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学生のアイデア起用、地産地消など地域社会に無くてはならないオペレーター

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第四十一弾
いまどき「学食」の存在意義 前編

 
今回は「学生食堂」(以下、学食)の最新の動向について二つの事例を紹介しよう。学食のミッションは、街の飲食店より安い価格で学生に食事を提供することである。しかし、今日の学食はそれにプラス大きな価値が求められていて、またそこがハブとなり新しい価値を生み出すきっかけにもなっている。
 
「日本一の学食」と称される「東洋大学白山キャンパス6号館地下1階」は1300席のフードコートの形態。【「日本一の学食」と称される「東洋大学白山キャンパス6号館地下1階」は1300席のフードコートの形態。】
 

大学が長期休業するために採った対策

「学食ランキング」というものがある。この始まりは早稲田大学のサークル「早稲田大学学食研究会」によるもので、1999年より都内を中心に全国の大学学生食堂のランキングを発表している。評価対象は「料理の質・価格・学食の雰囲気」でそれを総合的に評価している。これは同サークルが独自に行っていることで、客観性は存在しない。
 
これで例年「第1位」に選出されているのが「東洋大学白山キャンパス6号館地下1階」の学食である。同施設は客席数1300、ここに7つの専門店(インドカレー、カフェ、パスタ、洋食、鉄板ごはん、窯焼き料理、韓国料理)が出店し、フードコートの形態を取っている。
 
オリエンタルフーズ代表の米田勝栄氏は、これから学食のFC展開を想定している。【オリエンタルフーズ代表の米田勝栄氏は、これから学食のFC展開を想定している。】
 
この中で、洋食、鉄板ごはん、窯焼き料理の3店舗を営んでいるのが株式会社ORIENTALFOODS(本社/東京都品川区、代表/米田勝栄、以下オリエンタルフーズ)。同社はこの施設の中で、3つの店舗の他に「洗い場」の運営と7店舗全体のマネジメントを担当している。そして同社は、いま学食のエキスパートとして認められている。
 
2014年東京・五反田の肉フェスで優勝した屋台の様子。【2014年東京・五反田の肉フェスで優勝した屋台の様子。】
 
同社代表の米田氏は1974年3月生まれ。専門学校を卒業後、都市ホテルのバーテンダー、オーストラリアでのワーキングホリデーなどさまざまな形で飲食業を経験。2004年30歳の時に個人事業主としてバーを運営受託した。この時、東洋大学学食の一部でカフェの立て直しを任されることになった。そこで同社は当初日商3万円に満たない店舗を17万円あたりまで引き上げた。
 
このカフェの運営はリセットすることになり同社の運営受託はいったん終了。その後、この施設をプロデュースする会社から出店を要請され、今日に至っている。
 
現在フードトラックは3台を所有し、大学構内で学生が運営するパターンもある。【現在フードトラックは3台を所有し、大学構内で学生が運営するパターンもある。】
 
学食運営の事業者にとって大きな課題は、大学が年間約4カ月間休業すること。オリエンタルフーズはこの期間に他店のオペレーションを臨時で請け負っていた。その後、東京・五反田の東急池上線高架下の「五反田桜小路」に肉バルやワイン販売店を出店することによって、常設の飲食店を構えた。
 
また、フードトラックの事業にも着手。これによって産地との関係性が深まるようになり、兵庫・淡路島、鹿児島、北海道、山口、高知、福岡、山梨等々、産地の食材を使用したフードメニューを提供、都会で営業することによって地方活性化につなげるプロジェクトに発展していった。
 
フードトラックの事業によって地方の生産者との交流も生まれた。【フードトラックの事業によって地方の生産者との交流も生まれた。】
 

学生のアイデアを引き出す仕組み

同社では、東洋大学での学食、五反田でのリアル店舗、フードトラックと営業形態が広がっていったが、それぞれの運営に関して学生に積極的に参画してもらう仕組みをつくっていった。米田氏はこう語る。
 
「学生のアイデアは斬新でわれわれも触発される。そして、アイデアが採用され実績として表れた学生にとって、その教育的効果はとても大きい」
 
五反田駅前の肉フェスである「五反田G1グランプ」に参加するようになった。同社はここで2014年と2019年に優勝しているが、2019年に優勝した「伝説の牛カツ赤ワインソース」は学生アルバイトが提案した企画であった。
 
このような活動が、2020年3月放送の『カンブリア宮殿』(テレビ東京)で紹介されたところ、大きな反響があった。それは「新しい学食運営」の依頼である。
 
今年4月から運営している桃山学院大学の学食の様子。【今年4月から運営している桃山学院大学の学食の様子。】
 
その第一弾は、桃山学院教育大学(大阪府堺市)。オリエンタルフーズが同校から求められたものは以下のような内容だ。
 
まず、「スマート食堂」。これは「並ばない」「触らない」「非接触」のモバイルオーダーをはじめ、AIを活用することで食品ロス問題や残飯問題なども解決。売店には無人レジの導入も検討。
 
次に、「ベンチャー食堂」。これは食堂や売店の空きスペースをビジネス的に活用する提案であり、メニューコンテストなど食堂がきっかけとなったアイデアを引き出す。
さらに、「FOODFOODプロジェクト」。これは学食が地域と連携することによって地産地消をはじめ、子ども食堂の導入など地域社会になくてはならない存在にする。
 
オリエンタルフーズでは外国人の雇用も積極的に行っている。【オリエンタルフーズでは外国人の雇用も積極的に行っている。】
 
同大学での学食運営は2021年4月から受託。さらに、桃山学院大学(大阪市和泉市)の学食運営を今年4月から受託、神戸国際大学(兵庫県神戸市)の学食運営を今年9月からの受託を予定している。米田氏によると、オリエンタルフーズ直営での学食運営はここまでと想定。これ以降は同社が築いてきた学食運営をFCで展開していくという。
 
(後編)に続きます。
 

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト
柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴三十数年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 

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