インバウンド需要は回復見込み　都内の飲食店が使える補助金は？

海外から日本への旅行者が戻りつつある。日本政府観光局が発表した7月の訪日外国人数(推計値)はコロナ前の2019年に比べて8割の水準に迫った。こうしたインバウンド需要を逃すまいと、東京都ではいくつかの補助金が使える状態にある。訪日客の推移と傾向、そして支援策や補助金について紹介する。

訪日外客数とインバウンド需要の回復

日本政府観光局が8月16日に発表した「訪日外客数(2023年7月推計値)」によると、7月の訪日外客数は2,320,600人で、2019年の同じ時期に比べ約8割に迫っている*1。

日本行きの海外旅行制限措置が続いていた中国を除く総数では2019年の同じ時期に比べて103.4%と、コロナ前の実績を上回っている。なお、国際線定期便に関しては、2023年夏ダイヤ時点でコロナ禍前の約6割まで運航便数が回復し、その後も東アジアを中心に増便・復便が続く。

また観光庁によると、2023年4月から6月の旅行消費額は1兆2,052億円で、2019年同期と比べて95.1％の水準となった。訪日外国人の消費額、いわゆるインバウンド需要は、コロナ前の水準をほぼ取り戻しつつある*2。その内訳を見てみると、以下のようになっている。

(出所：「訪日外国人消費動向調査」観光庁　p2)

旅行に使う費用のおよそ4分の1が「飲食」に充てられていることがわかる。なお、費目別では、宿泊費、交通費は英国、飲食費はフランス、娯楽等サービス費はオーストラリア、買物代は中国が最も高くなっている*3。

インバウンド取り込みのための飲食店への補助

こうしたインバウンド需要の回復を取り込むため、東京都ではさまざまな助成金制度が設けられている。ここでは飲食店が利用できる2種類をご紹介したい。

インバウンド対応力強化支援補助金

まずひとつは「インバウンド対応力強化支援補助金」である。飲食店などの施設が、外国人旅行者のニーズに対応した利便性や快適性を向上させる、というのがその目的だ。補助の対象になる事業者は以下の通り*4。

・都内において旅館業法の許可を受けて「旅館・ホテル営業」「簡易宿所営業」を行う施設
・都内の飲食店、免税店（中小企業者のみ）
・都内の体験型コンテンツ提供施設等（中小企業者のみ）
・都内において観光周遊及び空港アクセス等の事業を行う観光バス事業者
・外国人旅行者の受入対応に取り組む中小企業団体等・観光関連事業者グループ

飲食店を想定した場合、具体的には以下のような事業に対して最大2分の1の経費が補助される(1施設／店舗／営業所あたり上限300万円)。

・多言語対応(施設等の案内表示・室内又は店内設備の利用案内・ホームページ・パンフレット等の多言語化、多言語対応タブレットの導入等）
・公衆無線LANの設置
・クレジットカードや電子マネー等の決済機器の導入
・館内及び客室内トイレの洋式化
・外国人旅行者の受入対応、アクセシブル・ツーリズムに係る人材育成（研修会の開催、外部セミナーの受講、接遇マニュアルの作成等）
・災害時における外国人旅行者の受入対応（防災マップの作成、避難誘導訓練の実施等）
・外国人用グルメサイトへの掲載に要する費用【飲食店のみ】　など

なお、無線LANに関しては「無線LAN設置の場合は、設置箇所数に15,000円を掛けた金額と補助対象経費の2分の1の金額のいずれか低いほうの金額」が補助される。

飲食事業者向けベジタリアン・ヴィーガン認証取得支援補助金

こちらは外国人旅行客が安心して飲食を楽しめるようにしようというものだ。補助の対象は都内の飲食事業者(東京都多言語メニュー作成支援ウェブサイト「EAT東京」の「外国語メニューがある飲食店検索サイト」の掲載店舗である必要)で、以下の経費を2分の1以内、1店舗あたり上限20万円の範囲で補助するというものである*5。

なお「EAT東京」とはこのようなサービスである。