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食品衛生責任者とは?取得するメリットや方法について解説

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食品を提供する事業者に対し、配置が義務付けられている資格に「食品衛生責任者」があります。資格を取得することで、店舗や施設の衛生管理を適切に行い、食中毒などの事故を未然に防げます。この記事では、食品衛生責任者が具体的にできることや取得のメリット、養成講習会の内容、流れなどを網羅的に解説します。
 


 

◆食品衛生責任者とは?

食品衛生責任者は、食品衛生法によって定められた資格です。ここでは、食品衛生責任者の資格について解説します。
 

◇食品衛生法に定められた資格のこと

食品衛生責任者とは、食品衛生法で定められた基準に基づき、施設内で衛生管理の中心的な立場を担う有資格者を指します。有資格者は、食品衛生法施行規則において、次のように定められています。
 

食品衛生法第51条第1項で規定された営業を行う者(法第68条第3項で準用される場合を含む。以下「営業者」)は、食品衛生責任者を置かなければならない。ただし、規則第66条の2第4項に記載された営業者についてはこの限りではない。

 
食品衛生法に基づき許可や届出を行って営業する食品関連施設には、必ず食品衛生責任者を配置する必要があります。具体的な職務内容については、「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」のなかで、詳細に示されています。
 
※参考:食品衛生法施行規則 | e-Gov 法令検索
 

◇食品衛生管理者との違いは?

「食品衛生責任者」と「食品衛生管理者」は、名前がよく似ていますが、内容は異なる別の資格です。食品衛生管理者は、肉類・魚介類・乳製品など、衛生面で特に注意が必要な食品を製造・加工する工場において、配置が求められる資格です。食品衛生管理者は厚生労働省が所管する国家資格であり、取得の難易度が高く、資格を得られる人も限られています。
 

◆食品衛生責任者の役割とは?

食品衛生責任者は、自治体が主催する「食品衛生責任者養成講習会」を通して知識を学び、日々の業務で衛生面に気を配るという役割を担っています。医師・歯科医師・薬剤師・獣医師・栄養士・調理師といった資格を持っている人は、この講習を受けなくてもよいとされています。
 

◆食品衛生責任者における資格取得のメリット

食品衛生責任者の資格を取得することには、いくつかのメリットがあります。
 

◇衛生管理における「基本」が身につく

食品衛生責任者の資格を取得する方法として、自治体が主催する「食品衛生責任者養成講習会」への参加という手段があります。この講習会では、食品衛生学や公衆衛生学、さらに食品衛生法について学ぶことができ、食品を安全に取り扱うための基本的な知識を習得できます。
 

◇食品業界のなかで需要が高い

食品を加工したり販売したりする事業所には、必ず食品衛生責任者を置くことが食品衛生法で定められています。各店舗に最低1人は配置する必要があるため、多店舗経営を目指す場合には特に必要性が高まる資格です。そのため、この資格は食品業界での需要が高く、就職や転職の際に大きな強みになります。
 
飲食店が営業を始める際には、営業許可の申請までに食品衛生責任者を確保しておかなければなりません。資格を先に取得しておけば、必要なときに配置できるだけでなく、自分で開業するときにも活かせます。
 

◆食品衛生責任者になる方法

食品衛生責任者は、衛生管理の中心的な役割を担う重要な存在です。どのような方法で取得する資格なのか解説します。
 

◇養成講習会を受ける

食品衛生責任者の資格を取得する一般的な方法は、各都道府県の食品衛生協会などが主催する養成講習会を受講することです。この講習会は、食品衛生に関する基本的な知識や、衛生管理の実務について学ぶことを目的としています。特定の学歴や職歴がなくても、原則として誰でも受講することが可能です。
 

◇栄養士や調理師の資格取得

特定の国家資格や専門資格を持っている場合、別途養成講習会を受講することなく、食品衛生責任者として認められます。以下の資格は、食品衛生に関する専門的な知識をすでに有しているとみなされるためです。
 
・栄養士
・調理師
・製菓衛生士
・船舶料理士
・食品衛生管理者または食品衛生監視員の資格要件を満たす者
・食鳥処理衛生管理者
・と畜場法に規定する衛生管理責任者
・と畜場法に規定する作業衛生責任者
 

◆養成講習会の内容は?

食品衛生責任者養成講習会では、「食品衛生法」「食品衛生学」「公衆衛生学」を学べます。
 

◇食品衛生法

食品衛生法は、国民の健康を守るために食品の安全性を確保することを目的とした法律です。講習では、食品衛生責任者として知っておくべき法律の基本的な枠組みや、食品等事業者として遵守すべき具体的な規則について学びます。
 
食品を取り扱う施設の基準、食品添加物の使用基準、食品の表示に関するルール、食中毒発生時の対応など、多岐にわたる内容が含まれています。
 

◇食品衛生学

食品衛生学では、食品の安全性に影響を与える要因を科学的な視点から学びます。食品を取り扱う上で、重要な食中毒の予防に直結する知識が多く含まれており、食品衛生責任者として現場で実践的な衛生管理を行うために不可欠な分野です。
 
主な学習内容は、食中毒の原因となる細菌、ウイルス、寄生虫の種類や特徴、それらが食品中で増殖する条件、熱殺菌や冷却、乾燥などの適切な管理方法です。
 

◇公衆衛生学

公衆衛生学は、地域社会全体の健康を守るための知識を学ぶ分野です。食品衛生責任者として、単に個々の食品の安全だけでなく、店舗全体の衛生環境や従業員の健康管理を通じて、公衆衛生の向上に貢献する役割を担うための知識を身につけます。
 
講習では、感染症の予防と対策、特に手洗いの重要性や正しい手洗い方法、施設の清掃・消毒の徹底方法、従業員の健康状態の把握と管理(健康診断、体調不良時の対応など)について学びます。ねずみや昆虫などの害虫・害獣対策、廃棄物の適切な処理方法、店舗で使用する水の衛生管理など、店舗運営における総合的な環境衛生管理の知識も身につきます。
 

◆養成講習会の流れは?

食品衛生責任者になるためには、各自治体や地域の食品衛生協会が開催する養成講習会を受講するのが一般的な方法です。ここでは、その講習会の申し込みから修了までの具体的な流れを解説します。
 

◇講習会の受講申し込み

食品衛生責任者養成講習会への参加を希望する場合、まずは開催情報を確認し、受講申し込みを行います。開催情報は、お住まいの地域の保健所や、各都道府県・市区町村の食品衛生協会のWebサイトで確認できます。講習会は年間を通じて複数回開催されますが、定員が設けられていることが多いため、早めに申し込んでください。
 

◇講座受講

申し込みが完了し、指定された日時に会場へ足を運び、講習会を受講します。食品衛生責任者養成講習会は、1日で完結するプログラムがほとんどです。講義中は、集中して内容を理解することが重要です。遅刻や早退、途中退席は修了と認められない場合があるため、指定された時間通りに全課程を受講するようにしてください。
 

◇修了証と店頭プレートの販売

講習会の全課程を修了すると、食品衛生責任者としての資格を証明する修了証が交付されます。修了証は、講習会当日にその場で手渡される場合と、後日郵送される場合があります。この修了証は、食品衛生責任者として店舗に選任される際に必要となる重要な書類です。
 
店頭プレートとは、食品衛生責任者の氏名が記載されたプレートのことです。多くの自治体では、店舗に修了証やプレートを掲示することが義務付けられています。
 

◆食品衛生責任者に関するよくある疑問

食品衛生責任者にまつわるよくある質問を、5つ解説します。素早く情報を得たいという人は、ぜひ参考にしてください。
 

◇勉強内容や試験の難易度は?

食品衛生責任者の養成講習会では、主に「食品衛生法」「食品衛生学」「公衆衛生学」の3つの分野について学習します。これらの内容は、食品を取り扱う上で必須となる基本的な知識であり、食品の安全確保と公衆衛生の向上に直結するものです。
 
講習会の全課程を真面目に受講し、内容を理解していれば修了証が交付されるのが一般的です。そのため、難易度が高いと感じることは少なく、食品衛生に関する基礎知識を習得することに重点が置かれています。
 

◇受講には資格が必要?

食品衛生責任者の養成講習会は、基本的に特別な受講資格は必要ありません。年齢制限や学歴、実務経験の有無に関わらず、どなたでも受講を申し込むことができます。食品衛生責任者が飲食業や食品製造業など、食品を取り扱うあらゆる施設で設置が義務付けられており、幅広い層の人々が資格を取得できるよう門戸を広く開いているためです。
 

◇資格に有効期限はある?

食品衛生責任者の資格自体に有効期限はありません。一度取得すれば、生涯有効な資格として認められます。しかし、食品衛生に関する法改正や新たな知見を広げるなど、常に技術の進歩を目指さなければなりません。
 

◇取得までにかかる費用

食品衛生責任者の資格取得にかかる費用は、主に養成講習会の受講料です。この受講料には、テキスト代や修了証の発行手数料が含まれていることが一般的です。費用は、講習会を主催する自治体や実施団体によって異なります。例えば、東京都の食品衛生責任者養成講習会では、受講料が1万2,000円(税込)と定められています。
 

◇資格証を紛失してしまった

食品衛生責任者の修了証(資格証)を紛失してしまった場合は、修了証を発行した機関に申請し、再発行が可能です。一般的には、受講した都道府県の食品衛生協会や、講習会を主催した自治体の担当部署に連絡し、所定の手続きを行います。
 

◆まとめ

食品衛生責任者は食品業界で需要が高く、できることも多岐にわたります。食品衛生責任者の役割や食品衛生責任者における資格取得のメリットを解説したため、これから飲食店を開業しようと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
 
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飲食店開業応援マガジン[RESTA(レスタ)]編集部
 

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