたんその他の床用敷物:3年
▷食事・厨房用品
・陶磁器製・ガラス製のもの:2年
・その他のもの:5年
 
参考:【確定申告書等作成コーナー】-耐用年数(器具・備品)(その1)
 
詳細について不明点がある場合にはあいまいなままにせず、税務署に問い合わせるようにしましょう。正しく申告を行うためにも、確認することが大切です。
 

▶内装工事の減価償却

内装工事の各項目に耐用年数が付けられているのは、確定申告の際に経費として計上するためです。内装工事の減価償却について見ていきましょう。
 

▷内装工事費は高額な固定資産として扱われる

内装工事費にかかった費用は固定資産として扱われ、その価値が消滅するまでの分を経費にできます。内装工事によって物件の価値は向上しますが、工事費は高額であるため一括計上ができません。そのため、耐用年数をもとにした計算により、複数年にわたって分割で計上を行います。このようにひとつの資産を毎年の経費として、複数年で計上することを減価償却と呼びます。
 
例えば、内装工事費用として500万円かかった場合、5年で償却すると毎年100万円を支出として計上できます。これにより利益分を減少させられ、税金の軽減に役立ちます。ただし、税金に関わるものであるため計上するにあたっては、決められた耐用年数に従って適切に処理することが求められます。
 

▷減価償却のポイント

基本的には内装工事費を複数年にわたって減価償却するのが普通ですが、申告方式の違いや工事の内容によっては修繕費や消耗品費などとして計上するケースや、分割せずに一括償却できる場合もあります。こうしたイレギュラーな方法は、勝手に選択ができないため、不明点があるときには専門家のアドバイスを受けるようします。先にも述べたように、耐用年数は「建物」「建物附属設備」によって扱いが異なります。項目の仕分けは建物の構造、工事内容を確認しながら行う必要があるため、確認できる仕様書などを準備しておく必要があります。
 
特に「建物附属設備」については、請求書から材料や用途を区分けして資産計上しなければなりません。
減価償却については、事業を行う建物オーナーかテナントの借主かによっても変わります。オーナーである場合には、用途や材質に応じ合理的に判断される耐用年数によって計上することが原則とされています。また特別に届を出していない限り、毎年同じ率で価値が低下する「定額法」で処理を行う必要があります。
 
一方、テナントを借りて事業を行っている場合には、賃借期間を耐用年数とすることも可能です。
また、内装工事費に加え、設備機器類の費用や関連工事費が合算されているというケースも多々あります。この場合には耐用年数の平均値を取ったり、耐用年数が長い方に合わせたりができます。
 
同一内の建物で行われた内装工事については、その造作をすべてまとめて減価償却ができるようになっているため、種類ごとに分けて計上する必要はありません。
いずれにしても正しい耐用年数でない場合には、財務的な詐欺と見なされる恐れもあるため、しっかりと確認しながら適切に計上することが重要です。
 
減価償却の詳細については以下のページも合わせてご確認ください。
 
減価償却とは?飲食店のメリットや計算方法についてご紹介!|RESTA
 

▶内装工事は部位によって計上が違うことを理解しよう

内装工事を行うにあたり、テナントを賃貸する事業者とオーナーでは、資産価値への考え方が異なる点を理解しておかなければなりません。テナントの店舗に内装工事を施すと、建物全体とは別に固定資産としての価値が向上します。そのため、固定資産を取得した場合と同様にその費用を計上することができ、工事内容の耐用年数から減価償却が決定されます。
 
内装工事関連の耐用年数には「建物」「建物附属設備」の2種類があります。「建物附属設備」については、その工事内容によって用途・材料などからの耐用年数の区分け作業が必要です。関連工事も含めてすべてまとめて計上できますが、合理性のある判断が求められます。税務上の不正とならないためにも、専門家に相談しながら正しく申告できるようにしていきましょう。
 
居抜き物件をお探しの方はぜひ居抜き市場をご活用ください。
 

 
飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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