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「緑茶」の専門性を軸にして、食の多様性に応える「伊右衛⾨サロン」

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フードサービス・ジャーナリスト千葉哲幸 連載第七弾
生産性を追求するカフェ業態の今 前編

 
「カフェとはなにか?」

ずばり言おう、カフェとは「生産性追求の可能性をたくさん秘めた業態」であると。

このようなことを、さる7月東京・渋谷と池袋という大がかりに再開発が進むエリアのビルにオープンした二つのカフェを体験して考えた。

 

ベジタリアン、グルテンフリーにも訴求する

 

渋谷ヒカリエ伊右衛門サロン入口

 

一つ目は、7月3日東京・渋谷の「渋谷ヒカリエ」7階にオープンした「伊右衛門サロン」。同店を経営するのはカフェ・カンパニーで、同ビルが2012年4月に開業したと時に出店した同社のカフェを「緑茶」をテーマにリニューアルした。客席数は約140と大型で、間取りに余裕がある。

 

渋谷ヒカリエ伊右衛門サロン店内

 

「伊右衛⾨サロン」はカフェ・カンパニー、福寿園、サントリー食品インターナショナル(サントリー)3社の共同開発によって誕生、このパイロットショップを京都で展開していた。店名には緑茶の専門性とそれによって連想される農産物のイメージが託されていて、同店の楽しみ方として「Green Tea & Vegetable First」をうたっている。

 

フードメニューは肉、魚があるが、メニューブックに「ベジタリアンの方はスタッフにご相談ください」とある。スイーツはグルテンフリーで、おはぎのご飯は玄米を使用、ケーキのスポンジやパンケーキは米粉を使用している。これによって食に禁忌を持つ人も気軽に利用できる。

 

渋谷ヒカリエ伊右衛門サロン和牛と彩野菜の蒸し寿司

 

 メニュー構成の中で、特徴的なものを以下に紹介しよう。

 まず、フードメニュー。これは“朝・昼・夜問わず、「お茶」と共に滋味溢れる⾷材を堪能することができる⾷事メニュー”をコンセプトにして組み立てられた。ディナーメニューのメインは、「晩ごはんセット」がついた「和牛と彩り野菜の蒸し寿司」2780円(税別、以下同)、「五目蒸し寿司」2480円、「鮭と焼きとうもろこし釜炊きご飯」2480円などがある。

 

渋谷ヒカリエ伊右衛門サロン日本茶バー

 

晩ごはんセットとは、生野菜や野菜の総菜を約8種類ラインアップした「おばんざいバー」(単品の場合レギュラーサイズ800円、ラージサイズ1100円)と⼀晩かけて抽出した「⽔出し茶」などが自由に選べる「日本茶バー」(単品の場合540円)がついている。これらのメインはアラカルトとしても注文できる(「和牛と彩り野菜の蒸し寿司」の場合、1750円)。

 

渋谷ヒカリエ伊右衛門サロンおばんざい

 

 この他に「本日の肉料理」(ご飯、味噌汁、お茶ふりかけ付/おばんざいバー:レギュラーサイズ1980円、ラージサイズ2180円)、「魚の西京焼き」(同/レギュラー1880円、ラージ2080円)などの糖質やカロリーを抑えたごはん・お味噌汁がセットになった定⾷スタイルのメニューもある。さらに、おつまみとしても楽しむことができるアイテムもある。

ランチメニューは、「おばんざいバー」と「日本茶バー」がついた定食セットで1480円、1580円、1680円などがラインアップされている。

 

アルコールは基本的なものを揃える

次に、ティーメニューとスイーツニューについて。

前述の「日本茶バー」に加えて、ソフトドリンク・アルコール共に「お茶」を軸に開発されたティーメニューをラインアップ。抹茶・煎茶・ほうじ茶などの本来のお茶に加えて、フルーツやハーブを使ったビネガードリンク「Shrub(シュラブ) 」と「お茶」を組み合わせたカクテルや、野菜や果物とのコンビネーションを表現したメニューもあり、それぞれ600円から800円代となっている。

スイーツは全て卵や⽜乳などの動物性⾷材を⼀切使⽤しない100%植物性のヴィーガン・デザート。ケーキのスポンジやパンケーキは米粉を使用。「おはぎ」をモダンにアレンジした「cohagi(コハギ)」のご飯は玄米であり、パフェ、パンケーキ、ティラミス、かき氷などの全てに「お茶」を使用している。

 

渋谷ヒカリエ伊右衛門サロンビーガンおやつの宝石箱

 

コハギは「伊右衛門サロンのビーガンおやつワゴン5種盛り(抹茶1杯付)」2200円、「伊右衛門サロンのビーガンおやつの宝石箱12種盛り((抹茶1杯付)」4200円がある他、1150円と1250円の三種盛りもある。「伊右衛門かき氷」はほうじ茶が1250円、抹茶が1450円。「ほうじ茶豆乳ティラミスパフェ」1350円、「宇治抹茶豆乳ティラミスパフェ」1550円も、緑茶の見識が深いことを自認する同店ならではのアレンジが加わっている。

 

 さらに、アルコールもビール、ハイボール、チャワリ(茶割り)、日本酒、梅酒、ワイン、スパークリングという具合に基本を押さえたバラエティが整っている。

 

このように「伊右衛⾨サロン」のメニューは「緑茶」の専門性を軸にして、食の多様性に十全に応えることが可能で、かつお客さまの来店動機別に緻密に創出されている。このようなメニューを見ていて、「カフェ」を極めてきたカフェ・カンパニーのノウハウの豊かさを大いに実感している。

 

 

(後編)に続きます。

 

千葉哲幸(ちば てつゆき)

フードフォーラム代表 フードサービス・ジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』の編集長を務めた後、2014年7月に独立。フードサービス業界記者歴36年。フードサービス業界の歴史に詳しく最新の動向も追求している。「フードフォーラム」の屋号を掲げて、取材・執筆・書籍プロデュース、セミナー活動を行う。著書に『外食入門』(日本食糧新聞社発行、2017年)。

 
 

 

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