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7割が飲食店で発生 カンピロバクターによる食中毒を防ぐために知っておかなければならないこと

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食中毒を起こす細菌はたくさんありますが、そのうちのひとつ「カンピロバクター」は、特に鶏肉や鶏レバーなどから高い確率で検出されるものです。カンピロバクターによる食中毒は年間を通して発生しており、カンピロバクター食中毒の発生件数のうち約7割を飲食店が占めています。ここでは、カンピロバクターとはどのような細菌なのか、カンピロバクターによる食中毒を防ぐにはどうすれば良いかを詳しくご紹介していきます。
 

◆カンピロバクター食中毒の発生件数と割合

カンピロバクターによる食中毒は、2000年代以降、細菌による食中毒の発生件数で1位を記録し続けています*1。生の鶏肉や加熱不十分な鶏料理を食べることで起こるほか、鶏を扱った調理器具の洗浄不足などで二次汚染された食べ物が原因となることもあります。
 
厚生労働省の調査によれば、令和5年では8月の発生が突出して多くなっています。
 

(出所:農林水産省「鶏料理を楽しむために〜カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!
 
しかし、よく見るとそれは令和5年だけの話です。実際上のグラフを見ると、令和3年ではむしろ11月、12月の方が発生件数が圧倒的に多くなっています。いつでも起きる食中毒なのです。
 
また、カンピロバクターによる食中毒の発生場所をみてみると、下のようになっています。
 

(出所:農林水産省「鶏料理を楽しむために〜カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!
 
過去3年間の発生件数のうち、飲食店が70%以上を占めています。飲食店では非常に注意が必要な食中毒のひとつなのです。
 

◆カンピロバクターの特徴

では、カンピロバクターの特徴をご紹介していきましょう。
 

◇感染力が非常に強い〜ヒトからヒトへも感染

鶏など家畜の腸の中に多く存在していますが、いったん農場や鶏舎に侵入すると、鶏の間であっという間に広まっていきます。侵入すると、1週間で農場や鶏舎内の鶏のほぼ100%が感染するとも考えられています*2。
 
人体に入ってからの影響力も強く、一般的に細菌による食中毒が10万~100万個の菌を食べないと発症しないのに対し、カンピロバクターは数百個程度の菌数でも発生します*3。また、ヒトからヒトに感染する菌でもあります*3。
 

◇流通している鶏肉に高い割合で存在〜器具や手指から広がる

なお、カンピロバクターは特殊なものではなく、流通している多くの鶏肉に存在しています。食品安全委員会がさまざまな調査結果を収集して調べたところ、国産鶏肉の小売段階での汚染率は32〜96%という高いものでした*1。
 
食肉処理場での処理工程の間に、カンピロバクターを含んだ鶏の内臓と肉が接触することや洗浄などを通じての感染は避けられないためです。
 
カンピロバクターの広がり方はそれだけではありません。家庭では約30%、飲食店で約20%が調理器具を介した汚染で、また手指を介した汚染が家庭では約25%、飲食店で約20%発生する可能性があるとされています*4。
 
ちなみに、カンピロバクターに感染している鶏の多くは無症状という特徴があります*1。よって養鶏場や加工段階を経ても、流通前に見つけることはほぼ不可能といえます。
 

◇カンピロバクターが存在しているのは家畜類の腸だけでない

なおカンピロバクターは鶏肉などの家畜だけでなく、犬や猫などのペットに存在している可能性があります*5。また、食肉だけでなく、殺菌が足りていない井戸水や湧水、簡易水道水を感染源とした事例も発生しています*6。
 

◆カンピロバクター食中毒の症状

カンピロバクターによる食中毒の症状の中には、重篤なものもあります。一般的な症状としては下痢、腹痛、発熱、悪心、嘔気、嘔吐、頭痛、悪寒、倦怠感と他の細菌での食中毒に似ており、1週間で多くは治癒します。しかし免疫力の弱い子供やお年寄りでは症状が重くなることがあります。
 
そして、中には感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症するケースも確認されています。潜伏期間が1~7日間と、やや長いことも特徴です。
 

◆飲食店でカンピロバクター食中毒を防止するには

では最後に、飲食店でカンピロバクター食中毒を防止する方法をみていきましょう。
 

◇生食を避け、二次汚染にも注意

多くの省庁や自治体が呼びかけている通り、まずは生での鶏肉を提供しないことです。厚生労働省はカンピロバクター食中毒の予防法として以下の点を紹介しています*6。
 
・「中心部を75℃で1分以上加熱すること」が重要
・調理器具などを介した二次汚染を防ぐために、食肉は他の食品と調理器具や容器を分けて処理や保存を行う
・食肉を取り扱った後は十分に手を洗ってから他の食品を取り扱う
 

◇生食でなくても注意しなければならないこと

そして農林水産省は上記に加え、このような点を指摘しています*7。
 
・生の鶏肉を他の食材にくっつけない
・鶏肉は洗わない=水と一緒に菌が飛び散り、キッチンや周辺の食材に広がるため。
 
また先ほどもご紹介しましたが、犬や猫といった動物もカンピロバクターを持っている可能性があるので、ペットと触れ合ったままの手で調理することは避けましょう。
 

◇新鮮だからといって安全ではない、表面を加熱してもダメ

新鮮な鶏肉であるほどカンピロバクターが生きているとの指摘もあります*8。一般的にカンピロバクターは薄い酸素の環境を好み、一般の空気中の酸素濃度になると死んでしまいます。しかし、多少空気にさらされても、表面を湯通ししても、カンピロバクターは肉の内部に入り込むことで逃げていくという特技を持っています。
 
よって多少表面に手を加えたところで死滅はしません。カンピロバクターが食中毒菌として認識されるようになったのはここ最近のことかもしれません。しかし仕入れた鶏肉のどれかには必ず存在している、と考え、適切な扱いをしなければなりません。
 
*1 食品安全委員会「食品安全委員会の20年を振り返る 第3回 カンピロバクターとの長い闘い」
*2 農林水産省「鶏肉の生産衛生管理ハンドブック(参考資料)」p9
*3 地方独立行政法人大阪健康安全基礎研究所「増加するカンピロバクター食中毒」
*4 食品安全委員会「カンピロバクターのリスク評価を行いました。」
*5 食品安全委員会「カンピロバクターによる食中毒にご注意ください」
*6 厚生労働省「カンピロバクター食中毒予防について(Q&A)」
*7 農林水産省リーフレット「鶏料理を楽しむために〜カンピロバクターによる食中毒にご注意を!!~」
*8 新潟薬科大学「カンピロバクター」
 

 

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