開業レポ

飲食店開業者インタビュー VOL.1「旬菜鮪処 英」山口薫さん

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異業種からの転身・まわりの人に支えられた独立

東京メトロ「根津」駅から徒歩1分、昭和の雑居ビルという言葉がよく似合う建物の2Fに「旬菜鮪処 英(hanabusa)」がオープンしたのは2017年5月23日。オープンから約8か月、今の心境と独立についての想いを伺ってきました。なんとこの物件、昭和31年に建てられたのですが、この地域の2階建て店舗の第一号だったんだそうです。

 

旬菜鮪処 英(hanabusa) の内装

 

―英(hanabusa)がオープンして約8か月、現状をお聞かせください。 

(山口さん)はい、まだ毎日必死ですが、ようやく流れが掴めてきたかなという印象です。営業になれたといいますか。売り上げに至っては目標の7割程度なので、まずは近隣の方へのPRとして1Fに看板やメニューブックを置こうという動きをスタートさせたところです。

 

―確かに、看板も出ていないのでとても隠れ家的ですね。どうしてこちらの物件に決められたのでしょうか。 

(山口さん)物件を探し始めたのは、実は3年前からなんです。きっかけは、父の他界でした。

父は、銚子生まれ、ずっと築地市場内で鮪のセリ人としてして働いていて、叔父は漁師、まさに魚一家の中で、私は育ちました。そのため、食卓には毎日魚。魚の目利きには自信があったこともあり、物心がついたころには将来父と一緒にお店をする夢を思い描くように。不思議なことに父も想いは同じだったようで、勤務先で「将来は娘と店を持つんだ」と事あるごとに口にしていたそうです。そんな中での父の急死は、私の人生を一変させました。それまで全く畑違いのIT系の事務をしていたのですが、「いつかではイケない」と一気にお店を持つ方向へと舵を切ったのです。しかし、いざ物件を探し始めるとなかなか出会うことができず。。。

地理的な部分、家賃など自分の無理のない範囲でと思っていたらあっという間に3年。そして、ようやく今年に入り知人の紹介で「居抜き市場」を知り、運よくこちらの物件に出会い、即決でした。理由は、親戚宅が千駄木にあり、父がこのあたりをよくバイクで通っていたということ。そして、家賃14万円+管理費が1万5千円(水道代込み)という条件でした。

 

―このお店の雰囲気はとても居抜きと思えないのですが。 

(山口さん)はい。もともとは韓国料理店だったので、かなり劣化が激しく、水道の配管、ガスの配置などの設備部分以外はすべて撤去し、ほぼスケルトンにしてからお店づくりが始まりました。居抜き物件の厨房の位置や設備を利用することでコストを抑えることができ、その分は内装にあてることができました。

こだわったのは、一枚板のカウンター。これは樹齢430年の紀州杉を10年前にカットして乾燥させたものです。

他にもテーブル、イスはオーダーメイド。さらには、私達夫婦の共通の趣味である音楽が楽しめるよう、防音設備を完備しました。たまにライブイベントも行うんですよ。

 

―では、かなり初期費用がかかったと思います。資金面についてお聞かせください。 

(山口さん)自己資金とともに融資1000万を受けています。私は、東京商工会議所と日本政策金融公庫が企画する創業塾という独立支援のセミナーに2日間出席し、その後飲食業同業組合に加入することで増資を受けることもできました。素人だったので、とても勉強になり、よい経験でした。

 

―オープン準備からお店を持つにあたり、心境の変化はあったのでしょうか。 

(山口さん)はじめ、私は自分一人で切り盛りすると張り切っていました。主人にも迷惑はかけないと思っていましたし。しかし今では、本当にまわりの友人、家族に支えられて進んでこれたなと実感しています。

弟は空調関係の会社に勤めているので飲食店に詳しく、色々なアドバイスをくれるので、助かりましたね。

さらに主人は自分の仕事が終わるとお店に一緒に立ってくれることも多く、「たいぞう印のたこ焼き」は彼のメニューです。お店のロゴデザインは友人のデザイナーが作ってくれて。店内にかけてある書も師範である友人の作品なんですよ。そして父が働いていた会社の社長の力添えで、天然本鮪のブロックを仕入れることができているんです。

 

―なんと恵まれた環境。まさに山口さんの人徳がなせる業ですね。最後に独立した感想をお願いします。 

(山口さん)「英」という店名は父の「英夫」の一字でもあるんです。そのため、父と一緒にお店をしている感覚です。独立は、大変なこともありますが、自分の城が持てたことがとてもうれしいです。魚の味には自信があるので、ぜひ皆様気軽に遊びに来てください。

 

これから独立する方へ アドバイス 3箇条

  • 其の1. 自分一人の力では無理。人脈をフル活用しましょう
  • 其の2. いざ始めてみると必要なものがどんどん出てきて費用がかさむ
  • 其の3. 飲食店での経験はなくても、自分が本当にやりたいと思ったら夢は叶う!

 

 

お店ができるまで

  • 2014年頃出店決意
  • 2016年2月~2017年5月事業(業態)構想
  • 2015年1月~2017年3月物件探し
  • 2017年3月物件契約
  • 2017年4月~5月工事期間(40日)
  • 2017年5月開店その他の項目
    メニュー試作期間 約3ヶ月/資金調達期間 1ヶ月/トレーニング期間/設計期間2ヶ月

開業費内訳[自己資金 非公開 借入金 1000万]

  • 設計施工費非公開
  • インテリア40万円(イス、テーブル等)
  • 厨房機器非公開
  • 物件取得費約250万円
  • 食器類約10万円

物件詳細

  • 居抜き物件
  • 家賃未公開

 

<おすすめ料理>

 

本鮪贅の極み二点盛り

本鮪贅の極み二点盛り 1,600円
ため息がでるほどの艶めきの本鮪はとろける味わい

 

銚子産 灰干し鯖

銚子産 灰干し鯖 800円
日干しではなく、灰干しの鯖は肉厚でジューシー

 

尻高(しったか)の酒蒸し <季節物>

尻高(しったか)の酒蒸し <季節物>
千葉の房総で獲れる貝は日本酒との相性抜群

 

店舗情報

  • 店名旬菜鮪處 英(しゅんさいまぐろどころ はなぶさ)
  • 業態居酒屋、小料理店
  • 住所東京都文京区根津2-19-11 2F
  • 交通東京メトロ千代田線 根津駅徒歩2分
  • TEL090-7711-6757
  • HPhttps://hanabusa-8723.jimdofree.com/
  • 営業時間18:00~22:00 定休日 水曜 日祝日
  • 席数テーブル2卓(4席×2)、カウンター5席
  • オープン日2017年5月23日
  • 客単価¥3000~4000

旬菜鮪処 英の内装

店主経歴

山口薫さん
1976年生まれ
仲卸の父を持ち、幼い頃から毎日魚が食卓に並び、魚の目利きに関しては自信をもっていた。
いつかは飲食店をと夢を見ながら、IT系派遣事務職に勤務。2014年に、独立を決意。
東京商工会議所の「創業塾」に通い、1年に融資を受ける。

2017年5月、念願の「英」をオープン。

 

取材・文 青山友美 食専門のPR企画&編集・ライターとして活動中

 

 

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