開業ノウハウ

飲食店コンサルタント選びで失敗しない為に知っておくこと

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2020年、飲食店事業者の倒産・廃業は過去最多

もともと開業から3年で7割のお店が閉店してしまうと言われる飲食店ですが、2020年は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受け、飲食店の倒産・廃業の件数は過去最大になると言われています。このような状況で、自店や自社内のリソースのみでは限界を感じ、外部コンサルタントに依頼して経営を立て直していきたい、また、開業時にも適切なアドバイスを受けてオープンしたい、と思う飲食店経営者が増えてきているようです。
 
そこで、この記事では初めて外部コンサルタントを依頼される方に、失敗しない為のポイントや注意点などをご紹介していきます。
 

失敗の理由はミスチョイスとミスマッチ

「大手のコンサルタントに言われた通り実行したのに成果が上がらなかった。」
「ホームページを見て契約をしてみたが思っていたような仕事をしてくれなかった。」
「実績がある有名コンサルタントに依頼したのに提案内容が自店に合わなかった」
 
飲食店経営者の方々から度々このような話を聞くことがあります。誰もが知っている大手コンサルティング会社や、テレビや専門誌などのメディアでもよく見かけ、実績も十分な有名コンサルタントに依頼したはずなのになぜ?と思われるでしょう。
 
これは、コンサルタント自身に能力がないわけでなく、求めている期待値や依頼内容と、そのコンサルタントの「専門性」のミスマッチによる失敗であるケースが多くあります。また、コンサルタントとは何か特定の資格がなくても、誰でも名乗ることできる職業です。大きな実績がなくても、弁が立つことで仕事を得ているコンサルタントや、ネット広告を利用し、過去の僅かな成功事例を武器に集客するようなコンサルタントも残念ながら多く存在しています。それを見抜けずにミスチョイスしてしまうケースもあるでしょう。
 

ミスチョイス防止の為に気をつけること

では、そもそもミスチョイスしない為にはどうすれば良いのでしょうか。
選び方の基本は「必ず会ってから判断する」ことです。
 
「たった3ケ月で売上が2倍に!」
「年間100店舗以上の指導実績!」
 
インターネットで検索すると、広告ページやホームページにはこのような魅力的な言葉がよく目につきますし、容易に多数のコンサルタントを見つけることができるでしょう。しかし、どれだけ華やかな実績があるコンサルタントだとしてもネット上の比較のみで判断するのは危険です。しかし、実際に会ってみることでミスチョイスは防止することが可能になります。
 
では、実際にコンサルタントに会った際に注意すべきポイントを紹介しますので参考にしてみてください。
• 過去の実績の自慢が多い
• 最初から報酬の話をしてくる
• 話をすり替えるのが上手い
• 説明が分かりづらい
• ダメ出しや批判ばかりしてくる
 
上記は一部の事例ですが、このようなコンサルタントには注意が必要です。そもそもコンサルティングとは、クライアントの課題をヒアリングするところからスタートする仕事です。自分の実績や報酬のことばかり話をするコンサルタントでは務まらないと言えます。また、難しい専門用語や聞き慣れない横文字ばかり使い、話が分かりづらいコンサルタントも資質を疑った方が良いかもしれません。その様なコンサルタントは弁が立つので、話をすり替え、こちらの理解が不十分でも丸め込もうとする傾向にあります。しかしながら、本来、出来るコンサルタントほど、誰にでも分かりやすい言葉で単なるダメ出しではなく、具体的な提案を示してくれるはずです。
 
このような点に注意をしながら、まず導入段階でのミスチョイスを防止する為に、必ず実際に会った上で判断することをお勧めしています。
 

コンサルタントのタイプはさまざま

では、ミスマッチはなぜ起こるのでしょうか。
 
その理由一つとして挙げられることは、飲食店コンサルタントと一口に言っても、様々なタイプがいるからです。彼らは、個人や小規模法人で活動している場合もあれば、業種・業態別のコンサルタントを複数抱えている大手のコンサルティングファームに所属している場合もあります。また、その経歴も様々で、元店長や元料理長、チェーン店の元SVなど、現場上がりのコンサルタントもいれば、税務や財務・マネジメント部門出身のコンサルタント、労務関係や人材部門出身コンサルタントもいます。また、かつて飲食店経営をしていた人が廃業や事業譲渡をし、セカンドキャリアとしてコンサルタントに転身するなど、その経歴は多岐にわたります。
 
これらの経歴を活かし、メニュー開発やサービス・人材育成、集客、開業、海外出店などの「特化型コンサルタント」もいれば、一つの分野に特化することなく業績改善を目的とした飲食店経営全般を請け負う「総合型コンサルタント」もいます。
 
このように様々なタイプのコンサルタントが存在しますので、発注者が求めている依頼内容と、「専門性」のミスマッチによる失敗は起こりやすいと言えます。更に言えることは、コンサルタントには経験値や指導実績に基づいた「得意分野」と「不得意分野」があると認識しておくべきです。例えば、ラーメン業態や居酒屋業態を専門としているコンサルタントであっても、個店指導を得意としているのか、チェーン店指導やFC化指導などを得意としているのかによっても内容に大きな違いがあります。更に言うと、低単価業態の経験値しかないコンサルタントが高単価業態の指導は出来ませんし、その逆もしかりと言えます。つまり、コンサルタントは万能でないという前提でミスマッチを起こさない為の知識と判断力を養うことが大切と言えるでしょう。
 
しかし、これまでのポイントを注意したとしても、人と人との仕事なので、契約後に打ち合わせを重ねるうちに、考え方や性格、センスなどに違和感を感じる場面もあるかもしれません。飲食店経営は、ロジカルシンキングだけでなく、時代を読み抜く感性や感度も大切です。また、世代観が合わないと、感覚のズレが生じる場合もあります。このように「相性」が合わないことも必ず出てくることを念頭におく必要があります。つまり無名、有名や個人、大手にかかわらず「相性」という直感的な判断軸も必要ではないでしょうか。
 

ミスマッチに気づいたら

ミスチョイスは経営者にとって得るものが何もないと言えますが、これまで述べてきたようにミスマッチは誰にでも起こりうるものです。それを「失敗した…」と思わず、「良い勉強をした」と捉え、経験則として次に繋げていくことが大切です。その場合、それまでのコンサルタントの仕事に対する謝礼や報酬(の一部)は、しっかり支払いましょう。ミスマッチはコンサルタントの責任でなく、「選ぶ目」がなかった経営者自身にあると言えます。これはコンサルタントに限らず、お店に関わるデザイナーやコーディネーター、士業の方との仕事も同様でミスマッチに気づいたら、それまでの対価を支払うことを忘れてはいけません。業界で活躍するプレイヤーは案外少数で横のつながりを持っているものですので、注意が必要です。
 

実行するのは自分ということを忘れない

最後に、発注者である飲食店経営者の心構えとして「実行するのは自分」ということを忘れないでください。プロジェクトの丸投げをして失敗するケースもよく見受けられます。あくまでコンサルタントの知識や経験を借りて自社、自店舗で実行するという気概が大切です。
 
ここまで、「失敗をしない為に」という内容でその注意点のみにフォーカスしてきましたが、正しくコンサルタントを選べば、社内会議などでは得られない知見や気づき、施策を提供してくれますし、自店舗で多大な労力とコストをかけるより、遥かにスピーディーに効果を上げることが可能になることでしょう。
 
川瀬 亮太 飲食店経営/プロデュース ROOTage(株)代表取締役
 

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